母をさがして
子は社会の宝。
神様が言いました。
『さあ、君の番だよ』
だからボクはさがします。
ボクのお母さんを。
『希望はあるかな?』
神様に聞かれたので、ボクは答えました。
「ボクをひつようとしてくれるお母さんがいいです」
なるほど、と神様は言いました。
『それなら、3人のうちから選ぶといい』
神様は指さしました。
『1人目は長い不妊治療の末、ようやく妊娠した高齢の女性だ。君をとてもとても大切にしてくれるだろう』
神様はそうお話ししました。
また神様はちがう女の人を指さしました。
『2人目は富豪の妻で、すでに二人の女の子がいるけれど跡取りがいない。君を優しくも厳しく躾けるだろう』
神様はそうお話ししました。
最後に、と神様は指さして言いました。
『3人目は18歳の高校生で、好きな人をつなぎ止めるために君を必要としている。まだ若く気性が荒く、君を傷つけるだろう』
さあ、どうする?と神様が聞きました。
ボクはなやみます。
とても大切にしてくれるこうれいのお母さんか。
きびしくそだててくれるお金もちのお母さんか。
とても若くてこわいぼうりょくてきなお母さんか。
まよいます。
どのお母さんも、ボクをひつようとしてくれているのです。
まよって、
まよって、
ボクは決めました。
「若くてぼうりょくてきなお母さんのところに行きます」
神様はふしぎそうに首をかしげました。
『あのお母さんでは、君はたいそう傷つくことになる。それでも良いのかな?』
ボクは「うん」とうなずきました。
「さみしくてかわいそうなお母さんを、ボクが大切にしてあげたいのです」
神様は『そうか』と言って、ボクを若くてぼうりょくてきなお母さんのお腹に入れてくれました。
どんな時も
子どもは無償の愛にあふれている。
おわり
お読み頂きまして、誠にありがとうございました。子どもがないがしろにされるニュースを見る度、子どもの無償の愛を思って胸がつまります。どうか、お父さんお母さんに気付いて欲しい。いつだって子どもは無償の愛にあふれていることを。