第五話 雪山の守り神
「確かここら辺のはずだ」
山頂付近、この近くに祠があるはずだ。
「これじゃない?」
雪に覆われていたが、払うことでそれを確認することができた。
「これを壊せば戦闘開始だ。いよいよクロスの実力が見れるな。……今までは怪我したり、時間稼ぎだけだったしな」
「言わないでよ」
言葉の割には笑っている。
「悪い……」
「別にいいのよ。今回で見せつけてやるんだから」
「そうか……頑張れよ」
鼻息を荒くする彼女。そこまで意気込まなくてもいいと思うが。
「よし、起動するぞ」
石碑を拳で壊す。
「その腕でどこからそんなバカ力が……」
「……来るぞ」
雪崩が起き、そこから大きなトカゲが出てきた。
「うわぁ、気持ち悪い」
「……一応、守り神のはずだが」
のそのそとこちらに近づいてくる。
「いやぁあああ! こないで!」
などと言いつつ、近付くクロス。そして顔面を切り刻んでいた。
「死ね! 死ね!」
何と横暴な切り方だ。
トカゲ、ではなく守り神・ルグトは体を翻し、尻尾を彼女に叩きつける。飛んできた彼女を支える。
「いったぁ……あ、ありがとレイン」
「……問題ない」
「あんのクソトカゲ!」
彼女の性格が逆転している気がする。
「少し落ち着け……」
「良い!? レインは手を出すんじゃないわよ!」
「あ、ああ……」
どうしてこうなったのか。
無惨に斬られたトカゲは呆気なく死んだ。
「見掛け倒し……」
「ふん、こんなの死んで当然だわ」
「……あくまで、前座というわけか」
「さっさと村に帰ってさっぱりするわよ!」
「……そうだな」
水浴びをしたら彼女は冷静になってくれるだろうか。
守り神のくせにどちらも弱い?
理由はいずれわかります。




