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RVALON Ⅰ   作者: 竜;
When I Come Around
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When I Come Around-00

[RVALON Ⅱ]頒布に伴い7/29まで[RVALON Ⅰ]を一日二話ずつ投稿していきます。

加筆、修正等は随時おこなっていきますのでお気づきの点などございましたらご指摘いただければ幸いです。

プロローグ


 「奇妙」と感じる線引きはどこからだと思う?

 基準は自分が経験してきた中での世間一般という曖昧な物差しでしか判断できないと思うけど、あぁいや、自分が常識人かといえばそれは可もなく不可もなくと言ったところなのだが……。

 でもその男は「奇妙」と言って良い存在だったと思う。


 高いビルの谷間、路地裏。

 映画でよく見る荒れた感じでお誂え向きに鉄製のゴミ箱にオプションで野良猫はいかが?

 いや、さっきの俺はこんなに辺りを見てるほど余裕なんか無かった。

 演出や小道具は多少盛ってるかもだけいつも通っている道だ。

 嘘はついていないはずだけど思い返しても俺自身夢を見てたのかって思う。


 実際夢だったのかな?数日前も目を奪われるほどの美人に会ったきがするんだけど結局夢だったようだし。


 小一時間程前に会社を出ていつも通るビルの間の路地裏を歩いてるとその男はさも当たり前のように自転車で俺の前を通り過ぎた。

 夜だからダメってわけじゃないけどそいつは黒いハット、そう銀色の羽のようなものや他にも飾があったかな。

 そいつを被り硬そうな背広、なんか艶っぽかったからエナメル……革のジャケットかな?下はスーツのそれじゃなかったと思うし歳はわからないけど若者が身に付けるジャラジャラとした重そうなウォレットチェーンみたいなのをつけていた。

 異様なのはどこの国の物かはわからないがガスマスクをしていること。それに加えての違和感、男は肩に子供にしてはサイズがおかしい、そう人形を乗せていたんだ。


 だから言っただろ?こんなこと誰にも信じてもらえないし「あなた疲れてるのよ」って言われて相手にされないだろ。

 でもな、どうしてもそのことが頭から離れない。

 あれ?そもそもガスマスクしてるのに何で男ってわかるんだ?

 いや、でもあの体型からして……しかし女性の水泳選手の中には男勝りの肩幅の人も……そもそも自転車で通った男なんていたか?

 それに人形を肩に乗せてるだなんて……あぁ悪ぃ、たぶんなんかの勘違いかテレビかなんかで見たのが混ざっちゃったんだ。

 ほんと疲れてんだ。今日は帰って早めに寝るかな。


「そう、気にするほどのことじゃないんだ」




(ぬし)ぃ、いま人と目が合ったじょ」


 滑走する自転車には二つの影。

 一人は成人男性、銀の飾りが付いた黒いレザーのハットを被り夜とは言え夏の季節には似つかわしくない臙脂色の革ジャケットに暗めのデニムと茶色いブーツ。

 他にもいくつかの装飾品が見られるがこの時点ではまだ不思議とは言い難い。

 しかしその男は何処の国の物わからないガスマスクを被り付け加えれば肩に60cmくらいの人型の存在を乗せていることが一気に珍妙さを引上げている。

 更にこの肩の存在はサイズは1/3程度の人形くらいではあるが言動から仕草に至るまで人間をそのまま小さくしたよう、正に生きていると言って良い。


『結界外で姫単体でしたら有りえなくもないのですが、気になるようでしたら局に連絡を入れておきましょうか?』


「面倒ごとはゴメンなんだな。さっさと帰るんだじょ」


 姫とは肩の上にいる存在。呼ばれた方は気には止めたが発言通り余計なことには関わりたくないので主と呼んだ存在へと返事した。


『話は変わりますが局を出る前に業務日程を確認しましたところ緊急招集でもなければ有給消化するよう促されましたので久しぶりにゆっくり休めそうですよ』


「妾、今回もいっぱい頑張ったんだな」


『ご苦労様でした。向こうでの滞在期間が長引きましたがその分遠方まで足を運べたのでこれであの地域は7割ほどまで調査が進んだと思います』


「主は働けばお給料もらえるけど妾は何もないんだじょ!ご褒美欲しいの!」


『名目上姫は付き添いと言うよりは勝手について来ただけという扱いになっていますから。私自身に寄る影響とはいえ上の方も姫の存在がが当たり前になりすぎて麻痺というかもはや常識くうきとすらなっているのも少し考えるところや思うところがあるのですが』


「いつも妾荷物扱いなのな」


『人事や経理の方には出張先での重要な触媒、媒体と説明しましたけど今一伝わらなかったのでパートナーという感じで何度か報告書は出してあるのですが諸経費等については協議中とのことです』


「主の書類の書き方がダメなんじゃないの?今度妾が直訴するんだな」


『局には姫の存在を調査する部署もあり私がデスクワークをしている時はそちらに行っていますが普段は何をされているのですか?』


「みんな妾のファンなんだじょ。お菓子貰ったりゲームとか動画見て好きに過ごして良いって言われてるの」


『どこか献血に行った時の待遇に似ていますね』


「飽きたら局内なら制限のある所以外は好きに出歩いて良いって言われてるから主が来る前に食堂いたりするとみんなおかずとかくれるの。一人一品でも机の上が賑やかになっちゃうんだな」


『ご自身の食べられる分だけで断らないと最終的に私が食べることなるのでご注意願います』


 のんびりとした会話とは裏腹に前方にカゴのついた少々古めだが一般的な買い物自転車は競技に使われるようなロードサイクルと同等以上の速度で走行し制限速度を守っている原動付き自転車を優々と抜き去っていく。

 ただ抜かされても誰一人としてその存在に気付いている様子はない。


『話は戻りますが急な呼び出しが無ければ2、3日は確実にお休みがもらえそうなのでどこか行きたいなどのご要望があれば皆さんと相談しようと思いますが何かご希望はございますか?』


「ん~いきなり聞かれるとパッと出てこないんだな……あ、そうだ、ロメオのとこ行くんだじょ!とろけるシチューなの!」


『帰る前におしゃっていた意見ですね』


「今回妾頑張ったから一番大きいお肉が入ったの食べるんだな!」


『皆さんのご都合に合わせてお店の予約の方手配いたしましょう』


「子狐達に言えば予約なんてどうとでもねじ込めるんだじょ。なんなら花屋に言えば確実なんだな」


『いくら姫が花輪さんのご贔屓とはいえ無理ばかり言ってはダメですよ』


「今から行く?」


『それはさすがに……こちらに戻って来た時に姫が献立を提案したので玉藻さんが張り切って支度していることですし』


「ん~玉藻のご馳走は魅力なんだな。主ぃさっさと帰るの!」


『かしこまりました。姫、速度を上げるのでしっかりとお掴まりください』


 特に力を入れる仕草は見られないが主の言葉を合図にしたかのように自転車は更に加速し車の隙間を鮮やかに抜けながら消えて行った。


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