ep.1 15歳の弱者
さて、ゲームスタートだ。
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ここはリアルと仮想世界の間、通称ザ・グラップで、
今から向かう仮想世界は銃と魔法と、プレイヤースキルで戦う。白熱チョー格差が生まれる
いわば運ゲー
スキルの相性、武器性、プレイヤースキル、立地、すべてを理解し、戦闘場面を考えなければいけないチョー運ゲー
とはいっても、戦略も、プレイヤースキルも、既存の以外にもまだ発見されていない技が5万とある、と言われている。
15歳から僕がこのゲームをしている最大の理由は、
僕の使っているキャラ”インフィルミ”はラテン語で弱者というのだが、文字通り、
本当に弱い。いやマジで弱い。
このゲームは普通、最初からMPを消費せずに使えるスキル。アクティブスキルが全キャラにある。
この”インフィルミ”のアクティブスキル【レイヤード】は、言葉どうり重ね掛け、すなわちスキルの愛称がどうのこうのの世界では、役に立たない。というか扱いが難しい。
おかげでゲームキャラ総選挙では、堂々の最下位を取っている。
最初はゲームキャラが差別されていたので、町を歩けば腫物扱い差荒れていた僕だったが、
普通にプレイしているうちに、いつの間にかランキングに乗るようになった。
現実の僕とは、大違いの弱者になっていた。
僕はそこに興味がわいた。というかひかれていった。
14歳の頃、成績もそこそこで友達はいないが、クラスメイトはいた。
ちょうど青春の時期、というか、まあ恥ずかしながら恋をしていた。
ミナ、といったかな、あいにく告白する勇気もなければ話す勇気もなく、遠くからみなの横顔を見ては頬を赤く染めてみたりしていた。
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でもある日を栄に、みなとは話さなくなった。というか話せなくなった。
ミナはバスケ部で、まあ大会結果はよくはないが、悪くもない結果だったのにもかかわらず
ミナの先輩が、ミナを体育館裏に呼び出して、こう言っていた。
水素爆破をして来いと
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どうやらちょっとしたことで顧問ともめ、学校爆破をしようとしているらしい。
そして爆破する役目をみなにやらせようとしているというところを、僕は聞いてしまった。
まあ、最初は馬鹿げていると思ったが、先輩は本気で言っていたらしく、みなのことを怒鳴っている。
”お前も同じように俺のことを笑うのか?”
その声を聴いたとたんバチンと強くはじける音が木霊した。
…はじける音?いや違う、これは先輩がミナをたたいた音だ。
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気が付けば、僕は外にいて先輩を威嚇していた。
先輩は僕をあざ笑い、お前は俺を殴れるのか?と余裕の表情を浮かべている。
人の顔など殴ったこともなければ、今まで感情というものに触れてこなかった僕は、怒りを覚えていた。
力も知識も先輩のほうが上、たかが凡人の僕が、バスケという世界で生きている人間に制裁を加えられるのか?
弱者である僕が、何ができるのか
弱者である僕は、弱者だからこそ何でもできるのではないのか?
いままで、人助けなどしたことはない。
でも、この際にしてみよう。
これで好きな人が助かるなら、僕の処分がたとえ退部でも退学でも、
この先輩とやらが、暴力をしなくなるなら。
そうして僕の慣れていない右ストレートは先輩の顔面に直撃した。
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その後、僕の処分は退学になり、先輩はみなに暴行・学校を爆破しようとしたとして、しばらく出席停止、のちに退学になったらしい。
そして問題のみなは、僕に一言、こう告げて目の前から消えていった。
”もう二度とかかわらないで。名前の知らないヒーローさん”
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僕はあれから、ヒーローを語っていることに気づいた。
彼女には余計なおせっかいだったようで、あの子にヒーローはいらなかったみたいだった。
まあ、もう気にしていないし、おかげでゲームキャラの名前が簡単に決まる。そうこれが僕の
「名前を入力してください。」
伊野裙です。
戦闘者を作りたくて新シリーズを描き始めています!
主人公の過去について少しだけ、語ったパートになります。
次パートは、ゲームプレイ編かな…?
ここまでご覧いただきありがとうございました。
※この小説は、フィクションであり、実際の人物、モノとは一切関係ありません。