05 魔王VS勇者1
邂逅の舞台には情緒の欠ける森の中。
我は、宿命の再会を果たす。
燃えるような赤い髪、瞳の色。
まさに【火】の勇者に相応しい出立ちだ。
――最終決戦以来だな、ライル。
「お前が魔王……!」
「如何にも。そういうお前たちは勇者パーティーだな」
「もうオレたちを知ってるのかよ!?」
ふん、散々手こずらせてくれたのだ。
どいつもこいつもよく知っているとも。
重戦士バクト。
弓士リーシャ。
神官ポーラ。
(ん? この女は誰だ)
……ああ、そうだ。
名前は覚えていないが、こいつも勇者の1人。
前回の勇者パーティーとの初戦で、この手で殺した女魔術師だ。
こいつが捨て身でライルたちを逃したお陰で、全滅させ損なったのだった。
「どうしていきなり敵の親玉がやってくるのよ!?」
「ほ、本当に本物なのか!?」
「兄上から聞いた特徴とも一致してるから間違いない。みんな気をつけて!」
「そう言われても、どうしましょう……!」
我の出現に、やつらは思いきり狼狽していた。
(うーむ、拙いな)
そんなあからさまに動揺しては、自分たちの未熟をアピールしているようなものだ。
実際、身のこなしは稚拙で足並みも揃っていない。装備はそれなりの物を与えられているようだが、伝説級の武具に比べれば遥かに脆弱だ。
しかしここから半年で急成長を遂げるのだから、油断はならない。
「くそっ、セレスティアにいるんじゃなかったのかよ……!」
「ああ。あの国ならもう陥落したぞ」
「なっ!?」
「民は従僕として生かしてあるから安心しろ。何ならお前たちも加わるか?」
軽口を叩けば、案の定、奴らは乗ってきた。
「ふざけるな、人間は魔族の奴隷になんかならない! みんな、戦おう!」
「丁度いいじゃない! こいつを倒しちゃえばアタシたちの勝利よ!」
「エルフの誇りにかけて魔王を討つ……!」
「女神様、どうかお力を!」
そうだ。そう来なくては。
東本陣の偵察が目的のようだが、先へは行かせん。
お前たちはここで撃退する。
そして――
(しっかり撮影しておけよ、ディーネ)
あいつには今、新開発した魔道具の1つ【映写の水晶】を使い、この戦いを撮影させている。
今の実力差であればライルたちをあしらうのは容易。
勇者どもが情けなく敗走する姿をアリサたちに見せてやれば、興味を失って2度と戦いたいとは言い出さなくなるはず。妙案だ。
『そんな面倒なことしないで、さっさと殺っちゃえばいいのでは』と当然の疑問も口にされたが、女神の加護には厄介な仕掛けが施されてあり、今ここで奴らを始末するのは悪手であると我は知っていた。
(何より、そんなみっともない真似ができるか)
魔族は力こそ全て。
強くなってしまうと勝てないから未熟なうちに倒してしまおうなど、自らの力を否定するようなものだ。
奴らを倒すのは、もっと舞台を整えてからと決めている。
「おれは左から行くから、バクトは右から頼む! ヘレンとリーシャはおれたちに当たらないように隙を見て魔王を攻撃して!」
「おう!」
「「ええ!」」
ライルの声に合わせ、奴らが陣形を展開する。
成程。魔術師の名前はヘレンというのか、覚えておこう。
「ふん。来い」
武器を構えた奴らを目の当たりにして、かつての光景が脳裏をよぎる。
『魔王ギルバース! 覚悟!』
――ああ、覚悟は決めた。
今度こそ侵略を完遂する覚悟をな。
そうと決まれば、力も漲るというもの。
「勝負だ魔王!」
「臨むところよ! 喰らえィ、《ソルブレイクファング》ッ!」
片手に溜めた魔力を解放、腕を旋回させ空間ごと薙ぎ払う!
ズギャギャギャギャギャギャ!
「なっ、この力は……っ! うわあーっ!」
「嘘だろっ!? ぐああああ!」
「「「きゃあああああー!」」」
解き放たれた暴風が有象無象を粉砕する。
森が抉れ、樹木が手前から根ごと抜かれて宙を舞う。
土砂と枝葉の津波を受け、勇者どもは呆気なく彼方へ飛ばされた。
後にはただ荒野が広がるのみ。
風に乗ってディーネの「よっわ」というつぶやきが届く。
いかん、力が入り過ぎた。
これでは何がなんだかよくわからないではないか。




