第一話 伝説
次に俺たちがやってきたのは古代だった。ようやく人類の文明が発達してきたくらい。てっきり、今の言葉と違ったものだと思い込んでいたが、同じだったのだ。何とか言葉が通じることで、この世界が何となくわかったのだ。そして今、俺たちは宿で会話をしている。
「しっかしまあ、今度は古代と来たか」
「村の人によると伝説があるらしいよ」
「伝説? なにそれ美味しいの?」
「あんたねぇ……」
他愛のない話だが、こいつらの会話は決して悪くなかった。
「クロス、伝説についての詳細を……」
「ええ、説明するわ。この近くに雪山と火山があるの。それは知ってるでしょ?」
「ここからでも見えるねー」
「それぞれ守り神がいて、悪いことをするとそれが怒って天候を狂わすらしいの」
「なんで守り神なのに人に害を与えるんだよ」
「まあまあ、落ち着いて。守り神ってのは、人々の守り神じゃない。地球にとっての守り神なの」
「……なるほど、そういう意味か」
「どういう意味だ!」
「要するに、地球にとって害のあるものを排除するの。たとえ人間でもね」
クロスの説明は完璧だ。
「あーなるほどね」
「本題に戻るんだけど、その守り神 は死んだらしいの。神殺しとも呼ばれるその伝説の龍が存在するらしいわ」
「おいおい、それってまさか」
「……そのまさかだろうな」
「地球の守り神がなくなり、その龍が暴れ、地球は滅ぶと言われているわ。人々は畏怖を込めて、その龍を」
思わずクロスの台詞を横取りしてしまった。
「……滅界龍、か」
「そうね。その通りよ」
嫌な予感がしていたが、やはりこういうことになるのか。
「その伝説、聞いたことがあるな。孤児院にいたときに、お伽話で教えられたんだ。『こわいこわいりゅうがいました。せかいはほろびようとしたのです。とつぜんあらわれたよにんが、そのりゅうをたおし、せかいをすくったのです』ってな。もしかしてその四人って俺たちじゃね!?」
「……その可能性は、あるのかもしれないな」
「だろ!? だろ!?」
それにしても、都合が良すぎるな。確かに、お伽話通りの話ならそういう展開になる。
「リベルト、よく覚えてたわね」
「あたしはすっかり忘れちゃってた」
「ただ、この世界はまだちゃんとそれぞれの山に守り神がちゃんと存在しているのよ」
「え?」
「……なるほどな。伝説はあくまで伝説というわけか。これから起きるかもしれないことを予知して、あらかじめ伝説として伝える。そして、その時が来ても対策が取れるように」
「実際問題としては何の対策も取れてなさそうだけどね」
「対策ならあるじゃねえか」
俺たちがいるだろ、ってことか。
「……逆転の発想でもしてみるか」
「なんか思いついたのか!」
「俺たちが、守り神を殺す……」
「「「え!?」」」
さて、古代編です。未来編とは違って話数が多いです。内容自体は少ないですがね。




