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10話 初めてのファミレスと優しさ

日が空きました!

毎日投稿ってちょー大変なんだなと思いました。

これからも頑張ります。

ーSide 柊玲乃ー


「ハンバーグ、ステーキ、種類結構あるんだ。」


初めてのファミレスということもあって少しワクワクしていることは心に閉まっておく。

「何にしようかな。」

そういう西園寺はファミレスによく来るそうでメニューを見ながら、いつものやつにしようかなーと呟いている。

「ご飯先にするか?もう少しで終わるからご飯前に終わらせるって手もあるけど。」

そっちの方がいいか、と勝手に納得している西園寺だが、10分ほど歩いてきたため喉が渇いている。

「ドリンクバーだけ頼んで、ご飯は終わってからのご褒美ってことにしよう。」

お、いいねそれ、と反応が返ってきたので店員さんを呼びドリンクバーを2つだけたのむ。


「俺荷物見てるから先に飲み物行ってきなよ。」


「ありがとう。ついでに西園寺のも取ってくるけど何がいい?」


「んーじゃあジンジャエールで。」


企画書を見るの手伝ってくれてるし、できるだけ恩返し出来たらとは思う。本人は全然気にしていないようで、私としてはありがたいのだが、またその優しさが心に響く。

(今まで他の人に優しくされたことあったっけ。)

他人に関わる必要もないし、関わりたいとも思わなかった中学時代とは大きな変化だ。ジュースを選びながらふとそんなことを考えているとコップのギリギリまで注いでしまう。

「あややや。表面張力すごいな。」

思わぬ量を注いでしまったため、運ぶとジュースがこぼれてしまう。行儀が悪いとは思いながらコップのギリギリを吸うようにして飲む。


これジンジャエールだ。


西園寺用に注いだジンジャエールを間違えて飲んでしまったことに気がつき思わず狼狽する。

慌てるな。今飲んだのを私のコップにすればいいんだ。

もうひとつのコップにジンジャエールを注ぐとふぅと一息つく。

そもそも女友達とも関わりが少なかった私がましてや男の子と二人でファミレスに来ることなどないと思っていた。思わず取り乱してしまった自分が少し恥ずかしい。中学での打ち上げなんかも誘われなかったし誘われたとしても断っていた私としては、新鮮かつ、初めてのその感情はまだ慣れない。

(この高校に来たのも悪くなかったのかな。)

改めて柄にもなくそんなことを思いながら席に戻ろうとする。

「はい、ジンジャエールね。」

西園寺と同じジュースを持ってきた私はテーブルの上に2つのコップを置く。


「ありがとう。さっきの作業の続きなんだけどこれ、ここの部分って禁止項目対象じゃない?」

私がそんなあたふたしてた間に西園寺は作業を進めていてくれたらしい。

「確かに、そこの幅は20cmまでが条件だからオーバーしちゃうね。訂正お願いできる?」

そう指示をすると西園寺はテキパキと訂正箇所を直し、ついでに担当の人にLINEをいれている。変更場所を担当者に伝えてくれたりと、細かな気を利かせて仕事のできる男の子なのだなぁと感心しながら、自分の残りの作業を終わらせるようにプリントに目を通していく。

しばらくすると、西園寺はひと仕事したかのようにジンジャエールを飲むと美味しそうに喉を鳴らしていた。

(ん???それ私のコップじゃ…。)

そうは思ったものの口には出せない。私がここでその事を言えば、西園寺は恐らく気を使うだろうし、私も私でそれは恥ずかしい。言わない方が私のためだ、と自分に納得させる。納得させるのだ。

(なんだよ、心臓バクバクする)

不本意ながら間接キスをしてしまったことにどきまぎするが、その心内を表情に出ないように作業に集中する。

西園寺といえばそんなことはつゆ知らず平気な顔をしながら(実際には真面目な表情だが)企画書に目を通している。

(私だけバカみたいじゃん)

西園寺の表情をみて冷静さを取り戻し再び作業を続ける。


「「お疲れーー。」」

先の事件から30分ほどして2人ともに作業を終える。

「手伝ってくれてありがとう。」


「いいよ、俺がしたくてやった事だし。」


素直な気持ちを伝えると西園寺からも返事が返ってくる。西園寺の実直な返事は私の申し訳なさを少し軽くしてくれた。

「どれにする?」

メニューを見ていると品定めを終えたらしい西園寺がこちらを見ている。


「じゃあこのサイコロステーキ頼みたい。」


タブレット端末で操作をしている西園寺をみて、最近はどれもITだなーと疲れのせいで脳死状態である。


「そういえば柊は中学県外から来てんだろ?ご飯いつもどうしてるの。」


「コンビニ弁当かウィダーみたいな軽食かな、自炊はしてない。」


西園寺はそれを聞いて若干顔を引きつらせている。


「そうなのか…県外ってどこから来たんだ?」


「神奈川。都会ってよりは郊外の辺りで田舎だけどね。」


西園寺はなるほど、と納得しながら話を続ける。


「俺も田舎から引っ越してきたから田舎出身なんだよな。愛知から来たもんで色々複雑だよな。」


「来たもんで、って何?」


方言?と、クスッと笑いながら西園寺に問う。


「これ方言なの?驚きなんだけど。恥ずかしいな。」


照れくさそうに目をそらす西園寺の耳が少し赤い。

「そういうのあるよね、私もこっちに来た時方言喋って恥ずかしかったもん。」


「神奈川って標準語じゃないんだ。」


「意外と方言ある。何とかじゃんって言ったりするのは神奈川弁らしい。」


「それは俺もたまに使うことあるな。あれ方言なのか。」


よく分からないな…と腑に落ちない様子の西園寺だが、方言の小話は思ったより面白く、そうこうしてるうちに時間が経っていた。


『ゴ注文ノ品ガ到着シマシタ。』


何やら可愛らしい猫型のロボットがステーキを運んできた。青くもないし、ひみつ道具を出したりすることもない、ただのロボットであるのだが。

可愛い…と、田舎では見ることの無いロボットを見て、思わず口からこぼれてしまう。

技術の発展恐るべし。

「こういうの好きなんだ?」

西園寺にからかわれるように言われると、恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じる。

「別に。初めて見たから驚いただけ。」

隠すようにしてそう返事をしてしまうが内心は羞恥心でいっぱいだ。

「うまそー。」

しかしながらそんなことは気にせず、来たステーキを見て目を輝かせている西園寺はまるで子供のようだった。

「子供みたい。 」

ふふ、とその西園寺の様子に微笑む。

「しょうがないだろ。働いた後の飯はいいよなぁ。」

働くなんて経験まだないだろ、なんてツッコミは入れずに私も来たステーキを受け取る。

「「いただきます。」」

最近は肉といったエネルギーになるものを取っていなかったためか、体にしみ渡る。

やることが終わった達成感がお肉の最高のスパイスとなっている。

「ほんとに手伝ってくれてありがとう。」


「いいって、俺他に仕事ないし。あんな大変な仕事1人でやるのはキツいよ。」


互いの慰労を称えながらご飯を食べ進める。


「そういえば西園寺、よくスマホで何か書いてるの見かけるんだけど、書き物好きなの?」


「ッッ?!ゲホッ ゲホッ…」


2ヶ月間過ごしてきてずっとあった違和感を質問してみると、西園寺は目を丸くしてご飯を詰まらせたのか咳き込んでいる。純粋に休み時間の全てを費やしていることへの疑問だったが。


「大丈夫?なんか良くないこと言った?」


「ゲホッ ゲホッ…いや、そうだな…」


何かを隠すように目を逸らして悩んでいるように見える。

「言いたくないなら言わなくていいよ。」

別にそんなに言いたくないことであるなら強行して言う必要も無い。

「すまん、今はそうしてくれるとありがたい。」


こっちは企画書で助けられてるし、と伝えると西園寺はほっとした表情を浮かべる。

またいつか仲良くなった時に聞ければいいか、なんて思いながら残りのご飯を食べ終え会計を済ませる。

その数ヶ月後、西園寺が現役のラノベ作家き気がつくことになるのだが、それまだ先の話。

ファミレス出ると外はすっかり暗くなっていた。帰り道の方向が同じらしい私たちは歩き出した。

歩幅が大きな西園寺はずんずんと先へ進んで行ってしまう。

(ほんと、こういうところは気が利くんだか利かないんだか。)

「ちょっと待ってよ。」

小走りで西園寺に近づくと、あぁ、わりぃとそんな返事を貰いながら肩を並べて歩き出す。

初めてのファミレスと初めての優しさ。新鮮でかつ慣れないその感覚に、少し鼓動の早まらせながら、暗くなった帰り道を歩く。

きっとこのことを私は将来青春と呼ぶのだろうな、とそんな予感を募らせながら歩くのだった。

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