無音の世界
この世界には音が無い。
そのため、テレビやゲームのテロップは素より公共施設、特に演劇や歌舞伎といったものも全て舞台袖にテロップが付いている。
私は口だけの動きだけでは分からないこともあるため、テロップを見ることが多々あるのだが、ほとんどの人が口の動きだけで何を言っているのか分かるらしい。
私も何とか習得しようと思ったが、口がほとんど開かない人や話している時に唇をほとんど動かさずに話す人もいるため幼稚園では苦労したことを今でも覚えている。
皆どんなふうに習得しているんだろうと思ってしまった。
中々習得が出来ない人は第二の手段がある。
それは手信号だ。手の動きで何を表しているのかを示すものだ。
私にとってはこれがとても分かりやすくすぐに習得出来た。
これで誰とでも会話が出来る。小学生ながらそう思ったが、上手くいかなかった。
逆に手信号が分からない人が多いみたいだ。
結局大人になった現在でも手信号は使える人が限られており、ほとんど筆記での会話ばかりとなってしまった。
私は何のために手信号を学んだのか分からない。
というよりか、音のない世界なのになんで皆手信号を学ぼうとしないのかが理解できない。
これは私の一生の謎になるであろう。