第36話 封印の真実 ―忘却された起源―
廃墟の空は、静かに歪んでいた。
風は吹いているはずなのに、
どこか“外側”から見られているような感覚が消えない。
ガウタムは立ち止まり、ゆっくりと目を閉じた。
紋章に刻まれた文字が、微かに共鳴している。
「……来るな」
その瞬間――
空が裂けた。
だが、そこから現れたのは観測者ではない。
“記憶”だった。
光でも闇でもない、淡い断片。
それが空間に広がり、世界を塗り替えていく。
声が響く。
「第十三の試練――『封印の真実』」
「お前の起源を見よ」
視界が変わる。
ガウタムは、見知らぬ場所に立っていた。
だが同時に――
“知っている”場所でもあった。
白い空間。
広大で、静かで、完全な世界。
そこには、複数の存在が立っていた。
光のような存在。
形は曖昧だが、圧倒的な“上位性”を持つ。
神々。
その中心に――
もう一人の“ガウタム”がいた。
だがそれは、今の彼とは違う。
より静かで、より深く、そして――
“完全”に近い存在。
「……これが、俺?」
声は届かない。
ただ、光景が流れていく。
神々の声が重なる。
「この存在は危険だ」
「均衡を超えている」
「単一ではない。矛盾そのものだ」
もう一人のガウタムが、静かに言う。
「……だから?」
その声には、恐れがなかった。
神々の一柱が前に出る。
「お前は世界を統合する」
「だがそれは、破壊と同義だ」
「故に――封印する」
空間が揺らぐ。
無数の鎖が現れ、もう一人のガウタムを縛る。
だが――
彼は抵抗しない。
ただ静かに目を閉じた。
「……未来に任せる」
その言葉と共に、光が弾けた。
記憶が崩れ始める。
ガウタムは息を呑む。
「俺は……封印されたんじゃない」
「自分で、受け入れた?」
その瞬間。
視界が再び歪む。
神々の視線が――
“今のガウタム”へと向けられた。
「観測対象、記憶に到達」
「確認:自発的封印」
「理由:未来における統合完成のため」
空気が震える。
ガウタムはゆっくりと目を開ける。
「……そういうことか」
拳を握る。
「俺は、壊すためじゃない」
「繋ぐために――ここにいる」
紋章が強く輝く。
すべての文字が共鳴する。
新たな刻印が現れる。
「起源」――
そして「自己選択」。
声が響く。
「第十三の試練……突破」
「お前は、自らの起源を理解した」
「それは、神をも超える可能性」
静寂。
だが今回は、違う。
その静けさの中に――
“確信”があった。
ガウタムは空を見上げる。
そこには、まだ神々の気配がある。
だがもう、恐れはない。
「……続けよう」
風が吹く。
物語は、核心へと近づいていく。
――続く。




