ぼっちキングの目覚め
ずいぶん久しぶりな投稿になります。
鬱病をやっちゃったもので全く筆が進まない状態が続いており、今回はAIの助けを借りて、なんとか頑張ってみました。
頑張るのもダメらしいんだけど、あんまり悠長なことも言ってられませんしねぇ。
とにかく、面白いお話になっていれば、嬉しいんですが。
天羽生皆人は、目を覚ました。
宇宙戦艦となって。
満身創痍の状態で。
識別不明の宙域で。
謎の惑星の重力に捕らわれて。
「え、なに? どういうこと?」
疑問に答えてくれる者はいなかった。なぜか乗組員が一人もいなかったのだ。
目の前には、地球を彷彿とさせる美しい惑星が浮かんでいるだけ。
しかし、不思議と動揺は少なかった。
宇宙戦艦のメモリーにアクセスし、これまでのログを読み込む。
そうして、大体のことが理解出来た。
宇宙戦艦の名前は、『兵庫』。地球の最新鋭戦艦▪▪▪であった。
それがワープエンジンの暴走により跳ばされたのが、この宙域だった様だ。
『兵庫』のデータベースには、現在観測出来る星々の位置情報に一致するものはなかった。いまだ人類の知らない宇宙に迷い込んだ可能性が高い。
乗組員は元々存在していなかった。オートコントロールの無人艦だった訳だ。
艦体には異常な負荷がかかったらしく、大破状態である。自力航行は難しく、捕らわれた惑星の重力圏から脱け出すことも出来そうにはない。
幸い姿勢制御は可能だったので、惑星の衛星軌道に落ち着くことには成功した。
あとは、何十年、何百年かかろうと、目の前の惑星の資源を使って、艦の修理を行うだけである。
問題は、なぜ皆人が宇宙戦艦『兵庫』と一体となっているかであるが。
それは、宇宙戦艦の擬似人格を形成する為に収集された人格データに原因があった。
地球で本格的な宇宙船が開発された際に、同時に長期間の孤独な環境に耐え得る艦船用の擬似人格の開発も行われた。
その時に収集された人格データの中に皆人のデータもあったのだ。
そして、皆人の人格は長期間の孤独な環境に非常に順応し得るものであった。
まさに、ぼっちの中のぼっち。
ぼっちキングであった。
もちろん、皆人の人格がそのまま艦船の擬似人格となった訳ではない。
個人の記憶は削除され、新たな知識を与えられた上で恣意的に育てられた人格が、艦船の頭脳となった筈であった。
が、ワープの暴走の結果、なぜか皆人の個人記憶が蘇ってしまったのである。
理論上あり得ないことであるのだが、暴走は「時間」にまで及んでいたのかも知れない。
こうして、天羽生皆人の意識が『兵庫』の人格として目覚めることとなった。
本物の天羽生皆人は、とっくの昔に地球で生を終えている。
ここで目覚めたのは、あくまで擬似人格としての天羽生皆人だ。
それでも本人としては、擬似とかなんとか関係ない話である。天羽生皆人は、天羽生皆人なのである。
「さて、と。状況が掴めたところで、まずやるべきは目の前の惑星の調査だな」
さすがは、ぼっちキングである。この程度の出来事にいつまでも動揺していられないのである。
『兵庫』は無数とも言える数のドローンを放出した。半分は、目の前の惑星に。残りは周囲の宙域に。
そして待つこと、しばし。
「ほう、これは興味深い」
惑星には、人間に酷似した生命体が文明を築いていた。
まだ内燃機関は発明されてない様だが、それなりに発達した文明。地球で言えば大航海時代ぐらいか。
しかし実際の大航海時代の様な遠方との交流は、盛んではないらしい。
その原因は―――。
「モンスターがいるじゃん」
海中や高山、樹海の奥に、体長が数百メートル単位の生物が生息していた。
「ファンタジー世界かよ。て、ことはまさか」
人間の生息域のドローンからの情報を注視する。
すると、やはり。
「魔法だ。魔法がある」
小型のモンスターを相手に、魔法と呼ぶしかない手段で攻撃を行う者たちが観測されたのだ。
「これは、じっとしてられん」
皆人は、降下艇の準備を開始した。
同時に、人間に酷似した生命体―――ヒトと呼ぶことにする―――に関する情報を集中的に収集する。艦の修理は、完全に二の次だ。
「さて、魔法があるとなれば話は別だ。ぼっちの基本は『安全圏からの観察』だが、この好奇心だけは抑えられない」
皆人は、メインフレームの演算リソースの30%を割いて、一つのプロジェクトを開始した。
プロジェクト名、『高機能探索用・人間型端末』。
いくら高度な光学迷彩を備えたドローンであっても、物理的な接触や魔力的(と推測される)な干渉まで完全に防げる保証はない。それに何より、あの中世ヨーロッパ風の街並みを、この足で歩いてみたいという衝動があった。
「せっかくの第二の人生……いや、第二の艦生だ。最新鋭の技術をぶち込んで、最強の『俺』を作ってやる」
まず着手したのは、素体の構築だ。
生物学的な「ヒト」に擬態するため、兵庫のバイオラボで培養した人工筋肉と、ナノマシンを定着させた超高強度セラミック骨格を組み合わせる。
外見はあまり目立ちすぎず、かつ不自然でない程度の「整った顔立ち」に設定。地球人風ではあるが、現地の人間に混じっても違和感のない、少し色素の薄い銀髪と碧眼を選択した。
動力源は、腹部に超小型の相転移炉を内蔵。これにより、食事や睡眠なしで数十年間の連続稼働が可能だ。
感覚同期は『兵庫』本体と量子通信で接続し、視覚・聴覚・触覚、さらには味覚までを完璧に皆人の意識にフィードバックさせる。遅延はゼロ。
しかし、最大の問題は「魔法」だった。
「ドローンの観測によれば、あっちの世界の住人は体内に未知のエネルギー……『魔力』を保有している。これを持っていないと、向こうでは『欠陥品』か『異物』として扱われる可能性があるな」
そこで皆人は、最新鋭のナノマシンを応用した「魔力シミュレーター」を開発した。
大気中に漂う未知の粒子を吸収・貯蔵し、アバターの体表から特定の周波数で放出する装置だ。これにより、周囲からは「それなりに腕の立つ魔導師」に見えるはずである。
「よし、仕上げだ。服は……現地の標準的な旅装をナノファイバーで再現。防御力はライフル弾に耐えるレベルだが、見た目はただの麻と革だ」
準備が整い、アバターは降下艇に格納された。
狙う着陸地点は、大陸の辺境にある中規模な街『リーズ』の外れにある森。ドローンの分析によれば、ここは冒険者や旅人が多く、素性の知れない人間が紛れ込むには最適の場所だった。
準備が整うや、降下艇は射出され、瞬く間に大気圏に突入。
アバターの視界を通じて、皆人は燃える大気と、徐々に近づいてくる緑の地表を見た。
降下艇はステルスフィールドを展開したまま音もなく着地し、中から銀髪の青年――アバターとしての皆人が降り立った。
土の匂い、風の冷たさ、木々のざわめき。
データとしての情報ではない、ダイレクトな「感覚」が意識を揺さぶる。
「……ふぅ。体が軽い」
皆人は軽く跳躍してみた。すると、簡単に1メートルの高さを超えてしまう。驚くべき身体能力だ。
彼はまず、あらかじめ用意していた「自律型AI搭載の杖」を手に取った。中身は『兵庫』のサブシステムに直結した演算補助ユニットだが、見た目はただの古びた樫の木の杖だ。
腰には、古びて見えるが高周波ブレードを内蔵した小剣を吊っている。
森を抜けると、街道だ。
しばらく歩くと、石造りの城壁と、活気ある門前が見えてきた。
「止まれ。見ない顔だな。通行証か、ギルドの登録証はあるか?」
門番が槍を構えて問いかけてくる。
皆人は落ち着いて、事前にシミュレートした通りの所作で答えた。
「いえ、遠方から来た旅の修行者です。登録証は持っていませんが……これで代わりになりますか?」
そう言って、皆人は指先から小さな「光の球」を生み出した。
これは魔法ではない。ナノマシンで大気中のガスを励起させた、ただの発光現象だ。
しかし、門番の目は大きく見開かれた。
「無詠唱で『ライト』か。……それも、これほど純度の高い魔力は見たことがない。あんた、ただの修行者じゃないな?」
「……え、あ、いや、山の中で一人で練習していただけなので」
「標準的な魔導師」を装うつもりだったが、科学的に制御された「光」は、この世界の住人からすれば異常なほど「純粋すぎる魔法」に見えたのだ。
ぼっちキング、いきなり計算違い。
「……通っていいぞ。だが、街の中で派手な魔法は使うなよ。最近は魔物の活性化でギルドもピリピリしてるんだ」
「肝に銘じます」
皆人は冷や汗を流しながら、城門をくぐる。
街の中は、想像以上に賑やかだった。
露店から漂う肉の焼ける匂い。行き交う馬車の車輪の音。そして、時折聞こえてくる「魔法」を詠唱する声。
「ここが……異世界。魔法のある社会か」
アバターの眼球は、瞬時に周囲の通行人の装備、健康状態、所持金、そして「魔力残量」をスキャンしていく。
収集された膨大なデータは衛星軌道上の『兵庫』へと送られ、即座に言語体系や経済状況の解析がアップデートされる。
「まずは拠点の確保と、この世界の『常識』の習得だな。幸い、軍用データベースにある交渉術は、ぼっちの俺でも『演技』としてなら使える」
皆人は、最初に街の中心にあるという「冒険者ギルド」を目指すことにした。
そこは、情報の集積地であり、この世界の力関係を把握するのに最適な場所だ。
「よし、まずは『Cランク』くらいを目指して、目立たず、しかし確実に食い扶持を稼ぐ。ぼっちの基本は、目立たぬように、されど侮られぬように……だ」
そう自分に言い聞かせながら歩く皆人だったが、彼の背負う「杖」や、身に纏う「旅装」、そして何より彼自身の「存在(宇宙戦艦)」が、この世界の均衡をどれほど根底から覆すものか、彼はまだ過小評価していた。
10年ぐらい前にださせてもらった『冒険者デビューには遅すぎる?』が、コミカライズされています。そして、小説自体も電子化されました。
ピッコマ様やKindle様にて、ご覧になれます。
また、マンガの方は紙媒体でも出版されております。
気が向かれた方は、ぜひ(*´ω`*)




