第一部 エピローグ 全ての始まり
「……ここは」
「やっと起きた」
どうやらあの後気絶して、今はクロスに膝枕をしてもらっているらしい。
「ここは、あなたの住むべき世界、らしいよ」
「帰って来たのか……」
「立てる?」
「ああ、問題ないようだ」
立ち上がると、草原が広がっていた。リベルトもハースもいた。
「これ、言伝。未来のレインかららしいよ」
「……わかった」
そこにはこう書かれていた。
''過去の俺へ。これを見たというには、無事に試練を乗り越え、絶乱戦無たちと会えたのだろう。もっとも、今こうして俺が生きているのだから乗り越えるのは必然だがな。……そう、今までのは試練だったのだ。お前は四つの世界を回ることで時空間転移術を取得することができた。この転移術は、我ら一族において必須のものだ。そして、お前は人間ではない。天地人だ。天空人と地底人の間に生まれた存在。正確には、これは天地人ではないのだが……。それは後々わかるだろう。これからお前がやるべき事がある。まずはお前の正体、天地人だが、お前はその中でも類稀な天地の勇者である。何故、勇者なのかもいずれわかるさ。やるべき事、それは天地の剣と天地の衣を手にする事だ。あとは成り行きでいけ。さすれば五年後、お前はこの手紙を書く事になる。以上だ''
「今までの事は全て、試練……だと」
「なんだか意図がわからないけど、勇者ってすごいね!」
「世界に一人だけってか!?」
「私はもっと気になる事があるけど……」
「ここでうだうだしている暇はなさそうだ。……ところでお前たちは二十五年前に戻らなくていいのか?」
「んにゃ、鬼たちが言ってたんだけどよ、俺たちは元々この世界に住んでいたらしいんだ」
「……?」
「つまり! 俺たちが住んでいた世界は別に俺たちの居場所だったわけじゃねえんだ」
うまく説明できていないが、大体やかった。
「ならばこの世界が本当の俺たちの居場所、というわけか」
「そういうこと。ちなみに、レインの住んでいた世界はランタがぶっ壊れていたんだっけ。この世界は壊れてないようだぜ。ただ、妹は……」
妹は、結局助けることができなかったのか。
「そうか……。要するに、正史の世界ということか」
何度も同じことを繰り返す。まだ頭が混乱しているからだ。
「そういうことみてえだな」
まだまだ謎の部分があるが、今はこれで良しとしよう。
「……お前たちはこれからどうする。もう、俺と関わる必要はないはずだ」
「そうだな、一度別れようぜ。また再び巡り会った時はよろしくな!」
「リベルトが行くなら私も行くよ!」
「……クロスは?」
「……。私もリベルトと共に行くね。また、会えるといいな」
「会えるさ……。次は、誰にも負けない強さも持ってやる」
あの邪神との戦い、決着はどうなったのかわからないが、俺は生きている。だが、負けた。
しばらくは俺の正体について研究することにしよう。そして、やるべき事をやらなくてはならない。
これからは一人で行動することになる。元々一人だったのだ。そして、彼らは再び会うことを望んでいる。これからの旅は、自分探しの旅と言えよう。
「皆、元気でな……」
俺も随分と丸くなったものだ。それは彼らに感謝しよう。
さあ、出発の時が来た。全ては、振り出しに戻る。これが本当の''全ての始まり''だ。
第二部プロローグは少し時間がかかります。




