新学期とお買い物
ザワザワと騒々しい廊下を通り、私とリオンは教室の前まで来ていた。
何故か扉に張り出された紙を何人かが一生懸命見ていたので気になり、私とリオンも見る。
学期の最後に行われた試験の後に特別に行われたもう一つの試験の結果だった。
普通クラスの生徒で希望者のみに行われた特進クラスと同じ内容のテストは、合格ラインを上回れば今学期から特進クラスへと入れる仕組みになっているそうだ。
逆に、特進クラスでも合格ラインを下回れば普通クラスへと移動してしまう事もある。
初等部なのに、どうしてそこまで厳しいのだろうか?
チラッと見えた中にジュード殿下も居たが、どうやらダメだったようだ。
教室に入れば、前の黒板に先生の手で座席表が描かれていた。
……前と同じか。
またリオンに負けたと思い、シュンとなりながら席に着く。
「リリア、今回もそっちで良いの?」
隣の席に荷物を置きながら、リオンは私に向かって話しかける。
何の事か分からずに首を傾げると、リオンも同じように首を傾げた。
「僕達、二人とも満点だったから席はどっちでも良いみたいだよ?」
黒板の私達の席が描かれている間の矢印を指差す。
………!?
「あれって、そう言う意味だったの!?」
私が知らずに驚いていると、リオンが苦笑いを浮かべた。
だって…分からなかったんだもん。
「このままで良いよ!慣れてるし。」
「うん、リリアが良いなら僕も此処にするね。」
互いに笑顔を浮かべて席に着くと、私の隣にセシルさんが来た。
どうやら今回も同じ順位になったようだ。
リオンの後ろにはラライカさんが座った。
彼女はグンッと成績を伸ばし、かなり上位に来たようだ。
ーーーーーーーそして、いつもの授業が始まった。
「今日は此処までにします。皆さん、気をつけてお帰り下さい。」
「「先生、ありがとうございました。」」
先生が授業を終えると、代表者が先生に挨拶をし全員で礼をする。
まさに小学校のようだと思う。
「リオン、帰りに少しだけ寄り道するけど良い?」
荷物を纏めながらリオンに声をかければ、コクンと笑顔で頷いてくれた。
今日は生徒会のお仕事があるからと、お兄様は別の馬車で帰ると言っていたので私はマリーに迎えを頼み、ついでに両親にも買い物の許可を頂いていた。
「どこに行くの?」
馬車に乗り、お邸とは別の方向へ進むのでリオンは不思議そうに外を眺める。
「ラッピングの材料を買いに行くの。」
「ラッピング?」
バレンタインに何を作ろうかと色々と悩みに悩んだ私は小さな箱に色んな種類のトリュフを作る事にした。
個々に渡したいので、その為の箱を探しに行くのだ。
「バレンタイン用だから、リオンは馬車で待っててね?」
「んーーー…分かったよ。」
ちょっとだけションボリするから、思わず笑ってしまう。
きっと興味があったんだろうなと思って、またの機会に一緒に来ようと言えば嬉しそうに頷いた。
ーーーーーカランカラン…
喫茶店のようなドアベルの音に思わず見上げてしまった。
ちょっと懐かしいな。
「いらっしゃいませ。」
中に入れば、所作が美しい老齢の男性が迎えてくれた。
「お菓子用に小さな箱を探しているの…少し中を見て回っても良いかしら?」
淑女っぽく礼をすれば、優しそうな顔で微笑んで「ご緩りと」と声をかけてくれた。
お店の中は色々なラッピング材が揃っていて、どれも目移りしてしまう。
暫く見て回れば、それらしい箱を見つけ手に取る。
ちょっぴり大人のシックなデザインの箱…黒に中が赤紫だ。
これに白系のリボンとかでも良いかな?
いや、赤紫かな?
むしろ…銀とか?
中に仕切りがあると便利だと思い、お願い出来ないか聞くとすんなり了承してくれる。
同じ物を10個頼む事にする。
少し余分に頼む。
予備もあった方がいいしね。
注文書を作成してる間、再び店内を見る。
今度は本命用だ。
…うん、アレス専用って事ね。
アレスってどんな感じが好きかな?
ピンク?ブルー?うーん…悩む。
……あっ!
棚の途中の切れ目に隠れるようにあった箱を見つける。
白と淡いブルーのストライプの箱に、小さな青い花の飾りが付いていた。
箱の縁には銀がスッと入って豪華に見える。
中は淡いブルーで、とても爽やかな感じだ。
先ほどよりも少しだけ大きめの箱だが、本命だからと言い聞かせカウンターへと向かう。
「これもお願いします。先ほどと同じように仕切りも付けてください。」
ふと店員さんに説明してると直ぐ近くにあった箱に目を奪われる。
「あ…あと!これもお願いします。」
買い物を終えて馬車へと戻ればリオンは少しだけ目をトロンとさせて待っていてくれた。
おネムなのかな?
「買えたの?」
眠そうに目を擦り、私に問いかけるリオン。
私はコクンと笑顔で頷いた。
三日ほどで、王都の別邸に届けてもらえるそうだ。
予定よりも早くに手に入るので良かった。
あとは、どんなトリュフにするかだよね?
「「バレンタイン楽しみだね!」」
何故か同じ事を思い、同じ台詞を吐く私達なのだった。
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