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読めるんですか? ※ディーネ視点

明けましておめでとうございます!

 あたしはディーネ。

 偉大なる冥王サマの命により魔王軍へ潜り込んだスパイよ!


 あの御方は拗ねてるの。

 魔王軍の次の侵略先が冥界じゃなくて地上だったからよ。

 せっかく嬉々として迎え撃つ準備をしていたのに、ひどいわよね。

 そこで性格の悪い冥王サマは、魔王軍を内部から滅茶苦茶にしてやろうとあたしを送り込んだのよ。


 魔王サマに取り入るのは実に簡単だったわ。

 だって、ちょーっとおっぱい見せただけで出世街道まっしぐらなんだもの!


 いきなり最高幹部に抜擢してもらった上に諜報や技術部の統括まで任せてくれるなんて、いくらなんでもチョロ過ぎじゃないかしら。

 サキュバス千人に囲まれても無反応だったなんて噂もあるけど、魔界屈指の美貌を持つあたしにかかれば、歴代最強なんて言われてる魔王サマでも一瞬でチョロバースなのよ☆


 ちなみに技術部で開発した魔道具は、余すことなく冥王軍にも送ってるわ。

 諜報部に所属したのも魔王軍の弱点をじっくり調査するためだしね。 

 こんなにやらかして、もしバレたらどうなっちゃうのかしら。やめないけど。


 そんなこんなで、あたしのスパイ生活はとても充実していたわ。

 だけど最近魔王サマの様子がおかしいのよ。 

 始まりは前回の会議からだったわ。


「途中から、いきなり変な空気になったのよね……」


 今まであたしたちを鼓舞するくらいしかしなかった魔王サマが、急に全員を睨み付けてきたのよ。

 顔付きもガラッと変わったっていうか。

 まるで幾つもの修羅場を乗り越えたような、でも最後は挫折したみたいな、とにかくそんな雰囲気になったの。

 それからワケのわからないことを言い出した挙げ句、軍を再編するなんて言い出す始末。


 まあ、最初から不穏な感じはしてたけどね。

 ごり押しでどうにかなるなら、かつての魔王たちも敗けてなかったでしょ。

 

 実際、うちで最強の魔竜軍だって押し止められたのよ。

 他はともかくゼスティガだけは結果出すと思ってたから吃驚だったわ。

 もちろん、まだまだ皆のやる気も十分だったから様子を見ても良かったはず。


 だけど、魔王サマの判断は違った。

 力押しじゃなく、自分で搦め手を打って見せたのよ。


 人間の国をまるごと篭絡した時は評価をあらためたわ。

 やり方がぬるい、物足りないなんて声もあるけど、あたしはそうは思わない。


(だって今後は人間側も、身内の裏切りに対して警戒せざるを得なくなったしね)


 ――理由はどうあれ、人間から魔王軍につくものが現れた。

 今までは敵のほうだけ向いていれば良かったのが、味方にも目を光らせないといけなくなったんだもの。

 さらには『殺すしかない敵』だと思った相手が、曲がりなりにも自分たちの同胞を受け入れたのよ。いざという時の“降伏”って逃げ道も頭に浮かぶんじゃないかしら。

 そうなっちゃあ困るから、今後は下に見てる相手でも対応を誤れなくなる。このまま裏切りが続いたら士気がダダ下がりだものね。

 まあ、当の魔王サマがどこまで考慮してるかは疑問だけど。


 ただ気になるのは、国1つ孤立させるような状況をよくつくり出せたってことよ。

 地上の情勢を把握しておかないと無理だし、一見頼りないあの君主に民がついていかなければご破算になるんだから。

 こればかりは先が読めていたとしか思えないのよね。


 魔王サマの不可解な言動は続いたわ。

 まさか秘書になれなんてね。


 最近はサッちゃんをいじるくらいしかやることなかったから忙しくはなかったけど。何かあるんじゃないかと気が気じゃないわ。


 ちなみに幹部のやる気を減退させるのも立派なスパイ活動の一環よ。

 もっとも、ジュリオはパパ大好きだし、バリオンは最古参だし、ゼスティガはおっかないから消去法でサッちゃんしか調子に乗れないんだけどね。


 しかもちょっと前まで効果テキメンだった色仕掛けまで効かない……わけじゃないみたいだけど、我慢されるし。

 もっとテクを磨かなきゃダメかしら。


 それから勇者パーティーとの戦闘にも付き合わされたわ。

 連中への感想は『クソ雑魚』の一言。

 あんなレベルなら五閃刃でも楽勝でしょうね。

 魔王サマが言ってた勇者を殺せない理由が本当なら、あの子たち勇者に選ばれたっていうより、パワーアップのための生贄に選ばれたってことじゃないの。女神サマ、ちょっと酷くない?

 

 でもそれにしては魔王サマ、随分あいつらのことを気にかけてるみたいなのよね。

 世界の半分をくれてやるって勧誘までしてたし。さすがに冗談だろうけど。


 機嫌が悪くなったり爽やかな顔したり、もう何がなんだかさっぱりよ。


 でも本当に恐怖を感じたのは、その後。

 勇者パーティーの1人である女神官の盗撮に付き合わされた時よ。

 

 女神官は露出狂の変態だったわ。

 服着てないと捕まるなんて人間は大変ね。

 まあ、それはいいの。

 

 問題は――なんでそんなことがわかったのかってこと。


 だって、有り得ないじゃない。

 ちょっと戦っただけで、相手が露出狂だって見抜けるやつなんている?

 どんな観察眼を持ってたって不可能よ。

 そこであたしは気付いたの。


 ジュリオが聞いた時は否定してたけど。

 もしかして魔王サマ。


 やっぱり心が読めるんじゃないかって。


 ひとりで顔色をころころ変えてたのも、周りの心の声が聞こえるからそれで一喜一憂してたんじゃないかしら。

 女君主を裏切らせることができたのも、各国の動きがわかったのも、王族会議の時に心を読み取ったからじゃ。

 でもそんな能力持った魔族なんて見たことも聞いたこともない。

 あたしの中で疑惑はどんどん大きくなっていったわ。

 だけどその時。



「身内に1人くらい裏切り者がいたところで何だというのだ」



 冷や汗が止まらなかったわ。

 なにこれ、もう全部わかってるってこと?

 あたしは泳がされてるの?


(ただのエロ親父じゃなかったの!? 本当にどうしちゃったのよ!?)


 堂々とスパイを許すなんて、よっぽどの馬鹿か大物しかいないわ。

 魔王サマって、もしかして冥王サマより遥かに――

 

「……しばらく活動は控えとこ」


 あたしはひとまず大人しくしておくことにした。

 さすがに人間の肩まで持つ気はないから、侵略がうまくいっている間は動きようがないものね。


 はぁ、今まで楽しかったのに、なんだか面倒くさいことになっちゃった。


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