エピソード12: 観測者、降臨
奈落の天井が、音もなく裂けた。
闇の向こうに――
巨大な“目”。
瞬きはない。
呼吸もない。
ただ、見ている。
まるで最初からそこにあったかのように。
【観測者:顕現】
融合率:78%
ガウタムの胸で、二つの鼓動が衝突する。
赤と蒼の光が交差し、空間を歪める。
それでも――
目は、微動だにしない。
『逸脱を確認』
声ではない。
意識の奥に直接落ちる言葉。
『これは最初の試行ではない』
一瞬。
脳裏に閃光が走る。
崩れ落ちる塔。
血に染まった空。
そして――
黒い翼を広げ、空を見上げる“自分”。
融合率:81%
「……あれは誰だ」
答えはない。
巨大な目は、ただ記録する。
足元の水面が揺れる。
映った自分の姿。
その反射が――
わずかに遅れて瞬きをする。
ガウタムは気づかない。
『対象:記録者』
『修正を開始』
空間が凍る。
上空に、光の槍が形成される。
圧倒的な質量。
逃げ場はない。
遠くで、アリアの叫び。
「ガウタム!」
その瞬間。
視界の端に一行だけ表示される。
【USER ID: 0001】
次の瞬間、消える。
思考が追いつく前に、
槍が落下する。
だがガウタムは動かない。
なぜか確信している。
この瞬間を――知っている。
「なら……」
静かに、目を開く。
右目が紅に染まり、
左目が蒼く燃える。
融合率:92%
「俺が、見る側になる」
その言葉と同時に。
巨大な目が――
ほんのわずかに、揺れた。
まるで。
未来を思い出したかのように。
――続く




