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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二打不要の婚約破棄~馬鹿王子、生意気義妹とついでにヒーローとスパダリもぶっ飛ばせ虐げられ令嬢

作者: 山田 勝

「アリシア!前へ出てこい!」


貴族学園の講堂でこの国の第一王子が婚約者を呼ぶ。

しかし、愛しい婚約者を呼ぶにしては声が険しく。

傍らには銀髪の女がエスコートの近さでいる。


白いドレスは宝飾に彩られ手には一目で高級だと分かる魔法杖を持っている。


アリシア、第一王子ビリール殿下の婚約者である。

隣にいる女はアリシアの腹違いの妹にして公式では義妹である。


アリシアは貴族学園の生徒にしてはボロボロのドレスにローブを羽織っている。

その赤茶髪は乱れている。



「はい、殿下」


と顎に右手を当てながら、生徒達の中をかき分け。

二人に相対する。



「アリシア、奇行が過ぎる。とても、未来の王妃に相応しくない。しかも、グレンリーを嫌い嫌がらせまでしていると聞く。

 グレンリーは魔道科の最優秀生徒だ。その気になればいつでもアリシアを倒せるのに我慢しているのだ」


「殿下、お義姉様はお母様が亡くなって気を失っております・・・どうか、御慈悲を」


「うむ。我は婚約を破棄し、アリシを国の外追放を考えているが、もし、ここでグレンリーに謝罪をするのなら、グレンリーのメイドとしてこの国にいることを許してやる」


「お、お義姉様、私も悪かったわ。謝罪をするから、お義姉様も・・」


「「「「ホオ」」」

「さすが、グレンリー様だ」

「お優しいわ」


皆の耳目が集まる中、アリシアの口は三日月に曲がった。

そして、つぶやく。


「王妃?お前、まだ、王太子じゃないだろう。是非もなし・・・ぬっころす」


ボア~


アリシアはまるで右手を挙手のように挙げた。

それをゆっくりグレンリーに下ろす。

まるで、子供が喧嘩で打つような稚拙さを感じた。


グレンリーは杖を構えて詠唱を始めた。


「プゥ~クスクス、まあ、お義姉様・・・私にはかなわないのに、じゃあ、風の精霊よ。悪しき・・・【遅い!遅い!】ギャアアアアアーーーーー」



ゆっくり動く右手は何故かグレンリーの右肩にめり込み。肩はU字型にめり込んだ。


「ヒィ、風の精霊・・・ウガアアアアーーーー」


バタン!


グレンリーは倒れ起きてこなかった。

次は王子だ。


「はあ?我は剣を使うぞ!さすがに素手で剣はかなうまい!【構え、悪し】ギャアアアアーーーーー」


次の瞬間、右の掌が王子の肩にめり込んだ。

そして、


ポロ!


王子の右手が落ちた。


アリシアは残念そうだ。

右手の掌を見つめ。


「・・・・また、一打で終わったわ・・・二打が撃てない」


とつぶやく。


第二王子が仲裁に入った。これで王太子は第二王子で決まりだと皆は思った。



「待て、これは何かある。魔道無しで、魔道科の天才、グレンリーと、兄上だって剣は優秀だった。

 これは、未来・・・【背後から近づくな!】グギャアアアアアーーーーーー!」


第二王子の肩にアリシアの掌がめり込んだ。



「な、何て女だ。見境がないのか?我は大公!この場は・・・」


大公は百戦錬磨の騎士でもある。


しかし、アリシアが右手を挙げたら、危険を察知し、本能で恐れて一歩下がった。


つまり、スパダリ一歩下がって動けずだ。






☆☆☆アリシア回想







「コン、何年も何年もやるねん」


「はい・・」


キツネ先生に言われてペチ、ペチと

砂鉄の入った袋を掌で叩く。

私が修行を始めたのは10歳の頃、お母様が亡くなった年だ。



私はアリシア・ダーブィ。

魔道の名門ダーブィ家の総領娘・・・

しかし、魔力が全くない。


この世界では6歳にギフトが授かる。

しかし、私には何も無かった。


『無能ですな。良い所生活魔法です』

『な、何だと、平民と同じではないか?』

『旦那様、魔道具の道もありますわ』


お母様に庇ってもらって10歳まで令嬢として育てられた。

必死に勉強をした。


しかし、お母様が流行病で亡くなり。

その後、後妻がやってきた。

連れ子付だ。


どうやら、お父様の血が入っているようだ。


『まあ、これがアリシア?私のメイドになるの?』

『グレンリー、それがな。アルテシアがビリール王子とアリシアの婚約を結ばせたからさすがに無理だ』


アルテシアは私のお母様の名だ。

父と腹違いの妹、義母は、私がいるのに無遠慮に話す。


しかし、婚約者と顔合わせをしていない。

お母様が今際の際に王城に訴え婚約が成立したと云うけども・・・



『やあ、君がアリシアか?』

『殿下、アリシアは母の死でおかしくなったので、妹のグレンリーとお過ごし下さい』




・・・・・・・


「お母様、グスン、グスン」


毎日、泣いていたら、二本足で立つキツネに話しかけられた。



「コン!何、泣いてんねん。お前は泣村鳴子さんかい?」


「ナキムラナキコ?」


「コン、ワイの元いた世界の泣き虫の名やねん。ワイは天子はんを抜いたら上から五番目にえらかったんやで」


「あの、理解が追いつきません」


「アルテシアから世話頼まれたねん。まあ、ええ、ワイ、一度、あんたの母ちゃんにボコられたからな。解放の条件が何か一つ言う事を聞くことや」



それから、毎日、鉄の砂袋を叩くように云われた。


2年経過した。



「そろそろやな。森に行こか」

「はい」


・・・・・



「ワン!ワン!ワン!」(遊んで、遊んで!)

「キャイン!キャイン!」(お姉さん。僕とお手しない?)


「ヒィ」


狼みたいな・・・犬かしら。

白、青の毛並みの精悍な犬が7体もいた。



「これはな。ハスキー言うねん。ワイのお社でハスキーの社交界が開かれたやねん!人がいないからってドックランにしたねん!

 そしたら異世界転移がおきたねん。ハスキー、異界渡りで力が付いているねん!スーパードックや!」


「あの、よく分かりません」


「修行や。アルテシアはんから、魔法が無くても強くせい言われたやねん!」


「「「キャン!」」」



ハスキーというワンちゃんたちは高速で走り回る。

目が回るわ。



「まず。ハスキーの動きを追うのや。目やないで心で読むんや」

「はい・・」


それから、私は修行に励んだ。


ハスキーたちはジャンプし私に飛びかかって来る。

速い。


「キャアアーーーー」

「ワン!ワン!」


ハスキーたちは狩りをして、ご飯を食べて、ワンワン吠えて、遊んでのその繰り返しだ。



「ええか。ハスキーに体当たりをするねん。やり方は、大きく踏み込むねん。体の横回転を使うねん。そして、肩から背中に当たるねん!」


「はい」


ハスキーたちと戯れる。ハスキーたちも肩で当たる。とても強い。何回も怪我をした。

その都度、キツネ先生のキツネパワーで治してもらったわ。


「もう、ええころや。ハスキーと狩りにいくんやで」

「え、はい」



初めての獲物は魔グリスリーだった。


「キャアーーーーーー」


大怪我をした。


「しかたないな。霊験あらかたなワイが治癒魔法をかけるねん!」



戦い方も教わった。


「ええか、いきなり体当たりをブチあててもよけられるやろ?だから、掌底でけん制するんやで、殺す気でけん制をするんや。その後、体当たりや。肘をあててもええねん!」


「はい」


これを一日一万回、二年ほどやったある日。


ズドーン!


大木が倒れた。


「ええで、この技は、猛令嬢破山もうれいじょうはざんや!免許皆伝や」


「「「「ワン!ワン!ワン!」」」」(いっといで)


「はい、私、これで貴族学園にいけますわ」



免許皆伝は14歳だった。

一年間、冒険者登録をし、魔物や盗賊を狩る。


しかし、皆、けん制の掌底で倒れる。


「つまらぬ。貴族なら少しはやるかしら」




・・・・・・・・・・・・・・・




「はあ、はあ、貴様は何者だ?」


「大公殿下、私は令嬢ですわ」



その時、父と義母がやってきたわ。

こいつら、当主よ。少しはやるかしら。

もう、戦う事しか興味が無くなった。


「アリシア!何をしているか?」

「・・・まあ、野蛮ね。旦那様!捕まえて下さいませ」

「分かった。氷の精霊よ。我に力を貸したまえ・・・」



ピキ!


私は氷に覆われたわ。


しかし。


私は重心を落とし。床を踏み込んだ。


ダン!


すると、氷は砕け散った。


「随分とぬるい氷ですこと・・・とても弱いですわね」

「な、何だと!」



「フン!」


と二人に掌底をお見舞いしたわ。


「「ガアアアーーーーーー」」

「私は貴女の義母よ!女よ。非戦闘員よ!やめて」


「当たり前の事を、義母様が男だったらどうしますか?」


「ギャアアアアーーーー!」


つまらぬ。つまらぬ。つまらぬ。



二人をぬっころしたら、ハスキーたちの声が聞こえた。


「「「「ワオオオオオーーーーーーーン」」」(僕たちはここにいるよ!)


キツネ先生もいた。


「お嬢、迎えにきたねん。犬車に乗るねん」

「まあ、ハスキーさんたちお願いしますわ」


「「「「ワオオオオオーーーーーーン」」」」



「あの、大公殿下、邪魔ですわ」


「す、すまない」



アリシアはハスキーとキツネと共に夕日に向かって去った。


この話は事実である。証拠は。

貴族学園の講堂にアリシアの踏み込んだ際の足跡が確かに残っている。


今も二打目を放てる相手を探していると伝えられている。



最後までお読み頂き有難うございました。

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