8話 柊玲乃と自己紹介
前書きって実際あまり書くことがあるようなないような。
ー2年前の入学式ー Side 柊玲乃
中学で友達が出来なかった私は、高校になっても新しい友達を作る気はなかった。地方の、みんなと仲良くという雰囲気が嫌で遠く離れた東京に引っ越してきたからだ。決して友達が出来ないと諦めていた訳では無い。
クラス分けがされ、一人一人起立して自己紹介を始める。
真面目そうな人から明るそうな人まで、しっかりと1分ほどの自己紹介だ。
とりわけ他人に興味がある訳でない私は話半分に聞いていたのだが。
順番は私の隣の席の人になる。
起立した背丈はスラッと長く、声をはっきりと紹介した。
「どうも、西園寺肇です。趣味は本です。以上です。」
え、終わり?
あまりに短い。いや、自己紹介としては十分だったのかもしれない。当然周りの印象としては良くは無いが、その人がどんな人なのかはその紹介で分かっただろう。少し教室が沈黙の雰囲気となっている。周囲の子達も苦笑いしていた。
先生もじゃ、じゃあ次の人ーと戸惑いながら流れに沿って私も自己紹介を終えた。
その人のお陰もあり、隣であった私の自己紹介は存在感の薄いものとなったので、私は少しの感謝をしている。
そもそも注目を浴びたりする自己紹介は苦手なので、そう思うのは仕方がない。
全員の自己紹介が終わり、各自、自由に雑談となった。
いくつか陽キャのグループ集団や、小さな陰キャの集団などが形成されている。
クラスでも出来れば悪目立ちはしたくない。
隣の席の人に話しかけるのが吉かな、そう思って隣を見ると、隣の人はどうやらスマホをずっといじっている。話しかけても良いのか。しどろもどろ話しかけようか迷っていると、スマホから目を離した隣の席の人がこちらを向いていた。
「どうかしたか?」
「あ、いや、なんでもないです。」
急に話しかけられ、思わず誤魔化してしまう。
彼の真っ直ぐ見つめる瞳は自己紹介の時の印象よりもずっと良く感じた。もしかしたら人前で話すのが苦手なだけで実は普通の人なのかもしれない。
「1年間よろしく。」
自己紹介の時の雰囲気よりも柔らかいイメージの男の子の目線は再びスマホの画面に戻る。
「よ、よろしく。」
多少なりの挨拶は交わせたが、周りが自由に話している分ここの2人が浮いているのは確実だろう。
しょうがないので私は自由時間の間、空をぼーっと眺めることにする。
そうして絶妙な空気の中、私、柊玲乃の高校生活はスタートした。
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入学して少しして、私はぼっちになった。正確に言えば、友達らしいーーたまに小話をする程度の友達はいるのだが、世間一般から言えば友達か怪しいところだろう。もちろん自分から望んだことだったから、特別な感情は抱かないし、むしろ邪魔なしに本や思索に耽けることが出来て心地がいい。
そして入学してから気づいたこと。性格上この学校は私にとても合っているかもしれないということである。一人でいてもバカにしてくるような阿呆はいないし、そもそも一人が好きな人も多く、マジョリティになることもなかった。
隣の人と言えば、相も変わらず休み時間はスマホを触って何か作業をしているし、昼休みはどこかに行っているようでいない。それもあって私は一人でいても別段恥ずかしいと思うこともなかった。中学の時に比べて、心地がいいとそう表現するのが適切だろう。
私といえば休み時間になれば本を読んでいるばかりで、周りからはもしかしたら気味悪がられていたかもしれない。
思いのほか順調に進んだ高校のスタート(他の人から見れば順調とは言えないだろうが、)をきり、高校生活を満喫していた。
そんな日々が惰性的に続いていた6月、馳部附属高校は学祭の期間に入った。
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