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作者: 閖衣

ひらり。ひらり。

桜の花びらが舞い落ちました。



『ねぇ』



ひらり。ひらり。

それは私の心のように、とても不安定でした。



二人で花見に行った事もあった。

雨の中、一つの傘に入った事もあった。

二人で海に行った事もあった。

紅葉がきれいな道を歩いた事もあった。

雪が降り積もった道を歩いた事もあった。



ひらり。ひらり。

花びらが一つ落ちるたび、想い出を一つ思い出します。



会ったら、いつも頭をガシガシと頭をなでられ、髪がくしゃくしゃになった。

寒いと思ったら、私に自分のマフラーを巻きつけ、手を繋いでくれた。


悲しい時、苦しい時、辛い時

 貴方はいつも私の隣にいてくれた。

嬉しい時、楽しい時、幸せな時

 貴方はいつも私の隣にいてくれた。



ひらり。ひらり。

そんな想い出も花びらのように無くなってしまいました。



いつからだろう。貴方が手を繋いでくれなくなったのは……。

いつからだろう。貴方が「好きだ」と言ってくれなくなったのは……。

いつからだろう。貴方の目が私を映さなくなったのは……。



ひらり。ひらり。

貴方の心も花びらのようにどこかへ行ってしまいました。



最後に二人で過ごしたのはいつだったっけ……。

最後に貴方の部屋に行ったのはいつだったっけ……。



ひらり。ひらり。

遠い昔の記憶が私の胸を温かくさせました。



『あのね』



ひらり。ひらり。

私は疲れてしまいました。



『私と別れてください』

「は?!」


呆れ顔の貴方。

何を言っているのか、理解できていないみたい。


『だから、私と別れてください』



ひらり。ひらり。

私は貴方の心と共に心まで失ってしまいました。

だって何も悲しくはないのです。



『ごめんなさい』

「何でだよ……」

『好きな人ができたの』

 


ひらり。ひらり。

ごめんなさい。初めて貴方に嘘をつきました。



「そうかよ……。そう言うんなら仕方ねぇな……」


貴方はまだ自分の気持ちに気づいていないようです。





『ばいばい』


そう言って私は踵を返した。



少し歩いて立ち止まると、振り返り私は口を開いた。


『早く自分の気持ちに気づいて下さい』


それだけ言うと、また歩き出した。



ひらり。ひらり。

桜の花びらが私の手の中に落ちてきました。



その瞬間、涙が頬を伝うのが分かった。



ひらり。ひらり。

どうやら心は失っていなかったようです。






「貴方が、好きです」


泣きながら言ったその言葉は

空へと消えてしまった。




ひらり。ひらり。

桜の花が全て散ってしまいました。


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