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その後腕がちぎれるぐらいまで木刀を振った後二郎が木刀をおろしやっと終わった。
気づいた頃にはもう夜になっていた。
そして二郎と共にこっそりと家から出て、森の中へと入った。
「…ここになんの用事が…?」
「まぁついてきてくれ」
二郎の言われるまま歩き続けると山奥にはあるはずがない明かりがついていた。
すると一人の男が明かりの方から歩いてきた。
「お待ちしておりました、二郎様…
そちらのかたは…?」
「客人だ、隊長に会わせる」
「…了解しました」
すると男は「こちらをおつけください」と腕章をもらった。
「それをつけないと怪しまれるからな」
二郎に忠告をくらい、あわててつけた。
気がついたときには建物の門の前まで来ていた。
「どうぞお入りください」そして男は門を開けた。
するとそこにはさっきもらった腕章のマークの旗がかけられていた屋敷があり、刀を持った数十人の人たちが会話を交わしていた。
その中に一人の小柄な男がいた。
その男はお辞儀をすると
「二郎さん、平さん…おまちしておりました」
昼間に会った龍だった。
「龍、隊長に会わせてくれ」
二郎がそういうと龍は「わかりました」と言い
屋敷の中に入っていった。
「二郎さん…隊長って…」
「隊長に会うときは力を抜かない方が良いぞ
隊長の気迫で何人もの人たちが被害に会っているからな」
そして龍のあとを二郎と共についていった。
先ほど二郎が言ったことがなんとなくわかってきた。
なぜか体の震えが止まらず今すぐにでも逃げ出したくなった。
体験したことがないこの恐怖と、明らかな近づいてはいけないと体が反応している。
龍はある部屋の前で止まった。
「平さん…気をつけてください」
唾を飲んだ。
「はい」
そう返事すると龍は扉を開けた。
強靭な肉体を持った男が窓の方を向いて座っていた。
「龍と…二郎か…そしてそこにいるのは…」
「赤の軍の被害にあった平と言うものです」
二郎が俺の紹介をした。
「は、初めまして…平です…」
男はゆっくりとこっちの方を向いた。
胸の動悸が収まらない。
恐怖の高波が押し寄せてきた。
どんな返事をしてくるのだろうか…
「は、は、初めまて!…」
「…え?」
二郎と龍はゲラゲラと笑いだした。
「そ、そんなに笑うことじゃないでしょ!?
初めての人にたいしていっつも緊張するって言ってあったじゃん!?噛むことぐらいいつもやってることでしょ!」
「いやいや、隊長が人見知り過ぎるだけですって!」
龍がそうツッコむと二郎も続けて
「隊長はいつまでたっても変わらないなー!」
俺が挙動不審状態に陥ってると龍がすかさずフォローしてくれた。
「大丈夫ですよ平さん、ただからかっただけですよ…隊長はそんなに恐くないというかむしろ可愛い方ですよ」
「は、はぇー…」
腑抜けた声がでてしまった。
あの緊張感のあとだ、仕方ない。
みんなが落ち着くと隊長が話し始めた。
「平くん僕の名前は八坂と言います、この地区の革命軍の隊長をやっています」
その後革命軍の詳しい話を聞いた。
赤の軍は最近移民狩りと名を称し、無害な移民や平民を襲っていると言う、それも軍の兵士のもの達がやっているので、平民は何も言えず、ただそれに従っているらしい。
それをみかねた革命軍の統率する隊長は地区ごとに革命軍を作り平民や移民を赤の軍の腐った者達から救う活動をしているらしい。
そしていつか三軍を和平交渉を結ばせ、前のような平和な一国を築くのが最大の目標らしい。
そしてこの赤の軍の4地区の一つのこの地区は隊長の4人の弟子を地区代表の隊長として任命しその一人が八坂らしい。
「龍から話しは聞いてます、彩さんを救いたいんですよね…?」
「はい、龍さんがいっていた青の軍の薬が必要だと聞きました」
八坂は立ち上がり召し使いを呼んだ。
「今すぐにとはいきませんが…
もう少しで赤の軍と青の軍の領土争いが起こります、その争いに参戦し、青の軍から薬を盗んでくれば良い話です、」
召し使いの女が鎧と刀を持ってきた。
「これは赤の軍伝統の装備です」
八坂は俺の目をみた。
「選ぶのはあなたです、この装備を着て彩さんを自分の身を削り助けるか、彩さんを見捨て、自分は助かる道を選ぶか…どうします?」
争いに行くということは、人を殺すこと、そして自分が殺されにいくようなものだ。
しかし、俺のために人生を捧げてくれた彩のことを思えばそんなことどうでも良かった。
「やります」
「わかりました」
八坂はそう言い窓から身をのりだし一人の男を呼んだ。
「月!」
すると男が駆け足で入ってきた。
「お、お呼びでしょうか!?」
「この方を次の領土争いに赤の軍の兵士として参戦させてはくれないだろうか…?」
月は悩んだ。
すると二郎がフォローしてくれた。
「俺が争い前に稽古をつける、大丈夫だ、平は争い死にに行くつもりはないよ、というか死なせない」
「ならいいですけど…」
月は了承した。
「彼は月だ、赤の軍の兵士の一人で次の争いの指揮官をやる男だ」
「月です、平さん…でしたよね
八坂隊長から話しは聞いております、というか革命軍の皆が知っています、安心してください絶対に死なせはしませんよ」
そして、革命軍の屋敷を後にして、二郎と地獄の特訓が始まった。
特訓もスタントマンをやっていたのでなれてくるもので、気づいたときには真剣を握っても何とも思わずに二郎と刀を交じあわせていた。
最後の特訓の後、二郎と風呂に入った。
「さて明日か…どうだ?緊張感は感じるか…?」
「…少しありますけど…二郎との特訓で男としても強くなれた気がします、絶対に彩を救うため、青の軍から薬を奪ってきます」
「そのいきだ」
夜も明けた。
二郎のいえで鎧をきると変な感じになるので、草むらで鎧を着て兵士が進軍する際に途中で混ざろうという作戦でいった。