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ぼっちと宇宙戦艦が異世界で  作者: あおおに


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15/20

ぼっちキングと魔導兵器

 リーズの街を発ってから一週間。皆人一行が辿り着いたのは、北方の連峰に抱かれた深い渓谷の奥底だった。そこには、数千年前の「先史文明」が遺したとされる巨大な地下施設――通称『鋼鉄の墓標』が口を開けていた。


「ここが、例の遺跡ね……。空気が重いわ」

 エルザが愛剣の柄を握り直し、周囲を警戒する。

 入り口の防壁は、現代の石造りとは一線を画す未知の合金で構成されていた。皆人がデバイスをかざすと、不可視のセンサーが反応し、重厚な扉が地響きを立てて左右に分かれた。


『カイト、内部は特殊な電磁シールドと構造材によって構成されています。ここでの「兵庫」による大規模な外部要請攻撃、特に衛星軌道からの精密爆撃や広域熱線照射は使用不可能です。建物の崩落、あるいは跳ね返ったエネルギーによる自爆の危険性が98%を超えます』


(わかってる。だからこそ、こいつを持ち込んだんだ)

 皆人が腰のホルスターから引き抜いたのは、異様な威圧感を放つ大口径リボルバーだった。


 銃身には魔導回路が刻まれ、シリンダーに収まるのはわずか5発。だが、その一弾一弾が戦車の主砲にも匹敵する爆発的な運動エネルギーと、魔力を圧縮した「炸裂徹甲弾」である。

「行くぞ。目指すは最深部、宝物庫を守護するアダマンタイト・ゴーレムだ」


 遺跡内部は、自律型の防衛機構がひしめく死の迷路だった。

 皆人たちは極力戦闘を避けて進んだが、通路を完全に塞ぐ形で配置された守護者たちとは、交戦を余儀なくされた。


「来るわよ! 黒鋼ゴーレム、3体!」

 エルザの警告と同時に、漆黒の巨体が壁から分離するように動き出す。通常の剣では刃こぼれするほどの硬度を誇る相手だが、皆人は迷わず引き金を引き絞った。


 ――ドォォォォン!!

 閉鎖空間に、鼓膜を震わせる轟音が響く。

 放たれた一弾は黒鋼ゴーレムの頭部を正確に捉え、着弾と同時に内部の魔導爆薬が炸裂。数トンはある巨躯が、まるで陶器のように粉砕され、後方の壁まで吹き飛んだ。


「相変わらず、あんたのその「鉄の杖」はデタラメな威力ね……」

 セーラが呆れたように呟く。

 さらに奥へ進むと、今度は魔力耐性に優れたミスリル・ゴーレムが立ちはだかった。物理攻撃を流し、魔法を無効化する厄介な相手に対し、バルカスが盾で突進して姿勢を崩し、その隙を皆人の銃弾が貫く。


「弾数は残り12発。温存したいが、出し惜しみは死に直結するな」

『カイト、前方に高密度の魔力反応。……来ます。この遺跡の「王」です』

 通路を抜けた先。そこは、天井が見えないほど広大な円形ホールだった。


 その中央に、周囲の光をすべて吸い込むような深淵の輝きを放つ、巨大な人型が鎮座していた。

 それは、これまでのゴーレムとは存在感の次元が違った。

 高さは5メートルを超え、その全身は世界で最も硬く、最も希少な金属――アダマンタイトで構築されている。


「……嘘でしょ。ミスリル・ゴーレムが可愛く見えるわ」

 エルザが冷や汗を流す。

 ゴーレムがゆっくりと立ち上がると、ホール全体が地震のような振動に襲われた。次の瞬間、ゴーレムは巨体に似合わぬ速度で踏み込み、巨大な拳を振り下ろす。


「散れ!!」

 皆人の叫びと同時に、四人は散開した。

 バルカスが構えた大盾が、風圧だけで悲鳴を上げる。エルザが神速の踏み込みで足首を斬りつけるが、アダマンタイトの装甲には傷一つ付かず、逆に彼女の剣が甲高い音を立てて弾かれた。


「セーラ、魔法を!」

「やってるわよ! 『極光のレイ・ランス』!」

 収束された熱線がゴーレムの胸部を直撃する。だが、アダマンタイトは魔法エネルギーを拡散・無効化し、煤一つ残さない。


「クソッ、こいつ……化け物か!」

 皆人はリボルバーを構え、三連射を叩き込んだ。

 爆音とともに火柱が上がる。だが、煙が晴れた後に現れたのは、表面のコーティングがわずかに剥がれ、数ミリほど削れただけの無傷の魔神だった。


『カイト、通常攻撃は無意味です。装甲厚は推定500mm以上。全弾を一点に集中させ、装甲を貫通させる以外に勝路はありません』

「わかってる……最初から、そのつもりだ!……エルザ! バルカス! 時間を稼げ! 足を止めるだけでいい、奴の胸部から目を離すな!」


 皆人の指示に、三人が命懸けの連携を見せる。

 バルカスが真正面から挑発し、ゴーレムの強烈な一撃を盾の「いなし」で受け流す。その隙にエルザが背後から関節部を狙い、セーラが重力魔法でゴーレムの動きを一瞬だけ鈍らせる。


 そのわずかな静止。皆人は全神経を集中し、「ある一点」を見定めた。

 アダマンタイト・ゴーレムの胸部。そこには、すべての動力を司る「大魔導核」が眠っているはずだ。


 ――カチリ、と世界が止まる。

 一発。二発。

 皆人の放つ銃弾が、狂いもなく同じ着弾点を叩く。

 アダマンタイトの火花が散り、衝撃波が空気を震わせる。


「……ダメよ、カイト! 全然効いてない!」

 エルザが叫ぶ。彼女の目には、皆人の攻撃が無駄な抵抗にしか見えなかった。

 だが、皆人の目は死んでいなかった。

 五発、六発……。リロードを挟み、指先が焼けるような熱を帯びても、彼はひたすら一点を穿ち続けた。


 そして、十発目の銃弾が着弾した時だった。

 パキィィィィィィィン!!

 硬質な、だが確かな「亀裂」の音がホールに響き渡った。

「今だ! 装甲が割れたぞ!!」

 皆人の絶叫とともに、ゴーレムの胸部装甲が剥落し、その奥で脈動する、禍々しいほどに巨大な魔導核が露出した。


「よくやったわ、カイト!!」

「全員、最大火力!! 叩き込めぇぇ!!」

 エルザの剣が、セーラの魔力が、そしてバルカスの渾身の一撃が、剥き出しになった心臓へと集中した。


 光が溢れ、空間を白く染め上げる。

 次の瞬間、アダマンタイト・ゴーレムは断末魔のような駆動音を上げ、その巨体を崩壊させていった。





 静寂が戻ったホールに、金属の崩れる音だけが響く。

 皆人たちは肩で息をしながら、崩れ落ちたゴーレムの残骸を見下ろした。


「……勝った、のね」

 セーラがへたり込む。

 ゴーレムの残骸からは、夢にまで見た深蒼の金属塊――大量のアダマンタイトがドロップしていた。これだけの量があれば、カイトの『兵庫』製システムを劇的に強化し、シャルフィヤを守るための「最強の盾」を完成させることができる。


「おい、カイト。あっちを見てみろ」

 バルカスが指差した先には、ゴーレムが守っていた重厚な扉が開いていた。

 そこは噂通りの宝物庫だった。先史文明の高度な技術で作られた魔道具や、現代では失われた「古代の英知」が記された魔導書が並んでいる。


「これなら、伯爵家への面目も立つし、私たちの装備も一新できるわね」

 エルザが笑いながら、皆人の肩を叩く。

 カイトは、手に入れたアダマンタイトの欠片を握りしめ、遠い空の下にいる少女の姿を思い浮かべた。


(待ってろ、シャルフィヤ。次にあいつが現れた時、俺はもう、お前を連れ去らせはしない)

『カイト、素材の回収を急ぎましょう。これほどのエネルギー反応を放置すれば、他の魔物が寄ってきます。……それと、お疲れ様でした。あなたの射撃精度、0.01mmの狂いもありませんでしたよ』


「フン……当たり前だ。俺を誰だと思ってる」

 皆人は『兵庫』の皮肉に少しだけ笑みを返し、仲間たちと共に、宝の山へと足を踏み出した。

 それは、絶望的な戦いを乗り越えた者たちだけに許された、勝利の瞬間だった。

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