ひまわりの君へ
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背景 ひまわりの 君へ
学校で、いつも皆に囲まれて、明るく笑う君が好き。
その笑顔に、自分まで元気を貰えている気がするから。
どんな相手でも、平等に優しく接してくれる、君が好き。
その優しさに何度も救われたから。
優しくて、勉強もできて、スポーツも得意で、背も高くて、いつもカッコいい君だけど。
周りに比べて自分だけ、すごく背が高いのを、「カッコいいだろ?」って言いながら、こっそり気にしてるのを見ちゃった時は、少し、可愛いなって思ってました。
好きなんだって気付いたのは、修学旅行の時。
沢山の種類の花畑があるフラワーパークで、一際背の高いひまわり畑を見ていた時に、「その首に提げたカメラで、写真撮ってよ。 ここなら身長も誤魔化せそう!」なんて、おどけて言った君。
制服の裾を翻しながら、ポーズを決めつつカメラに向けた君の笑顔は、背景のひまわりにも全然負けてなくて、レンズ越しでも顔が熱くなってしまった程、とても素敵でした。
なかなか自分から話しかける勇気は出ないけれど。
欲しいって言ってくれた、あの時の写真と一緒に、普段伝えられない気持ちを、手紙にしてみました。
これからも、仲良くしてくれたら、嬉しいです。
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「……こんな感じかな? 変じゃ、ないよね?」
書き上げた手紙を何度も読み返しながら、少しずつ手直ししていく。
「あ、最初の文、脱字多すぎて意味不明だな――『背景を、ひまわりの畑にして、撮った写真を君へ』――と」
よし、これで明日、渡そう。
翌日。
結局直接渡す勇気が出なかったため、こっそり靴箱に入れてしまおうと、いつもより一時間近く早く学校に来て、靴箱に手を伸ばし――
「あ、影山くん、おっはよ~」
――慌てて引っ込める。
「は、陽川さん……おはよう、早いね」
「うん、部活の朝練。 影山くんは――って、あれ? そこ、私の靴箱?」
怪訝そうに近付いてきた陽川さんは、僕が持っている封筒を見つけて、さらに首を傾げた。
「いや、その……修学旅行の時の写真、欲しいって言ってたから」
「あ、プリントしてくれたの? ありがとう」
「うん……はい、どうぞ! それじゃあまた!」
僕は、内心のパニックを必死に抑えながら、半ば押し付けるように封筒を渡して走り去る。
授業前――
「手紙の言葉、いつか直接聞かせてね」
――と、耳打ちして来た君の頬は、ほんのり赤くなっていた気がした。