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漂流

漆黒を閉じ込めた大理石の大広間にこれまた黒い長方形の大理石で出来た机があった、その左右には複数の席があるがそこには誰の姿もない

唯一それらを見下ろす位置にある椅子、いや椅子というには豪華すぎるそれは玉座だろうか、その玉座に長い黒髪の少女が小さな背に似合わない王笏を持って座っていた


私の大切にしている世界の終わり、勝手知ったる仲間達との楽しい日々、それももうすぐ終わる

それがどれだけ不快だろうとも、どれだけ未練があろうとも時間は止まらないし戻らない

何よりそれを自分の力ではどうすることも出来ない、それがもどかしかった、それに・・・

「結局誰も帰って来なかったなぁ」

分かりきっていたことだった、それでも、この最後の時にもしかすると会えるかもしれない、そんな淡い希望を抱いていたのも事実だ、しかし現実は残酷だった

わかっていたもう誰も帰って来ないこと、知っていたもう誰もこの場所には興味はないのだろうと、それでも・・・

銀色の玉座に紅い瞳の少女が腰掛けていた、体は小さく座ると足が床から浮いてしまう

(仕方がないね、これは私のための玉座じゃないし、本来の玉座の主はもうここには帰って来ないだろうし)

もうすぐ終わりの時を迎える、左腕に目を向ければ数字は刻一刻と時間を刻んでいる

みんなで初めて顔を合わした日のこと、いろんな場所を冒険した、時には意見を違えてケンカもした、でも最後は笑い合ったそんなくだらない、今となっては遠い、懐かしくも輝かしいそんな思い出達だ

「最後にみんなに会いたかったなぁ」

目を閉じる、静寂の空間に時を刻む音だけが響き渡る

不可逆のまま時は進み全ては終わりを迎える、そのはずだった

「これは・・・どういうこと?」

左腕を見やる、おかしいもうとっくに予定の時間は過ぎているはずなのに

時間が狂っているはずがない、ならばこの状況はどうしたことか?

考えが纏まらぬままなんとか状況を確認しようとあらゆる手段を試す

呼鈴コール通信テレフォン手紙メッセージ念話テレパシー、あらゆる手段を試すがどれも効果がない、慌てて玉座を飛び降りて外へ向かう

(なにが起きているのかさっぱり分からない、外に出れば何か分かるかもしれない)

外へ飛び出すと見慣れた辺り一面に咲き誇る黒い花畑がある、だが見慣れた風景はそれだけだ

目に映る全てが変わっていた、まずこの拠点の周りは岩と砂だらけの砂漠だったはず、確かにオアシスぐらいの風景はあったがそれだけだ、こんなに草木は生い茂っていなかった

そして目の前にいる見知らぬ者達、恐らく種族は微妙な者もいるが人間ではない・・・多分

一通り相手の自己紹介が終わり状況が分からないまま目の前の純白のボディースーツに身を包んだ、おそらく少女だろう、は問いかけて来た

「さて、一通り自己紹介も終わったことですし貴女のお名前もぜひ」

「私の名前は・・・」

なんと答えるべきだろう、勿論名前はある、ただここで迷っているのは一体"どちら"の名前で名乗るのが良いかだ

「迷っています?ならば【氷結候】なんて如何ですか」

世界の終わりに、意図せず漂着したこの世界で、運命とも偶然ともつかない物語が始まろうとしていた

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