チョコレート菓子と懐かしい思い出
ラッピング材を買った翌日…私は再びお店に走った。
いや、走ったのは馬車であって私ではないのだけど…。
よく考えたら、本邸と別邸の使用人にも何か作った方が良いのかなって思って…。
お世話になってるし、場所も道具も提供してもらっているしね。
あと、自分も食べたいし…?
そんな訳で、領地に帰る二日前の今日は使用人に配るお菓子作りです。
勿論、男子禁制にしてます。
と言ってもお兄様とリオンだけだけど。
去年はエライ目に遭いましたので…今年こそは、コッソリと。
学校帰りで時間が取れなくても良いように簡単なやつにする。
使用人の数は…ザッと五十人くらいかな?
パウンドケーキ型で…15本くらいあればいけるかな?
一人2切れで、1本で8切れは取れるかな?
余裕を見て多めに焼こう!
ちょっと厨房の邪魔になるけど…と思ってハイムさんに謝れば首を振って「大丈夫です。」と言ってくれた。
気を使わせてしまって申し訳ない。
さっさと終わらせてしまおう!
まずは下準備から…バターは常温にして、小麦粉とベーキングパウダーとココアパウダーはふるいにかけておく。
このしっとりとサラサラな粉類が気持ち良くて好きだ。
パウンド型にはバターを少し塗っておく。
前世ではクッキングシートを敷いていたが、無いのでくっ付かないようにバターにした。
オーブンも温めておこう!
柔らかくなったバターと砂糖をクリーム状になるまで混ぜて、ほぐした卵も入れて混ぜて…。
粉類を入れて木べらでさっくりと。
ここに砕いたクルミも入れると、食べた時に食感が良くなるんだよね。
生地を型に流し入れたら、チョコレートの塊を包丁で砕いて乗せる。
焼くのに時間がかかるが、それまでの工程が楽な方が良いと思ってのパウンドケーキだ。
一度に5本ずつ、三回繰り返せば15本ものパウンドケーキが出来上がった。
何が凄いって…並べた時の多さ!
どこのパティシエだよってツッコミそうになる。
「葵は料理だけは上手いよな!」
前世の兄貴に言われた言葉が頭を過ぎる。
バレンタインが近づくと色んなチョコレート菓子を作ったっけ…。
その都度、兄貴がコッソリ味見してたな。
「母ちゃん!俺に孫は期待するなよ?」
最後に会った時に、両親が私達に結婚はまだなの?と言った時の兄貴の言葉。
もう…兄貴にしか期待できないじゃんね…。
………やばい、涙腺が!
こういう時は深呼吸だ!
厨房の片隅…パウンドケーキを切り分けながら、もう会えない兄貴を思い出し…歯を食いしばる私がいた。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
ずっとセシルさんをセリアさんにしてました。
よく行く百均のせいです。
ご指摘頂いた方、ありがとうございました。
多分…全て変更出来たかと思います。




