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06 勇者VS魔王2

 倒壊した木々を踏み越え、勇者パーティーが飛んでいったと思われる森の中へ入る。

 季節がら植物が繁茂しているお陰で、視界に奴らの姿は映らない。


「どうした。この程度で倒れていては女神も呆れるぞ」


 しばらく歩いたところで手前の茂みが揺れ、剣を手にした青年が姿を見せた。

 ライルだ。

 顔や体に細かい傷を負っているようだが、どこかを痛めている様子はない。

 奴はその場に佇んだまま、口を開く。


「おれはライル。……ライル・ラクロア・グランバルトだ」

「ん? ああ、人間の礼儀か」

「……聞きたいことがある。どうして侵略を始めたんだ」

「? 地上を支配したいからだが」

「その理由を聞いている」

「んん? 話して何になる。真っ当な理由があれば大人しく首輪につながるのか?」

「……もし魔族に事情があるなら、戦わざるを得ない問題があるなら、力を貸せることもあるんじゃないか? 地上と魔界とで、手を取り合う未来だってあるかもしれない」

「フ……フフ」


 “時間稼ぎ”なのはわかっているが、随分と甘いことを言えたものだ。


 そういえば前回の侵略でも奴らとの初戦は森の中だった。

 あの時はバリオンを殺された怒りで頭に血が昇っていたため、碌に言葉を交わしはしなかったが。


 手を取り合う、か。


「その問いに対する回答は1つだ。そんなものは“無い”」

「……!」

「魔族に問題だと? 魔界は平穏そのものだ。あらゆる種族が血生臭くも活気に満ち溢れた日々を送っている」

「なっ……!」


 我の支配は完璧だ。

 現に配下の誰ひとりとして不満を漏らしていない。

 全てこのギルバースが王として君臨しているからこそだ。

 

「侵略する理由だと? ()()()()()だ。他者を支配すること、指図すること、崇められることが好きなのだ。『好きだから魔界の支配者になった。だから地上も人間も支配する』――それだけだ」

「魔王、貴様……っ!」


 好きだからこそ命を握れる。

 好きだからこそ全てを手に入れる。

 あらゆる種族を受け止めるだけの器が、我にはある。  


「たしかお前の兄は国王だったな。ちゃんと好きで王になったのか? もし王族の責務だの使命感だのでやっているなら、早く引退するよう忠言してやれ。本人のためにならん」

「兄上を侮辱するな! 兄上は民の幸せを守るために一生を捧げる覚悟で王になったんだ!」

「恩着せがましい覚悟だな。上がそんな息の詰まるようなことを言うから、下々の生活が閉塞するのだ」 

「――――!」

「王というのは民の規範でもあるからなぁ。我が配下は皆生き生きしているぞ。何しろ我自ら『好きなことを好き放題やる』を実践しているからな。まあ、ごく稀に造反もあるが――」

「ライルの兄ちゃんを悪く言うんじゃねぇっ!」


 背後から叫び声。

 バクトのものだ。

 回復も済んで、ようやく戦闘配置が整ったか。


「うおおおお! 《デストブレイク》ッ!」


 振り上げた手斧がスキルの力を帯び、我に向けて振り下ろされる。

 いや、それだけではない。黄金色に似た光を帯びている。【地】の加護だ。

 スキルや魔法――女神が人間に与えた恩恵は多々あるが、勇者のみが持つ加護は破格の力だ。

 加護はそれぞれの属性に対応した武器や魔法に重ねることで、飛躍的に威力を増幅させる。


「喰らえ、魔王ッ!」


 叩き割るような動作で背面に炸裂する重厚な一撃。

 しかし。


「痛っ……!?」


 刃が弾かれ、金属がかち合ったように火の粉が飛ぶ。

 その下には擦り傷も、打撲による痣も見られない。


「硬ェ……ッ! 鋼の塊を殴ってるみてえだ……!」

「無礼な。もっと硬いモノに喩えよ」


 いくら加護が上乗せされていようと、そもそもの力量と装備があまりに脆弱。

 配下には通じても、魔王の装甲は破れない。

 その後も幾度となく斬りつけてくるが同じこと。

 

「バクト、どいて! アタシが決めるわ!」


 右方向から女魔術師ヘレンの声。

 蒼白の光を放つ魔杖の先端をこちらへ向けている。


「貫け! 《アイス・ジャベリン》!」


 岩盤を容易く破壊するであろう巨大な氷柱が、【水】の加護を纏って高速で射出される。

 しかし我の胴体に命中したところであっさりと砕け、破片となった氷塊が周囲を舞う。

 

「穿て、《バースト・アロー》」


 さらに反対側の樹上から、緑光が高速で迫る。

 弓士リーシャが【風】の加護を纏わせ放った矢だ。

 矢じりは正確に我の頭部と首の付け根を捉えたが、やはりその先へは至らない。

 跳ね返され、先端から砕けて光を消した。


「なんて硬いの……傷1つ付いてない」

「加護の力でダメージを与えているのよ、効いてないハズないわ!」


 さらに正面から地を蹴る音。

 こちらへ迫ってくるのはライルだ。


「はああああ!」


 横に振りかぶられた奴の剣は、紅玉石を燃やしたような光を帯びていた。【火】の加護だ。

 そのまま、才能を感じさせる剣筋から一閃が放たれる。


「《ホークスラッシュ》!」


 もっともその輝きは、この身を灼いた聖炎には程遠い。

 我の体を斬り裂いた領域にはつま先を踏み込んですらいない。

 その証左に、続けざま繰り出された剣撃を何度受けても、表面を虫が這ったような感触しか覚えなかった。


「……はぁっ、はぁっ! どうだ、魔王!」

「ふむ、感想か。では率直に言うが」

「――!?」


 振るわれた剣を鷲掴みしてライルを引き寄せると。


「リーダーのお前が1番なっていない」

「なっ……!?」


 事もなげに中心からへし折って、刃身を宙に放り投げる。

 気を取られたライルの腹に、威力を加減した衝撃波を叩き込む。


「ガッ!? げほっ!」

「大丈夫ですか!」


 後方へ大きく弾き飛ばされて木に衝突したライルに、隠れていたポーラが駆け寄っていく。


「おい、ライル!?」

「やだ、ウソでしょ!?」


 まるで仲間が傷を負うのを初めて見るような反応だ。

 そういうところがまだまだだというのだが、説教してやる義務はない。

 動きを止めた奴らを見渡し、宣告する。


「そろそろこちらも征くぞ。覚悟はいいな」


 お前らの無様な姿を、しっかり記録させてもらおうか。


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