第一説 出会い
早速1話も投稿させてもらいます。
あれれ、どっかで見たような設定だなあ、なんて思ったかもしれません。実際、当時あの狩りゲームにどハマりしていたのでその影響は少なからず受けています。が、話が続くに連れて全く別のものになっていきますので長い目で見ていただきますようよろしくお願いします。
前回のあらすじ
突如として、俺は過去に飛ばされていた。何故過去へ飛ばされたのかは分からない。分からないことばかりだったが、俺はあくまでも冷静だった。情報を集め、そしてこの世界で生きていけるように狩りの仲間を募った。
俺の募集を見てやってきたのだろう三人と俺は自己紹介を行った。
「あんたがあれに書き込んだやつか? 風貌がそれっぽいのはあんたしかいねえからな」
三人のうち、男が話してきた。
「ああ、そうだ。間違いないだろう。まずは名前を聞こう」
「そうだな、俺の名はリベルトって言うんだぜ。よろしくな!」
彼はリベルト、か。赤髪短髪。それなりにガタイが良く、背中には大剣を背負っている。だが、装備がいまいち心配になるようなボロさである。これではすぐに破壊されてしまうだろう。
「ああ……よろしく。その大剣はうまく扱えるか?」
「勿論だ!」
成る程、根拠のない自信と暑苦しいのがこいつの特徴か。今の所俺の彼に対する考えはこういう感じだ。
「私の名前はクロス」
女二人のうち、一人はクロスというらしい。黒髪長髪である。清楚というべきなのか、狩りには少し向いてないと思われる格好である。彼女は二刀流のようだ。二刀流は珍しい。そもそも扱えるのが難しいからだ。常に両腕に神経を通し、どちらも同じ力を加えなければならない。そうしなければ簡単に刀が壊れる。しかしまあ、こうやって拵えているのだから扱えるということだろう。深くまでは聞かないとする。
「んであたしの名前がハース!」
もう一方の女の名前はハース、か。金髪でショートヘアーといったところか。そして性格は快活であるようだ。彼女の武器は弓。二人が接近、一人で遠距離、か。中々バランスが取れているのではないか。ただ弓より今の時代、銃をオススメしたいところだがな。もっとも、まだ十分に文明は進んでおらず、銃もつい近年に開発されたものだ。とはいえもう二十五年も経つのか。この街のレンガ造りもつい最近になってのことであるだろう。まだ木造があるところも多い。
さて、三人が言い終えたので次は俺だ。
「……改めて俺の名はレインだ。レイン・ダグラス」
そしてこの俺、レインは黒髪長髪。しかもかなりの特徴的な髪型をもっている。風貌がそれっぽいというのは板に変な髪型をしていると書いたからだ。右目は髪で覆い被せられ、後ろ髪ははねまくっている。クセなのだ。五つの髪の塊がとんがっている。
ちなみに俺の愛剣とも言うべきこの剣は狩人を始めてからずっと共にしてきたものだ。ただの剣ではないことをいずれ証明する。
「レインか。よろしくな! にしてもお前すごい髪型だな。どうなったらそうなるんだ?」
早速ツッコミにかかってきたリベルト。仕方あるまい。
「気にするな。クセだ」
「でも、色々気になる部分があるよね。左頬の十字傷とか、顔の傷とか、あとなんで右目隠しているの?」
するどいところをついてくるな、クロスとやらは。確かに、このように顔に傷が沢山あっては疑問に思わない方がおかしいか。普通であれば顔に傷などない。
「ああ、これはだな……」
右目を隠している理由は額に呪いがかかっているからだ、と答えた。彼らは半信半疑であった。当然だ。呪いなど言って誰が信じるものか。しかし、実際に呪いは存在しており、その呪いを見た者は死に絶える。過去に二度、呪いで人を殺してしまった。それを知った人間は皆俺を避けた。呪いをかけた者はどうやら俺を孤独にさせたがっているらしい。しかし、簡単に対策がとれたので、今はこうして髪で隠しているのだ。ちなみに包帯や巻物をしてみると見事に焼け、消失した。俺の体以外の物質をくっ付けると焼けてしまうみたいだ。
「まあ、これ以上は無粋だからやめときましょかー」
「そうだな、ハースの言うとおりだぜ」
ひとまずこれで、俺の容姿に関する質問は終わったようだった。あまり俺は自分のことが好きではないため、聞かれても困る。
「……さて、早速だが狩りに出かけよう。みんなの腕も見てみたいしな」
腕試しに、この近辺最弱の鳥類を狩ることにした。あらかじめあのでかいのと小さいの二人組に聞いておいたのが正解だったな。最弱とはいえ、攻撃されると体を真っ二つにされかねない上に何も持たない人間なら簡単に喰われてしまうだろう。俺からすれば最弱、と言ったところか。
防具を整え、出発することにした。
「えーっと、その鳥類なんていう名前なんだっけ」
「……まさか、新米なのか」
俺は狩人生活を二年続けている。狩りのノウハウをかなり詰め込んでいる。が、リベルト達はどうやら初心者のようだった。いくら土地を知っているとはいえ少し心許ない。
「ああ、すまねえな。最近学校を卒業したばかりなんだ」
狩人にも専用の学校があり、狩りについての知識を学ぶ。勉学、訓練など。俺もそこに通っていたことがある。
「リベルトは勉学の時にひたすら寝てたもんね。そりゃバカなはずでしょ」
「んな、クロス、俺をバカにするんじゃねえよ! 俺だってやる時はやるんだからな!」
彼らは仲良しのようだ。談笑が続いている。仲が良い、か。俺には到底理解できないな。したくてももう二度とすることはできない。
「それはともかく、標的の名前はカイルだ」
カイルは、大きな翼を持っており、その翼を使って風をなぎ払い、獲物を吹き飛ばし、そしてその隙をついて持ち前の大きな嘴で捕食する。セオリー通りなら、まず翼を切ることが何よりの最優先事項である。翼さえ切ってしまえば小さい体なので嘴に気をつけて行動すれば難なく狩れることだろう。そこまでできれば、の話なのだが。
この説明を彼らにすると、クロスは勉学に励んでいたのか、特に反応を見せなかったが、リベルトとハースは感動していた。バカ二人らしい。
「いやーレインって何者なの!?」
「天才だろ、まじで天才」
お前らがバカなだけなんだよと突っ込みたいが、初対面でそれを言うのは相応しくないと考えてやめた。
「狩人なら知ってて普通のことだと思うよ」
クロスに同意する。助かった、こいつはまともだ。
しかし、危険だな。一歩間違えたら、このバカ二人は命を落とすところだった。さすがに俺の目の前で死なれるのはごめんだ。
「とりあえずは皆の腕を見せてくれ。勉学はしてなくとも実地訓練はしているのだろう?」
「おうよ!」
「あんまり自信ないけどねー」
「実戦は初めて、だね」
うむ、益々不安になってきた。何故実地訓練がないのだ。……実地訓練か。いや、これは考えないでおこう。
不安になっても前へは進まない。彼らを引き連れてカイルの住まう洞窟へと向かった。
洞窟への入口はまず森抜けなければならない。普段は立ち入り禁止だが、俺たち狩人には特別に入れることになっている。狩人たる証拠は先ほど話した通り、学校だ。それを卒業することで証拠となる紋を貰える。俺もしっかりと持っている。
森を抜けようとした時のことだ。
「さあ、もうすぐ目的地に着くぞ。準備を怠るな。……これは遊びじゃない。殺し合いだ」
生きるか死ぬか、弱肉強食の世界。一度人里から出れば明日、いや今日生き残ることも保証されないそんな世界。
何かが近付いてきているのを感じた。ただの鹿の群れ、か。とはいえ三頭くらい。
「丁度いい準備運動になりそうだ。あそこに見える鹿の群れを狩ってきてくれ。都合よく三頭いる。奴らなら特に抵抗もなく倒せるだろう。勿論、油断は禁物だがな」
「りょーかーい!」
ハースは元気良く答えた。
三人は早めに殺すことに成功した。良かった、流石に実力はあるらしい。リベルトは一刀両断、クロスは確実に切り刻み、ハースは目を潰し、胸を射る。
「これくらい楽勝よ!」
「及第点だな。あとはその実力をカイルの時に発揮してくれ」
「レインの実力も見てえけどな」
「それはその時にならないとな」
「わかった、これだけの自信があるんだ。期待しているぜ!」
期待されても困る。勝手に期待されて、勝手に失望するかもしれない。……気にしてはいけない。迷っていては自分を守ることすら出来ない。太刀筋を乱してはいけない。そうやって自己暗示をかけ、振り切った。
カイルの住む洞窟に入ろうとする。この時期は繁殖期ではないから、複数はいないだろう。一体であることを願う。
もう一度装備の点検をした。
「……時間だ、行こう」
次回予告
いよいよ狩りの始まりだ。彼は初心者である三人にどんなものかを見せていく。そして少しずつ成長する三人に彼も悪い気はしていなかった。
次回、LIVING LEGEND 第二説 狩猟
その出会いは人生を変える。