7話 打ち合わせと想い
毎日投稿頑張ります。
なんだこの状況は。
家に神崎さんと相原さんがいる。
神崎さんと俺が話し合っているのを傍で聞いている感じにはなるのだが…。
「まさか相原さんが先生とお知り合いとは、奇遇なことがあるもんですねぇ。」
神崎さんは他人事にお茶を飲む。
「相原さんの言ってた働き口って出版社だったんだな。しかもそれが神崎さんに任せられるとは、すごい偶然だ。」
俺が高校生ってのが関係してるかもしれんなーなどと呟くと、なるほどと相原さんは頷き返す。
「叔母が出版社の社長だったので。家出のことを叔母に相談したらここで働けばいいと言ってくれたものですから…。その期待に応えられるように私も頑張るつもりです。」
叔母さんが上のお偉いさん?!相原さんに不味いことは言えなさそうだ。
「それにしても驚きましたよ!高校生で小説家をしてる人がこんな身近にいるなんて。先輩って凄い人だったんですね。普段の生活の時萎縮しちゃいそうです。」
そう思うのも分からないでもないが、こちらの身にもなって欲しい。
「思ってるより普通の高校生だと思うぞ。ゲームや趣味の時間が執筆活動に変わっただけで。まあそもそも執筆活動自体俺にとっちゃ趣味みたいなもんだからな。」
それよりも身近に編集者がずっといるって思う方が俺は萎縮しちまうよ、と言うとクスッと笑いが起きる。
「今はただの編集者見習いなので、不届きなことがあったらなんでも言ってくださいね。それに多分、叔母が私を先輩の担当にしたの、同じ高校だからって意図もある気がするんですよね。叔母も何か言いたげな感じでしたし。」
「相原さんに学校でも先生と打ち合わせでもしてもらおうかしらね。」
ニヤニヤしながら神崎さんはそう言う。
完全に悪戯の笑みだ。
「ホントやめてくださいよ神崎さん。俺注目されるようなことされたくないですって。」
「注目されなければいいのですかー?」
悪ノリに便乗して相原も言い出す。神崎さんと相原さん…。これは相当厄介なコンビになりそうだ。
コソコソと相原さんが神崎さんに耳打ちする。
「先生も気が休まらないですから、程々に相原さんに頼みます。」
ふふふと笑う神崎さんに、俺の表情は完全に引きつっていた。
そんな脱線もありながら、俺らはいつもの打ち合わせを進めた。
「ざっとこんな流れね。いつもお茶をしながら適当に話し合ってるわ。何か意見はある?」
それでいいのか神崎さん。新しい漫画のタイトルになりそうだが、それはいいか。
ただやはり所々に指摘される文章構成の話や、伏線の貼り方についてアドバイスされたが、納得の仕事ぶりだ。
「ここの部分とここの部分の繋がりって、逆にしてみるとより伏線の具合が分かりにくくなっていいんじゃないですか?」
相原さんは神崎さんに倣って段落どうしの繋がりを指摘してきた。
「なるほど…。確かに伏線貼り的にはそっちの方が違和感は無くなるな。少し文章を書き換えて挿入してみるわ。」
指摘の通りに文章構成を変えてみる。
「うん。これが伏線だとは分からなさそう。相原さん、良い目してるね。」
神崎さんも褒めるほどの指摘の的確さだ。
作品の出来はそういう細かな伏線や、文章構成に委ねられるため、小さなことも積み重ねたら大きく作品に影響してくる。
「ほんと、経験がないのに凄い。社長が言ってたのよ。彼女には才能があるって。そういう才能って、少し嫉妬しちゃうね。」
どこか遠い目でそう言うのは神崎さんにも色々あるのだろうか。噂で聞くことがあるが、編集者には元小説家志望だった人達が多いとか。
「もしかしたら相原さんも小説を書いたら凄い才能を発揮するかもしれないね。」
まだ高校1年生だし今後何があるかは分からない。指摘一発良かっただけで判断するのは早計だろうが、そんな光を見た気がした。
そんなおだてないでくださいよ、と少し照れ気味に言うのはなぜか少し癪だが。満更でもなさそうな感じ。なんかな。
「先輩みたいに凄くはなれないですよ、私は。籠の中の鳥なので。」
相原さんの表情が翳る。意味深な発言だが、きっと何かあるのだろう。家出の原因になっている何かかもしれない。
もっと親睦が深まって、話す機会があったら聞いてみようと心に留める。新しい出会いを出来れば大切にしたい。
「まあ相原さんはまだ高校1年生だからね。まだこの先も長いし、高校生活楽しんで欲しいし。」
行事の盛んな馳部校だ、明るい性格の相原であれば、楽しい学校生活が待っているだろう。
「本日の打ち合わせは以上です。もしかしたら相原さんに先生との打ち合わせを頼むことがあるかもしれないので、そこのところはよろしくお願いします。」
打ち合わせの終了を告げる神崎さん。
同時に、それは俺の平穏な日常が閉ざされる合図でもあったのだが…それに気がつくのはまた別のお話。
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「先輩、すごい人だったんだ…」
私だけしか知らない背徳感…と思いながら今日の出来事を振り返る。
まさか働き先で先輩を担当することになるとは思わなかった。
「うぅぅ〜!。」
私を助けてくれた先輩と、その優しさに意識してしまう。枕に顔を埋めて狼狽する姿は誰にも見せたくない。傍から見たら赤面しているのがバレてしまうだろう。忘れようとすればするほど脳内に先輩の顔が焼き付いてしまう。
あまりにもちょろい自分が怖い。え、ちょろいんですけど?!心のモヤモヤが広がるがなんとか平静を取り戻そうと試みる。
きっと風呂上がりの火照った体のせいだ。そう思い込むことで心を落ち着かせた。
小中学校で恋なんてしたこと無い。小中一貫のお嬢様学校だったし、高校に入っても好きな人は現れなかった。だから恋する気持ちなんて知らないし、きっとこの想いも勘違いに似た何かだろう。
でも…と、胸がバクバクする感覚を手で確かめる。
「はぁ〜。」
心のわだかまりはまだ解けない。
きっとこの気持ちはまだ先輩にバレてはいない。というかまだ出会ってからそんな経ってないし。というか、まだ気になる程度の段階ですし?全然気になってなんかないけど、だけど、、明日も学校はある。もしかしたら図書室に行ったら会えるかな、特別教室に来ないかな、などといつの間にか先輩に会える理由を探している自分に苦悶する。
ほんとに…何してんだろ私。
相原咲良は、ただ新しいその感情にうなされるだけだったーー。
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