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龍は話し始めた。
「…青の軍の薬は青の軍の中将レベルが所有する伝統的な薬です、私たちが赤の軍にいる以上、簡単には手に入らないでしょう…」
二郎が頭を抱えた。
「うぅー、すまん!もう少し俺が早く駆けつけられたら…!」
疑問が残った。
「なぜ二郎たちは俺たちを助けたんだ?君たちが赤の軍にいる以上、いや、3国にいる以上、異国から来た俺たちは排除すべき対象じゃないのか…?」
そう言うと二郎たちは「それは…」と言い目を合わせた。二人で目を合わせて何か伝えあっているのだろうか…
そうすると二人は意見が合致したように頷きあうと龍は話し始めた。
「その話は今はできません、とりあえず夜まで待ってください、話はそれからです」
そう言い、「失礼します」と立ち上がり龍は部屋から出ていった。
「すまんな、大事なことだからベラベラとは話すわけにはいかないんだよ、とりあえず傷は塞がったか?」
あの男に切られた
足の方を見ると傷口は塞がっていた。
「あんなにも傷が深くて、血も止まらなかったのに、なんでもう傷口が塞がってるんだ…?」
二郎が答えた。
「それは赤の軍に伝わる薬を塗ったからだ
武器の殺傷能力が強い分、訓練とかで誤って相手を切ってしまうこともあるからな、一応薬としては開発されてるんだ」
そう言うと二郎は「ついてこい」と言い俺を部屋から連れ出した。
「どこに行くんだ?」
そう聞くと二郎は俺に帽子と刀をくれた。
「こ、こんなもの俺は扱えないぞ!?」
二郎は笑った。
「そんなもん飾りだよ…あー…
あと、なるべく顔は隠せよ、異国の者としられたら面倒なことになるからな」
そして、この平屋からでて、二郎について行った。
「な、なんだ…この町なみは…!?」
日本がまだ江戸時代の時の町なみだった。
建物はほとんど平屋ばかり、コンクリートで舗装されていない道路…
住宅街から商店街のような所に入ると
「よし!ついたぞ!」
二郎が立ち止まった。
「ここは…?」
そう聞くと二郎は「実家の鍛冶屋だ…とりあえずなかに入ろう!」
木造建築の建物の中に入り、靴を脱いで入った。すると二郎は不思議そうな顔でこちらを見つめてきた。「どうした?」と尋ねると、
「平の国でも家に入るときに靴を脱ぐ文化があったのだな…」
なぜか感心しながら二郎は言った。
そして中に入ると「兄さーん!」
と1人の男の子が駆けてきた。
「三郎!今帰ったぞ…」
三郎は不思議そうにこちらを見つめた。
「あー…この人は俺の客人だ!あの大樹のところでぶっ倒れていてな…名前は平という、
平!こいつは私の弟で三郎という、三兄弟の中の末っ子だ、あと今はいないがもう1人兄貴がいる、三郎…親父を呼んできてくれるか?」
三郎は「はい!」と言うと俺にお辞儀をしてお父さんを呼びに行った。
「礼儀正しい子ですね」
「まぁこの赤の国では礼儀を重んじているからな!…あと親父は昔赤の軍人であり、王国時代の軍人でもあったから…あんまりこの家では異国民ということは伏せてほしいのだ」
「わかった…でも、俺のことをどうやって説明すれば…」
二郎は少し考えたあと「そうだ!」と言い
「お前は占い師であり、術をしている最中に失敗して記憶喪失した俺の旧友ということにしよう!」
…だめだその設定だと嫌な予感しかしない…
「占い師はこの国だと普通の職業だからな、変には見られないだろう?」
「確かに…」
すると、割腹の良い男が歩いてきた。
「おーあなたが二郎の客人の平君か…
…で二郎は私になんのようだ?」
俺は…記憶喪失してる設定だから…
首をかしげて二郎をみた。
「こいつは私の旧友であり、占い師だったのだが、術中に失敗して記憶喪失になってしまったことを龍から聞いて…大樹のところに倒れているところを見つけて…記憶が戻るまでここで療養させてもらっても良いだろうか…?」
無茶苦茶すぎる設定だったが…俺は役者を目指していたスタントマン、むちゃな設定は何回もやったことがある…からなんとかなるはずだ。
二郎のお父さんは震えた。
「お、親父…?」
すると、二郎のお父さんは泣きながら
「いつまでもいてくれ!二郎の旧友は私の家族の一員なんだ!」
そんなこんなで住居は得ることが出来、俺が寝泊まりする部屋に案内された。
「まさか上手く行くとは…」
二郎は笑いながら
「親父は人情深いお人だからな!」
すると、部屋に女の人が入ってきた。
「母上?」
「二郎…無事でよかった…」
すると女の人は涙を流した。
「大丈夫ですよ母上、私はあなたをおいて先に天国には行きませんから…」
「あの大樹のところでお役人さんたちが何者かに斬り殺されていたと聞いたので…心配で…」
あの男の死体が見つかると、また俺は誰かに追われる身となるかもしれない…
そう考えると手の震えが止まらなかった。
「大丈夫だ」
二郎はそう呟き俺の手を握った。
二郎の手の温もりを感じると少しずつだが震えが落ち着いてきた。
「母上!平と稽古してきます」
唐突に二郎が言ったので驚いた。
その後夜になるまで木刀振らされた。
二郎も同じように木刀を振っていた。
上着を着ていたので気づかなかったが、二郎の腕の太さや筋肉量が明らかに違った。
だから、俺が一振する間に何回も振っているし、振ったときに切る風の音も違った。
「あのさ…いつまでやるの…?」
二郎は振るのをやめず答えた。
「俺が疲れるまでだ!」
それはいつなんだ…?