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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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これは私専用です!

まさかリナリアが厨房に来るとは思わなかった…。

後ろにいるケリーはどこか申し訳なさそうな顔をするので、気にしないでと手を振るとホッとした顔をする。


「「………。」」

見るのを許可したは良いが、何も話すこともなく…。

リナリアはリナリアで今日はとても静かだ。

…ん?いや、違うな。

そもそもリナリアはあまり大きな声で叫んだりとかしない。

走ったりする時に轟きが聞こえたのも、一年前の話で…最近は背後にいても気付かない時もある。


「……ケリー、リナリアは今何かを食べたらお夕飯が困ったりする?」

沈黙が耐え切れず、私は冷蔵庫から昨日のパウンドケーキの端っこを持ち出した。

そして、ミルクを温める。


「いえ、今のお時間でしたら大丈夫ですが…?」

ケリーは戸惑いながらも答えてくれる。


「ミルクやチョコ…小麦粉なども食べられる?ダメな物とかは無い?」

春には6歳になるリナリアだが、アレルギーや口にしてはいけない物が無いかを確認すれば特に制限はないそうだ。

まあ、この間のアップルパイも普通に食べていたから大丈夫だとは思っていたけど…一応ね。


温めたミルクに削ったチョコを入れ溶かすと、カップへと注ぐ。

飾りでココアパウダーを少しだけ振りかけて、パウンドケーキの端っこと共にリナリアとケリーの前にそれぞれ置いた。


「立って食べるとお行儀悪いかな?椅子があれば持ってきてくれる?」

私が声をかければケリーは直ぐに椅子を取りに行き、リナリアを座らせた。

目の前のお菓子とホットチョコを見つめ、そして私の方を恐る恐る見るので私はニッコリと笑い「召し上がれ。」と声をかけた。

自分用のチョコレート菓子を作ってるところをマジマジと見られるのも、何だかな…と思ったのだ。


「……美味しい…。」

ホットチョコを飲んだリナリアが顔を綻ばせながら私を見るので、思わず私の顔も綻ぶ。

ケリーも遠慮がちに飲みながら同じように「美味しい。」と呟いていた。

この季節はホットチョコが美味しいんだよね。


私は再び自分用のチョコ作りを始める。

生クリームを温め、削ったチョコに入れる。

チョコレートが溶けたら、刻んだナッツやドライフルーツを入れて混ぜ混ぜ。

その光景を不思議そうに見るリナリアとケリー。


チョコレートのボウルを氷水に当てながら固くなるまで混ぜる。

本来は冷蔵庫を使うが、時間もそんなに無いのでちょっと無理します。

良いの!自分用だから!と、自分に言い聞かせながら作る。


チョコレートを手で持てそうなくらいまで固めて、バットへ移す。

手をよく洗ってからチョコレートの塊を円柱状にコロコロする。

ちょっと遊んでるみたいで嬉しいが、リナリアとケリーの視線を思い出して恥ずかしくなる。

…何も喋らないんだけど…何で?


ハイムさんにダメ元で粉糖が無いか聞くと、食糧庫を漁り…奥の方から見つけ出してくれた。

さすが公爵家…聞いてみるもんだな。


チョコレートの表面に粉糖を付着させて、一応は完成かな?

もっとしっかりと冷やして固めたいから冷蔵庫に入れるけど…まずは味見。

包丁をお湯で温めて1センチ幅に3枚切る。

1枚は自分用に、残りはリナリアとケリーに渡すとリナリアは目を見開き固まった。

「味見にどうぞ。」

私がパクッと先に味見をすれば、リナリアもケリーも同じように口に含み…美味しそうな顔をしてくれた。

リナリアがする美味しそうな顔はリオンにそっくりだ!


それにしても…このチョコレートサラミは思ったよりも美味しくできた。

マシュマロが入っていないので微妙かと思ったけど…これはこれでありかな?

今度はマシュマロを作るところから頑張らないとな…。

などと咀嚼しながら難しい顔をしていたのか、何故か目の前の二人が不思議そうな顔をする。


「…あぁ、気にしないで。この中に他にも入れたい物があったなって思ってただけだから…。」

残ったチョコレートサラミを冷蔵庫の入れて片付けを始める。

ハイムさんはチラッと冷蔵庫を覗いていた。

…味見したかったんだろうか?


「ケリーにお願いがあるんだけど…あと、マリーも呼んでくれる?」

「お呼びですか?リリア様!」

何故か厨房の扉から直ぐにマリーが現れた。

え?何?マジックか何か?

思わず呆気に取られていると「扉の向こうで控えてました。」とマリーはニッコリと微笑んだ。

とりあえず、先程のチョコレートサラミを再び取り出して一切れマリーに渡す。

ずっと待っててくれたのなら申し訳ないしね。


「いつもながら、とても美味しいです。」

ホワッと笑顔で感想を述べるマリー。

私も思わずニッコリしてしまう。


ハイムさんも近くに呼び、三人にやって貰い事を説明する。

まずは使用人へのパウンドケーキをハイムさんにバレンタイン当日の食事の時に配ってもらう。

次にケリーにはお父様とお母様とお兄様とリナリアにそれぞれ、箱を渡してもらう。

「…この箱だけ、リナリアが私室に入ってからコッソリ渡して?」

「承知しました。」

ケリーは頷くとリナリア用のチョコレートを手に取った。


「これは…リナリア様が他のご家族に話さないように口止めした方が良さそうですね?」

「うん、お願い。もし他の家族に話しちゃっても、後で私から他の家族に言うから…その時は教えてね?」

コソコソとリナリアに見えないところで段取りを終えると、ケリーは直ぐにリナリアの元へと戻った。


マリーには保冷箱に入れて本邸に持って行く話をする。

アレス用も忘れずに入れてもらいたいので、馬車に乗る前に中身を確認したいとお願いしておく。


「ふぅー…、こんなもんかな?…あぁ!!そうそう、このチョコレートサラミは私専用だから!」

おぉっと危ない危ない。

今年もやらかすとこだった…。

ハイムさんもマリーもケリーも何故か苦笑いを浮かべている。

…ちょっと恥ずかしい。

リナリアだけ、何だか残念そうな顔をしてる。


「私専用だから、もし食べたい場合は私と一緒の時だけね!約束できる?」

リナリアに目線を合わせて伝えれば、理解したのか分かりやすく笑みを浮かべて頷いた。

「じゃあ、帰ってきたら一緒に食べよ!」

「うん!!」


そして今年も怒涛のチョコレート作りは終わったのだった…。



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