1話 パンプキンケーキと出会い。
こんにちは。なつゆです。
春になりそうな雰囲気の中で読む本が大好きです。
話の書き出しはきっとこうだ。
もっと早く出会っていればよかった。
あぁ、遅すぎた春風は私の体を震わせた、と。
最近は夜になると昼の半袖では肌寒さを感じる。秋の風に少し身震いをして息を吐くと、白い蒸気が夜の寒さを際立たせた。
「もう冬だな。」
街灯の明かりがひとつ。帰りの道標は夜辺の暗闇にはやけに眩しくかがやいている。
1人の寂しさを慰めるように買ったハロウィンのケーキはむしろその悲哀を帯びた象徴とさえなっている。意識的なのか、そうでないのか定かではものの、彼の様相とあまりにもマッチしたそれに、心做しかパッケージのパンプキンもいたずらっぽく笑っている。
買わなきゃよかった、と吐き捨てるように言うが、やはりまだケーキが自分を慰めてくれる気がして手放すことは出来ずにいた。
「不要なのですか?」
背後から遠慮そうに、こちらを覗き込む影があった。
声のする方へ目をやると、そこには我が校、馳部附属高校の制服を着た見知らぬ少女が立っている。制服のリボンの色から推測するに1年生らしかった。
「いや1人だと少し多いと思って。」
急に声をかけられて少したじろいだが、少女は何か言いたげな目でこちらを覗いている。
「どうかしたか?」
少女はうーん、と一通り葛藤した挙句、
「よければ少し分けてくださいませんか…」
そうお願いしてきたのだった。
別にこのケーキをあげるのはやぶさかでないし、必要な人がいるならその人に渡す方がケーキも喜ぶというものだろう。
しかし吐き捨てた言葉を拾われるとは思わず驚いたし、何よりこの状況がイマイチ分からなかった。
「すまん、状況が飲み込めないんだが。」
状況がよく分からなかったということ、急に話しかけてきた女の子に興味を持ち、説明を求めることにする。
「あぁすみません、私相原咲良と言います。実は・・・・」
ーーーーーーー
相原咲良と名乗るその少女が事情を話すに、諸事情により家には帰れない。お金がそこを尽きて腹がペコペコだ、とのことだ。
家庭事情は様々あると思い、深くは聞かなかったが、このまま野放しにしておくのも後々良心の呵責に苛まれるだろう。
財布から3000円取り出すと、彼女の前に差し出した。
「このまま野放しにするのも寝覚めが悪いからな。ケーキもやるけど、良かったらこれで飯でも買ってくれ。」
そう言って渡すと、少女はこちらを申し訳なさそうに見ている。なんでも同じ高校とはいえ知らない人から3000円を貰うというのは気が引けるらしい。それもそのはず、高校生にとってその金額は大金なのだ。困惑と罪悪感混じりの瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。
「そんな泣かないで。貸しだと思って受けとって貰えればいいから。」
「悪いです……。受け取れません。気持ちだけ受け取っておきます。」
さすがに女子高生をを野放しにすることは出来ない。安全面で考えても、泊まるところは必要だろうし、ご飯も食べなきゃ衰弱してしまう。
「俺は自分から人を助ける柄じゃないんだけどな。助けて欲しいと言われたら、助けを乞うたその勇気に応えるのが人情だと、爺ちゃんから教わった。教えを実現出来る機会なんてそうないからな。気が引けるなら俺の為にもなると思って使ってくれ。」
「……。そうですか…。ありがとうございます。大切に使います…!」
俺のできることはこれまでだなと思い、去ろうとするが、少女は逃がさないようにひしっと、袖を強く掴んだ。
「必ず恩返しします…!お名前を聞いてもいいですか?」
「あぁ、俺の名前は西園寺肇。同じ高校だと思うが、3-Aだ。」
「西園寺先輩…絶対に恩返しするので、必ず!!」
金銭的に困っている訳でもないし、恩返しされたくて助けた訳でもないので、別に無理して恩を返す必要はないのだが。
「じゃあ俺はこれで。」
今度こそと別れの挨拶をすると、相原から大きな返事がかえってきた。
「ほんとにありがとうございます!!」
ーー元気な挨拶が秋の夜風を震わせた。
灰色の高校生活も終わりを迎えようとしていたこの時期に、心がじわっと暖かくなったのは寒さのせいか、はたまたー。
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