あやとり
掲載日:2026/09/29
あやとりの
糸を差し出し
また取って
まだ解けぬまま
雨の園庭
解説:
雨が降ると、しずか先生はお庭へ出てはいけないと言った。
満腹の皆が部屋の中で緩慢に積み木をしたり、絵を描いたりして過ごしているあいだ、窓のそばに座っていた。
先生が閉めたカーテンをこっそりめくると、園庭の砂には薄い水たまりがいくつもできた。木のベンチを見ているだけでお尻が冷たくなり、滑り台は階段からでもすべれそうだった。
ぶるり、と身震いがする。
カーテンの下から潜り込んできた隣の席のあの子が毛糸の輪っかを見せてきた。そして「ふたりあやとり」はわかるかと聞く。
あやとりなら知っている。毛糸を輪っかにしたものを、左右の指に引っ掛けて遊ぶ。
ふたりあやとりはわからない。
「知ってる」そして、「どうやるの」と聞いた。
聞けば単純で、一人が持ったあやとりをもう一人が横から受け取ると言う。
だがやってみると複雑で、受け取り間違えるとたちまちほどけてしまった。
そしてうまく受け渡すと、糸は思いもしない形になった。
夕闇のころ迎えが私を探しても、もう一度、と糸を取り合った。
今、あの子の名前を思い出そうとして、
うた:
あやとりの
糸を差し出し
また取って
まだ解けぬまま
雨の園庭
以上




