第二話 それぞれの道
あれから、一日が経った。リベルト達は俺たちにもやるべき事があるんだ、またいつか会おうぜ、とか言ってハースと共に去った。
「……二人きりだね」
「そうだな」
さて、今後俺は何から手を出せばいいのだろうか。まずは王国に行って国を安泰させればいいのだろうか。その方がいいな。
「……クロス、俺たちも行こう」
「行こう!」
「行き先はデグラストル王国だ」
まだ彼女には、あのことは話していない。
デグラストル王国、それは世界の果てに存在する国。多くは地底人が住んでいる。そこに辿り着くには、船に乗り、山を越えなければならない。時空間転移術を使えば早い話だが、座標が定められない。まだ未開の地には使えないようだ。
船に乗った俺たちは、ゆっくりとしていた。
「うう……」
ただ、少し彼女は船酔いしていた。
「具合はどうだ?」
「慣れたわ……うう……」
「……無理するなよ」
「ありがとう」
気まずかった。所詮俺は年端のいかない十八歳。そして他人とはあまり接したことはないのに、突然のプロポーズ。今までの仲間が急に妻に変わると、気まずくて仕方がないのだ。その辺の感情は理解できた。リベルトのおかげかもしれない。
「……ねぇ、レイン。デグラストル王国に行って、何するの?」
「それは……教えられないな」
「そう、残念ね」
あと少しで陸地だ。そこからは山か。山なら、飛んでいけるだろう。
「……クロスにも、俺の視点を見せてやるよ」
「何のこと?」
「……こういうことだ」
翼を出し、彼女を持ち上げ、空へ飛んだ。
「へっ!?」
「空は中々いいものだろ」
「それにしても持ち方というものが……」
それもそうか。持ち方を変えてみた。
「お、お姫様だっこ……」
「なんだ? この方が楽だしな」
「そ、そうなんだ」
とりあえず前に進むことにした。実は、既に翼は出さなくても空を飛べるくらいの能力は取得しているのだが、どうも翼なしでは似合わないだろうということで出している。
「そういえば、勇者って聞いてたけど、主になにするの?」
「知らないな……その答えは王国にあるはずだ」
「気になるわね。御伽話だと勇者っていうのは魔王を倒すために存在するとかなんとか」
「魔王、か。一応、この世界にも存在しているようだが」
この世界の魔王は、人類と仲が良く、魔族もまた世界の法則に従っているらしい。だが、それはあくまでも表面的なことだ。実態はわからない。
「うわあ、山を軽く超えちゃったよ」
「人間じゃできないことだ」
「そうね……ある意味得だったわ」
王国に辿り着いた俺たち。そこに、何が待っているのかわからない。それでも、俺の正体を更に探るために前に突き進むのだ。それが俺の道。皆、それぞれの道を歩き出したのだ。
短いですが、これで第一章は終わりです。




