第二話 約束
「……これから、今までよりもずっと強い敵と戦うかもしれない」
「どうしたの?」
あのルーラーとやらはただの神ではなかった。
「ルーラー……あのジジイはただの神ではない。おそらく、全知全能というのは嘘だ」
「? どうして?」
「全知全能ならば俺たちの名前を知っていて当然だろ。たとえ別の時間からやって来たとしても」
「それは確かに言えるわね」
全知全能じゃない、というのは問題ではない。それよりも。
「……それよりも、禍々しい力を感じた」
「禍々しい……か」
「警戒しておけ。前に戦ったやつらとは比べ物にならないと思われる」
「うん……レインは、それでも戦うんでしょ」
「ああ。どんなに強くてもそれを超えるだけ、だ」
「レインは強いね」
強くはない。強くあろうとするだけだ。
「どうかな……」
「死なないで」
「前にも言っただろ、死ねない、と」
「確証がないわ。……約束して」
「……約束する」
約束、か。
「これからもずっと一緒にいてくれるよね?」
「そちらが望むならそうしよう」
彼女は満面の笑顔で答えた。
「うん!」
その目は輝いていた。俺には眩し過ぎる。彼女は俺と初めは似たような性格だと思っていたが、どうやら真逆のようだった。
「約束といえばこれでしょ!」
彼女は右手の小指を突き出して来た。
「なんだ?」
「レインも出して」
少し躊躇ったが、出すと絡まれた。
「これで約束。ちゃんとしたからね」
「……ふっ」
「あ、笑った!」
そこまで俺が笑うのが珍しいのか。
「おーい!」
ちょうどリベルト達がやってきた。
「……お前ら指切りなんてしてどうした? まさか婚約!?」
「……は?」
こいつは何を言っているのだ。
「見せてくれちゃってますねーお二人とも」
ハースまで茶化してくる。
「ちちち違うよよよ!? こ、これはその……」
何故動揺するのだ。
「ん? これは? なんなのかなぁ、うひひ」
「……リベルト、良い加減にしろ。これはただの約束だ」
「んぁ? 約束?」
「そう、約束。……これから戦う相手はこれまで以上だ。だから、お互い生き延びる約束をしたところだ」
「なんだ、そんな程度か」
「そ、そうよ!」
「……リベルト、ハース、お前達もしよう」
「お、いいのか?」
「やるやるー!」
クロスは少しムッとしていたが、俺にはよくわからなかった。
「……よし、みんな生き延びるぞ」
「「「おー!」」」
どのようなことがあっても皆を殺させない。
この約束は後々重要になります。




