エピソード5 静かな覚醒
夕暮れの鐘の音が、学園の石畳を伝って低く響いた。
訓練場の隅で、ガウタムは一人、呼吸を整えていた。
人の視線がないこの時間だけが、彼にとって本当の休息だった。
「……やっぱり、ここに反応するか」
視界の端に、淡い青白い光がにじむ。
【システム通知】
【封印レベル:一時的解除】
【条件達成:危機回避】
「一時的解除……?」
思わず眉をひそめる。
自分では何かをした覚えはない。
それでも、体の奥で静かに脈打つ“何か”が、確かに目を覚ましつつあった。
その時――
「こんなところにいたんだ」
背後から、聞き慣れた声。
振り返ると、アリアが立っていた。
夕焼けを背にした彼女は、どこか柔らかな雰囲気をまとっている。
「探したよ。訓練の途中でいなくなるなんて」
「……少し、静かになりたくて」
そう答えると、アリアは小さく笑った。
「ガウタムって不思議だよね。
あれだけの力があるのに、目立つのを避けるんだから」
「力なんて……まだ、何も証明してない」
空を見上げながら言うと、アリアは一歩、距離を詰めた。
「でも私は、信じてる」
その一言が、胸の奥に静かに沈んだ。
同時に、再び文字が浮かび上がる。
【隠しフラグ発動】
【重要人物との信頼度上昇】
(……静かに生きるつもりだったんだけどな)
誰にも聞こえないように、ガウタムは息を吐いた。
遠く、封印ダンジョンの方角が、かすかに不気味な光を放つ。
気づかぬうちに、運命の歯車は回り始めていた。




