2話 人混みと隣の席
最初が肝心だと思い連続投稿です!
作品の貯蔵をしながら次話から投稿します。
ーー翌日ーー
昨日の出来事なんて朝になったら忘れているもので、すっかりいつも通りの朝を過ごして、いつも通りに登校していた。
朝から胸がざわついているのは虫の知らせというやつなのか。教室を入ろうと階段を上がっていくと何やら人集りが出来ていた。
そしてその人だかりの視線はしだいにこちらに向けられている気がした。虫のしらせが嫌な予感に変わったのを感じながら教室へ入ろうとする。
「先輩、おはようございます。」
ニコッと活きのいい声がする方には、昨日の少女がいた。
「相原…さん?」
「そうです、相原咲良です。」
さっきまでの群がりからは何やら「なにあの美人」であったり、「どうして西園寺に用があるんだ」なんていった疑問符が湧いていた。
実のところ、昨日の夜は暗くてしっかりと顔を確認することが出来なかった。そのため彼女の名前確認も少々疑いながらになってしまったのだが、彼女はとてつもない美人であった。美人というよりは、可愛いに近い後輩に感じる類のものであるのだが、客観的にみて顔立ちが整っているのは明らかであった。
「どうかしたか。」
驚きはしたもののいつもの調子でそう問うと、彼女はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに目を輝かせている。
「実はですね、!!私、もしかしたら1人で生きていく目処が立ったのかもしれないのです。」
相原は周りの人集りの目を気にし、耳元に近寄ってくる。
「ここで話すのもあれなので、後で昼休みになったら特2教室に来てください。」
耳元でそう囁かれる。こいつは周囲の目を気にして囁く選択をしたのだろうが、その選択は大いに間違ってる。周囲の目線があまりにも痛すぎる。こいつら殺意高すぎだろ…。
言っていて悲しいが、異性として相原にそんな気がミリもないことは経験上分かっている。灰色の高校生活を自称するだけあって、春色を夢見たことはあれど、実際に自分にそんな機会があるとは思えなかった。
相原さんは自分が周囲に与える影響をもう少し考えて行動して欲しいものだ。
「おう、分かった。」
殺意の目を向けられるのは疲れるし早々に注目の的から離れたい。逃げよう。さっさとこの場を離れよう。
じゃあな、とだけ言ってそそくさと席へ着く。席が最後列なだけあって、出入口からはやばやと座れたことに感謝する。
「朝から注目の的だねぇ」
カバンを下ろしていると、隣の席の柊玲乃がニヤニヤとからかってきた。高一からの付き合いで3年連続で同じクラスだ。席が近くになることが多く、クラスで唯一の友達と言えるだろう。
「うるせえ、注目されたくてああなったわけじゃない。」
「まあそうだろうね。そういうのは西園寺が1番嫌がるところだ。」
長い前髪の奥から覗かせる黒い瞳にはイタズラっぽい意思が宿っているように見える。
「でも、西園寺も満更でもないんじゃない?あんな可愛い子に待たれて嬉しくならない男はいないよ。」
こいつは何も分かっていない。高校生活が灰色だからって、別に春色に対して過剰に望みがあったりするわけじゃない。
このまま普通に高校生活が終わって、平穏な日々が続いてくれるだけで俺は満足だ。
「俺はそれよりも注目される方が嫌だった。普通がどうかは知らないが俺はそう言う男なんだよ。」
嬉しくないわけじゃない。だがこれは天秤の問題だ。注目される方が嬉しさより勝っただけの話。
「偏屈だねぇ。まあそういう所嫌いじゃないよ。芯があっていいんじゃない?」
知らないけど、と無責任に添える一言で全てがおざなりになってしまうが、そうやって適当に流してくれるのは柊のいい所でもある。
距離感が心地よくて、一緒にいても気負わない。かと言って恋愛感情がどうのこうのという話でもないのだが。
「なんて言うの、西園寺には芯がないっていう芯がある感じ?私も分かんないんだけどさ。心が強くないと物事からも逃げれないから。」
「なんだそれ。」
妙に核心をついてるっぽいことを言っているが、やはり柊の言うことはよく分からない。
そういった言動から少しミステリアスな雰囲気が出ている。前髪が長いことも相まって。もうね、髪を伸ばしたら魔法が使えそう。
3年間同じクラス、席も近かった柊だが、その腹の底は見えない。それこそミステリアス、というのが相応しいだろう。
そんな柊との他愛もない会話が流れて朝のSHRが終わる。
今日は朝から疲れた。
やはり俺が目指すべきは静かな日常。趣味と平穏な暮らしはQOLを高めてくれるだろう。あぁ神よ。祈わば我に平穏な日々を。え、フラグじゃないよね?
読んで頂きありがとうございます!
モチベーションになりますのでブックマークと評価のほどよろしくお願いします!




