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〔たこ焼き兄弟。〕

作者: 夕凪詩人

たこ焼きの話です。

たこ焼きを食べながら読むといっそ面白い・・・ことを祈ります。




 ジュージュー・・・。

 カチャカチャ・・・クルックルッ。

 ジュージュー・・・。



「ヘイお待ち!たこ焼き6個、100円ね!!」

「あっ、はい!じゃあこれで。」

「はいはい、100円ちょうどね!毎度あり!!」

 ・・・

 上の方からそんな感じの声が聞こえてくる。

 俺は・・・たこ焼きです。

 名前は・・・たこ焼・き太郎(笑)

 いやもう笑うっきゃないよね?たこ焼きだぜ?太郎じゃなくてき太郎だぜ?妖怪かっつーの。

 まぁ・・・笑おうにも口が無いんですけどね。


???『お兄ちゃ〜ん!何してんの?』

 声の発信原は俺のいる場所の反対側。

き太郎『おぉ!たこ焼き兄弟の紅一点、普段はしっかりもので、お兄ちゃんの前でだけは甘えん坊になると言う定番の妹キャラ設定のたこ焼・き六子じゃないか!』

き六子『何でそんな説明的なの?つーかお兄ちゃんウゼェ』

 えっ?あれ?甘えん坊キャラは?

き六子『てゆーかー、チョーうけるんですけど!マジウゼェ!アヒャヒャヒャヒャ!』

 作者さーん!設定ミスってますよー?妹ってこんなんじゃないっしょー?

???『兄さん!』

???『兄上!』

 今度は後ろと左横から声がした。

き太郎『おぉ!いつも二人一緒のたこ焼・き次郎とたこ焼・き三郎じゃないか!どうしたんだそんなに慌てて』

き次郎『き四郎兄さんが・・・き四郎兄さんが・・・』

 なっ何があった!?まさか!?

き三郎『・・・食べられました。』

 やはり・・・か。







「んーー、たこ焼きおいしぃー!」

「ウチのたこ焼きはどこにも負けねぇよ!」

 少女は六個入りだったたこ焼きの一つを食べ、残りを袋にしまった。

「お母さんにも食べさせて上げよーっと。」







き太郎『たこ焼・き四郎ォォオォォォオ!!!』

 俺は叫んだ。

 まぁ、口なんかないから声は出てないけど。

き次郎『兄さん!あの女・・・異常です!たこ焼きを真ん中から食べるなんて・・・』

 落ち着け、き次郎。

き三郎『普通、右利きなら右端から、左利きなら左端からではないのですか!?それを・・・真ん中なんて・・・』

 確かにその怒りももっともだ、だから落ち着け、青のりが頭から落ちてきてるぞ。

き三郎『むっ、失礼。それで兄上、これからどうします?』

 どうするってもなぁ・・・蓋閉められちゃってるし、開いたところで食われてジ・エンドしかねぇし。

き六子『てゆーかー、チョーダリィんですけどー?』

 き六子黙れ。

き次郎『そうだ、き五郎!おまえはどう思う?』

 そういや、たこ焼き兄弟五男坊のたこ焼・き五郎は、まだ一回も喋ってないな、何を考えているんだ?

き五郎『・・・・自分・・・たこ入ってませんから・・・』

太・次・三『・・・・・・なんかごめん。』








「たっだいまー!お母さん、たこ焼き買ってきたから一緒に食べよー!」

「あら、お帰りゆり子。たこ焼きなんて気が利くわね」

 ゆり子はたこ焼きを開け、机の上に置いた。

 少し冷めたとはいえ、まだたこ焼きのソースが香る。

「あぁ、辛抱たまらん!!!」

 ゆり子は爪楊枝でたこ焼きの一つを刺し、口にほりこんだ。

「うーん、やっぱりおいし・・・ん?・・・あれ、これたこ入ってないや。」







き太郎『き五郎ォォオォォォオ!!!』

 俺は叫んだ(本日2度目)。

 まぁ、やっぱり音にはならないけどね♪

き次郎『・・・・まさか本当に・・・タコが入っていなかったなんて・・・き五郎・・・・』

き三郎『兄上!もし私にもタコが入っていなかったら・・・どうすればいいんですか!?焼きですか!?たこ焼きにタコが入ってなかったら、焼きになるんですか!?焼・き三郎ですか!?』

 落ち着けき三郎、かつお節が落ちるぞ。

き三郎『むっ、失礼。』

き次郎『きっ、き太郎兄さん!大変です!空に爪楊枝が!!!』

き太郎『なに!?やつら、温かいうちに食べるつもりか!?』

き三郎『あっ、兄上!!爪楊枝が、爪楊枝がぁぁあ!!』

 ブスッ。

き太郎『きっ、き三郎ォォオォォォオ!!!』

き三郎『うわぁぁあぁ!くっ、食われるぅぅうぅ!!!』

 パクッ。







「あらっ、本当においしいわね。ちょっと冷めてるけど。」

「でしょー、100円だったんだよ!安いよねー!」

「6個で100円・・・安い・・・か?普通でしょ?」

「もぅーお母さんってば!アハハッ!」

「ウフフッ」

「「ウハハハハッ」」







き太郎『き三郎ォォオォォォオ!!!』

 俺は叫ん・・・以下略。

き次郎『これで残ったのは僕とき六子と兄さんだけです・・・』

 六個兄弟だった俺たちが、今では半分か・・・運命とは、残酷だな。

き次郎『兄さん・・・僕はこんな運命は受け入れられない!食われていった弟たちの為にも、僕は奴らに一矢報いてやる!!!』

 なっ、何をするつもりだき次郎!?

き次郎『ウォォオォ!!!』

 き次郎の頭のかつお節が踊り狂っている!?まさかこの技は・・・俺ですら習得できなかった伝説の奥義・・・

き次郎『ハァァアァ!!!奥義!《発熱》!!!』

き太郎『きっ、き次ろぉぉおぉぉぉお!!!』







「次はこれ食べよーっと」

 ゆり子は爪楊枝をたこ焼きに刺し、口に運んだ。

「んっ?んーーーーっ!!!ホホァホホァ!!!(訳:お茶ぁおぉ茶ぁ!!!)」

「ほらゆり子、はいお茶!まったく、情けないんだから!」

「プッハッーー!!!いやーまさか冷めてないたこ焼きがあったなんてさ、舌火傷しちゃったよ♪」

 ゆり子はそう語りながら、たこ焼きをお茶で胃へと流し込んだ。







き太郎『き次郎・・・立派だった、ここはやはり、この兄も後に続かねばな・・・!』

 俺は叫ばずに、ありえないくらいかっこいい顔で、空を見上げた。

 青空が目に染みるぜ!みたいな顔もしてみた。

 えぇまぁ、ご察しの通りたこ焼きに表情もへったくれもありませんがね。

き六子『お兄ちゃん・・・みんな食べられちゃったの?』

き太郎『き六子・・・何でこのタイミングで本来の妹キャラに戻るんだ?』

き六子『お兄ちゃん!!空に爪楊枝が・・・2本も!!!』

 えっ?無視?

 まぁ、いいや、今はそんな場合じゃ無さそうなので精一杯焦るか。

き太郎『なっ、なにぃ!!?くっ、奴ら、同時に二つ食うつもりか!!!』

き六子『お兄ちゃん・・・このままじゃ食べられちゃうよ・・・』

 俺は視線を(目なんて無いけど)き六子に向けた。

き太郎『き六子、俺たちたこ焼き兄弟は食われるために生まれた・・・確かに食われるのは恐い、しかし、食われるということは幸せでもあるのだ!それを理解しなさい・・・』

き六子『お兄ちゃん・・・』

き太郎『き六・・・』

 ブスゥッ!!!

き太郎『グァァッ!!!つっ爪楊枝が・・・俺の頭頂部にぃ・・・しかも2本ともぉ・・・』

き六子『お兄ちゃあぁぁぁん!!!』

き太郎『き六子!!兄の食われっぷりをとくと見るのだ!!!』







「あらあら、おいしそうだね」

「ちょっとお母さん!たこ焼きに爪楊枝を刺したまま持ってたら落としちゃうよ?」

「大丈夫よ、2本も刺してんだから。だいたい、いくら母さんが年だからってそんなドジ踏むわけ・・・あっ!!!」

「あぁ!!!」

 ボトッ。

「お母さんだから言ったでしょう!?早く拾わないと!!3秒ルールよ!」

「わっ、わかってるわよ!早く拾わないと・・・あぁっ!!!」

「あぁっ!!!」

 母親の体がバランスを崩し、姿勢制御の為に床に手をついた。

 グニャッ。

 母親の手の下から嫌な感触。

 手を上げたそこには・・・潰れたたこ焼きがあったそうな・・・。







き六子『お兄ちゃあぁぁん!!』







「も〜っ!お母さんてば」

「悪かったって思ってるよ、そんなに怒らないどくれ」

 母親が潰れたたこ焼きを台所へ捨てに席を立つ。

「むぅぅ〜たこ焼きもあと一個か・・・」

「おぉ〜い!父さん帰ったぞ〜い!ヒックッ!」

「あっ!お父さんってば酔ってる!!お酒飲んで帰ってきたわね!?」

「おぉ!TAKOYAKI(たこ焼き)じゃないか!!」

 ヒョイッ

「あっ!ちょっ、お父さ・・・」

 パクッ!







き六子『ギャーーー!!!オヤジに食われるぅぅ!!!』







 ムシャムシャ。

「んーーーー!んまい!!よし!今夜はTAKOYAKI(たこ焼き)だぁ!!!」

「もーーー、お父さんてば、読みにくいローマ字表記なんてしちゃって、アハハッ!」

「ワハハッ」

 いつのまにか母親が帰ってきている。

「ウフフッ」

「「「アゥワハハハッ」」」

 その日、ゆり子の家族は笑顔に包まれて穏やかに過ごしましたとさ・・・。




 余談だが、その日のゆり子宅の夕食は、たこ焼きではなくお好み焼きだったそうな・・・。



THE・END




ちなみにこの話で出たゆり子は『勇者の話。』の使いまわし・・・もとい、友情出演・・・なんか違うな?

ん〜・・・じゃ、リサイクルで。

そんな感じです(オィ)。


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― 新着の感想 ―
[一言] ちょこちょこ入るつっこみがいいです(笑) なんかこれからたこ焼き食べるの躊躇しそうですが、面白かったです!
[一言] 初めまして。 たこ焼き好きもあり読ませて頂きました。たこ焼き側の視点が正直笑えました。(笑)  一番最初に兄弟(妹)なら、たこ焼きは十分内で出来そうだから十分兄弟(妹)だなと思いました。 …
[一言] オーバーリアクションなところがウケました。
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