第四話 文献
朝。
「……」
まさか、あのようなことをするとはな。ただ疲れるだけだ。クロスは初めてが重要だと言っていたが、結局何のことだかさっぱりである。彼女はまだ隣で寝ていた。
それにしても、俺が王、か。昨日は流れに任せていたが、今からは再び俺のやるべき事をせねばならない。
まずは過去の文献を漁ることだ。初代国王レイグランガ・ダグラス・デグラストル、通称レイガによる王族のルールがあった。
内容は以前調べた内容のような感じだった。だが、その中で俺が知らなかった事があった。
まず、第一に跡取りをつくること。男女は問わない。直系であることが絶対。そのためであるなら、妾の子でも構わない、と。俺も要するに妾の子だ。世間では、妾の子は毛嫌いされるようだが、この国では違うようだ。そして、そのような伝統であるため、妻がどのような人物であっても構わないようだ。だから、クロスは批判を受けることはない。少し安心した。
世界の法則を作る龍は、実質この世界を支配している。この龍が、俺の両親を殺したと言ってもいい。だから、俺は許さない。その法則は、俺が壊す。
ただ、まだ俺には力が足らなかった。世界に散らばる宝玉を全て手にしたときに完全な天地の勇者として成立する。その時にその龍を殺す。帝国のこともある。やるべき事はたくさんだ。
更に調べた。過去に天地の勇者が現れたのは四回。俺を合わせれば五回。最初のを除けば、皆天空人と地底人の血が混ざっているはずだ。どうやら天空の龍は、天地の勇者を存在させたくはないようだ。俺を否定するのか。天空の龍に対する俺の憎悪は、ますます増した。
宝玉の在処を探さなければならない。資料はある。ただ、今もそこにあるのかわからない上に誰かに盗られている可能性もある。考えても無駄か。さっさと行こう。内政はこれまで通りにしておけば何ら問題ないと外交官となった代理王が言っていた。
「おはよう、レイン」
クロスが起きてきた。
「……よう」
「何しているの?」
「資料漁りさ……。俺はこれから宝玉を探しに行かなければならない」
「宝玉?」
「ああ」
彼女に説明してやる。
「私もついていっていい?」
「……構わない」
「好きにしろ、じゃないのね」
彼女は笑っていた。最近よく好きにしろと言っていたせいか。
「ああ……」
「んじゃあ、支度するから。あ、朝食は食べて行ってからね」
「わかった」
朝食を食べ終えた後、地上の玄関から出る。
「手料理美味しかった?」
「まあ、そこそこ……」
正直、感想が見つからない。美味しいと言えばいいのだろうか。
「む、もっと頑張るからね」
精進するならそれはそれでいいのかもしれないな。
「……まずは、この湖だな」
地図を広げ、クロスに説明する。
「ん、了解」
「飛ぶぞ」
俺たちは、宝玉のある湖へと目指す。
第二章はこれにて終わりです。




