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蜃気楼  作者: ゆーやん
5/8

鉄の涙

ここは21✕✕年。

元号は令和から大成になった。

地球の技術が発展し、人間とロボットが一緒に住み始めた。

人口は減少の一途をたどってしまったため、その労働力をロボットに頼っている。


今では仕事以外にも影響を及ぼしており、

各スポーツにロボット部門も設立された。


東京帝国は今日もロボットと人であふれていた。

人口は人間が60万人。ロボットが50万人となっている。

以前は日本という国だったが、大規模な地殻変動が起こり、日本が一つの大陸へと変貌し、その際に名前が変わった。


そして、この物語の主人公は私、人見(ひとみ)(なつ)だ。

この東京帝国で生まれたロボットで、今は一人で暮らしている大学生だ。

この時代ではもうロボットは人権を手に入れていた。

そのため、結婚も出来るし、仕事も好きに選べ、人と同様の価値として扱われている。


ただ一つ違うことがある。

それは労働時間についてだ。ロボットは人間の代わりを出来る機械として開発をされ、生産されていたため、人間と異なり労働時間に規制は存在しない。また、人間と異なり時間外労働という言葉も存在せず、週40時間超えての労働はザラにあり、賃金の25%アップ等も存在しない。その代わり、燃料について働いている会社が8割負担してくれる等人間との福利厚生に一部違いがある。


そんな私には一つ楽しみがあった。

それは映画を見に行くことだ。そのため、私は新宿品川地区へやってきた。

昔は電車が地上を走っていたが、今では空中飛行を成功させているため、駅という存在が無くなったそのため電車から降りるとすぐに商業施設に入れるようになった。また改札も無くなった。その理由として、電車に入り、電車から出ると自動的に引き落とされる仕組みとなっているからだ。


人間の便利に対する欲求は凄まじいものだと感じた。

しかし、私には感情というものが無く、しみじみと思うこともない。

これは嬉しい事なのか、悲しい事なのか全く分からない。

別に不便を感じたことが無いので、不要の産物かもしれないと思っている。


そして、映画を見た。

今回見る映画は、記憶を失くした少女が首に掛けたネックレスに貼ってある写真の少年を探すという物語だった。

勿論悲しい気持ちは湧いてこない。

しかし、周りの人間はすすり泣きをしていた。

泣くという感情とは何なのだろう?


その映画を見続けるとある記憶がよみがえった。

それは前世の記憶と言っていいのだろうか?

私が人間だったころの記憶がよみがえってきた。

私が…人間…?

何で?人間の私がロボットに?


そう思った瞬間心がズキンと痛んだ。

そして、いつの間にか眼から鉄の涙が流れていた。


ああ。これが感情なのか。そして、ロボットの私にも感情があったのか…。

感情とは、人が生きる上で、なぜか大切なのだろうと思った。


家に帰って私は自分のことについて調べた。

すると一つのことが分かった。

私が無くなったのは昭和と呼ばれる時代だ。


つまり、今作っているロボットたちは何も覚えていないだけで、実は原型の知識となるものを亡くなった人間から取っていたのだ。

では、私が人間だったころの記憶つまり、仲村(なかむら)幸恵(ゆきえ)の生まれ変わりと気づいた私は人間なのか、ロボットなのか、それとも新しい何かなのか。それは全く分からなかった。


ただ言えることは私は人見夏美であり、仲村幸恵でもあるということだ。

では、平成、令和の時代に作られていたロボットたちは、人ではなくモノとして扱われてきたが、それは人の知識を入れているのだから人間と同等に扱うべきなのではないか。

そう考え始めると頭の中に強い電気が流れ、私は機能停止した。


「また、こういう奴が出てきたか。

新しい240333号を作ってくれ。」

「はい。」


そして、何も知らない私は東京帝国で誕生した。

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