エピソード11 融合臨界
奈落が崩れ始める。
黒翼の本体が門の奥から姿を現す。
その存在だけで、空間が歪む。
分身のガウタムが手を差し出す。
『時間がない』
『融合しろ』
胸の封印が激しく脈打つ。
【融合率:3%】
「もし融合したら……俺は俺のままか?」
分身は静かに答える。
『保証はない』
次の瞬間。
黒翼の本体が腕を振るう。
空間が裂け、圧力が二人を押し潰す。
ガウタムは歯を食いしばる。
守るために迷い、失ってきた。
だが今は違う。
「俺は消えない」
彼は分身の手を掴む。
光と闇が衝突する。
【融合率:27%】
視界が白く染まる。
記憶が流れ込む。
過去の失敗。
繰り返された世界。
自分が何度も“選ばされた”事実。
「俺は……装置じゃない」
黒翼が咆哮する。
『融合は自滅だ!』
【融合率:51%】
ガウタムの右目が赤く染まる。
声が二重になる。
「なら――」
『自滅ごと書き換える』
完全融合直前。
だがその瞬間。
封印が砕ける音が響く。
【封印崩壊】
心臓が止まる。
世界が一瞬、静止する。
黒翼が勝利を確信した瞬間――
鼓動が、再び鳴る。
だがそれは、一つではない。
二重の鼓動。
融合率:78%
ガウタムが顔を上げる。
その瞳は、赤と蒼の混色。
「第二記録権限、解放」
奈落全体が震える。
黒翼が初めて後退する。
そして、システムが表示する。
【観測者が介入しました】
暗闇の上空に、巨大な“目”が開く。




