第15話タワー・オブ・セレクション
塔の扉が、完全に開く。
中は闇ではない。
光でもない。
“空白”。
足を踏み入れた瞬間、
景色が変わる。
草原は消え、
無数の扉が並ぶ白い空間。
上空には、あの小さな目。
『第一試験:自己認識』
文字が浮かぶ。
ガウタムの前に、一枚の鏡が現れる。
そこに映るのは――
現在の自分ではない。
黒い翼を持ち、
冷たい瞳で世界を見下ろす姿。
「……未来か?」
鏡の中のガウタムが口を開く。
『違う』
『選ばなかった可能性だ』
空間が震える。
無数の扉が一斉に開く。
それぞれの中に、
異なる“ガウタム”。
塔を支配した王。
仲間を失った孤独な戦士。
観測者そのものになった存在。
『選べ』
『どの自分になる』
融合は完成している。
だが安定していない。
紫の光が脈打つ。
「俺は――」
扉の一つから、声がする。
アリアの声。
振り向く。
そこには、平和な日常。
戦いも観測もない世界。
『それも選択だ』
小さな目が瞬く。
誘惑。
だがガウタムは目を閉じる。
そして、すべての扉を無視して歩き出す。
「俺は、どれにもならない」
「俺は俺を作る」
その瞬間、
全ての扉が砕け散る。
『第二試験、承認』
塔が震える。
床が崩れ、彼は落ちる。
落下の中、
上空の小さな目が増える。
一つ。
二つ。
三つ。
無数。
塔は試験ではない。
階段だ。
そして――
最上階には、
“玉座”がある。
――続く




