第三話 絶望
「……ルーラー、姿を現せ」
あれからリベルト達に話を聞いた。ルヒューブルのこと、そしてルヒューブルの主がルーラーであることを。ルヒューブルが襲ってくるのであれば、その主であるルーラーもまた襲いにかかってくるはずだ。だから奇襲を受ける前にこちらから攻める。
『ここにいるぞ』
「……お前は神ではないはずだ」
『ふむ、バレたか。仕方ない。だが、神であることは確かだ。邪神だということには変わりない』
あっさり認めたな。
「ほう……邪神か」
ルーラーは姿を変えた。いや、本来の姿なのだろう。
『知られたからには生かしてはおけん。覚悟しろ』
「……覚悟するのはそっちだ」
俺は三人に向かって言った。
「今回は、お前たちは手を出すな」
「なんでだよ⁉︎」
当然の反応がきた。
「……死なないでほしい」
皆が殺されないためには、こうするしかない。
「……リベルト、諦めましょう。レインは本気だわ」
「くっ……」
これ以上仲間を失いたくないのだ。理解してくれ、リベルト。
「……ルーラー、戦うのは俺一人だ」
『ほう……』
「俺が死んだら彼らを殺してもいい」
『いいだろう』
「だが、俺は死ぬつもりはない。……いくぞ」
ルーラーに近づいた。だが、彼の結界により吹き飛ばされる。
「がはっ……」
『無駄だ』
結界の拒絶反応により、吐血する。
「レイン!」
「……黙って見ていろ」
剣を突きたて、突進する。だが、やはり結界を破ることはできない。
『おまけだ』
奴のエネルギー弾により、腹を撃ち抜かれる。
ルーラーは近づき、俺の喉元を締め付ける。
まともに息ができない。
「コヒュー……コヒュー……」
「おい、あいつの息が……」
「レインが手も足も出ないなんて」
「約束……したでしょ……」
ああ、約束したな。ついさっきしたばかりで忘れるわけがないだろ。
『死ね』
締め付けが強くなる。だが俺も気力だけで奴の手を掴む。
『ほう……まだやるか』
「……どのようなことが……あって、も、俺、は……絶望し……ない……」
微かな声でしかもはやまともに喋ることはできなかった。
『この期に及んで希望を持つか』
俺は希望など持ち合わせてはいない。あるのは、現実だ。
ルーラーを蹴り上げ、何とか離れる。喉元に溜まっていた血が一気に噴き出す。
『ふん……』
「ゴポッ……ゼェゼェ……っく、まだ、これからだ……」
「レイン、もう無茶するな!」
『ああ、絶望するのは彼らだったか。貴様より弱い奴らが我に勝てる道理はないものな』
「……バカに……するなよ」
その時だった。
『我が力を使え』
あの時の幻聴が聞こえてきた。一体なんなのだ、これは。ピンチになると現れるのか。
『……一思いに殺してやる』
体が動くことはなかった。ここまでなのか。ここで、俺は死ぬのか。約束は果たせないのか。思考だけは冴えていた。そのまま俺は目を閉じた。




