魂喰い
これはある大学生の話だ。
いつも通り朝起き、顔を洗い、朝食を食べ、歯磨きをする。
夜中の2時までレポートをしていたので、眠そうな眼をこすりながら大学へ行く準備を始める。
そのような日常を過ごしているが、恐ろしいことに魂を喰われ続けている。
それでもその大学生には痛みを感じることはなく、ただただ普通の朝を過ごしていた。
「やべ、もうこんな時間じゃん!急がないと1限に遅れる。」
そう言って
その大学生は家を飛び出した。
家から大学までは電車で30分。
そう遠くもないので、遅刻はしないはずなのだが、大学のエスカレーターを昇っている最中に始業のチャイムが鳴った。
「あーあ。又遅刻したよ。」
「お前、いつも遅刻してるよな?いい加減早く起きろよ。」
「いや、朝はしっかりと起きてるんだよ。」
「じゃあ、何で遅れるんだよ?」
「知らねーよ。」
そんな他愛のない会話をしながらも授業が始まる。
授業では全員パソコンを開いている。
その大学生もパソコンを開き、授業を聞き始める。
教授が何か話しているが、ほとんど耳に入っていない。
ただ、問題を解く際はしっかりと解く。でも、内容は理解していない。
そして、2限目の授業まで終わるとお昼休憩だ。
「やっと今日の講義終わったー!」
「だるかったな。」
「この後、どっか行く?」
「うーん。ちょっと図書室に行って文献探すよ。」
「じゃあ、俺も行こうかな?」
「お前結局何もやらずに終わるんじゃない?」
「そ、そんな事ねーよ!」
「まっ。いいけど。」
そう言って図書室に足を運んだ。
「そういや何の課題するの?」
「あー、ゼミの課題だよ。」
「やべ!俺もやんないと。」
そう言って2人はゼミの課題を始めた。
パソコンをカタカタさせながらウィンドウをいくつも開き、調べものをする。
でも、この大学生は少しずつ少しずつ魂喰いの影響を受けている。
「やっと、終わった。」
「え、もう?早くねーか?」
「お前、大学に来るのが遅いだけでもなく、課題やるのも遅いよな。」
「いやー。調べること多くてな。ほら、こんだけ書いたぜ。」
「それ真面目にやるんだったらしっかり単位取らないと。留年すっぞ!」
「う、うるせー!」
「あっ。俺バイトだわ。」
「まじか。行ってらー!」
「おう、頑張ってくるわ。」
そう言って別れた後は魂喰いの時間だ。
でも朝と同様痛みも知らず、魂喰いにあっていることさえも気づいていない。
それでも刻一刻とその大学生の魂は喰われ続けている。
「あー。ちょっと疲れたし。休憩っすか。」
そう言った後、段々と外は暗くなっていた。
しかし、外の暗さに比例して、電気の明るさが調整されているため暗くなることに気付きにくい。
しかし、この大学生は魂喰いの影響でさらに気付かなかった。
「よーし、やるか。」
そう言って、パソコンをまたカタカタとし始める。
しかし、その30分後アナウンスがなる。
「あと5分で9時30分を迎えます。図書室にいる方は片づけをして、別のエリアに移ってください。」
このアナウンスを聞いた時
大学生は驚愕した。
そう、休憩を2時間もしていたのだ。
まさかの時間の経過に魂喰いの存在に気付く。
そう、現代人の誰もが経験したことがある。
スマホを触っていたらいつの間にか時間が経っているあの現象だ。
この現象こそ魂喰いの存在だ。
自分の寿命が1時間が30分で過ぎてしまう感覚に陥り、まるで、魂を半分喰われたのでは無いかと錯覚するため。
この生物に勝つ方法を未だ知らない人類の方が多いであろう。