告白を阻止!?
ーーーーーアレスの言葉によって、私は気づいてしまった。
つまり…アレスの“番“がリナリアって事は…もしや私はそれが原因でリナリアを憎むのか?
そしてジュード殿下を嗾けたりして、何らかの問題を起こしつつ?
いや、アレスの気が変わって王位を継ぐとかそう言う感じかもしれない?
どちらにしても、きっとアレスが諦めきれない私がやらかして…悪役令嬢になる訳か…。
「……リア?」
…あるな。
自分…やっちゃうな、これ。
やらかしちゃうな…それで断罪されて処刑されると。
つまりヒロインがリナリアで、これはアレスルートなのかもしれない。
「……リリア!」
私がぶつくさと色々と考え込んでいると、突然アレスの声が耳元で聞こえて体がビクッと跳ねた。
「リリア、僕の話…聞いてる?」
アレスが怪訝な顔をして私を覗き込むから、私は慌てて頷いた。
疑うようにアレスは首を傾げる。
「リナリアが…その…。」
ダメだ!リナリアが“番“かどうか聞くだけなのに、手が震える。
認めたくない自分が邪魔をする。
「リナリア嬢が何?」
アレスは険しい顔のまま、私を見るので思わずヒクッと体が強張ってしまった。
やばい…なんか怖い。
…でもっ!
「リナリアがアレスの“番“って事でしょっ!」
ぎゅっと目を瞑り、手を握り締めた。
「……え?違うよ?」
「うん、そうだよね。リナリアはお母様に似て可愛いし!私みたいに目尻が吊り上がったりしてないし!」
ぎゅっと握り締めた手からは血の気が引き、白くなってしまうほどに力が込められている。
私は訳が分からなくなって、いつしか自分とリナリアとを比べて…
リナリアが自分とは違って可愛い子だって…
そんな話…しなくてもアレスにはリナリアが可愛く見えていると言うのに…。
「だから、違うって!」
むぎゅぅっと両頬をアレスの両手に挟み込まれて、私の口が止まった。
「…あれ?違うって言った?」
「うん、さっきから言ってる!」
アレスは珍しく怒った顔で私を覗き込む。
コツンと額を合わせてアレスの綺麗な瞳が私を映していた。
「“番“に関してはリリアが自覚するまでは言わないし、今はそんな話はしてないよ?」
はぁ…と小さな溜息を漏らすアレスは、とても美しく見える。
思わず見惚れてしまう…って、顔近い!
私は自分の頬が熱くなる感覚が分かり、慌てて顔を離そうとするもアレスの両手はそれを拒んだ。
「この間のリナリア嬢には少し悪意を感じたから、いつもの様子を聞いただけだよ。」
私がドキドキして目を瞑ってしまったので、アレスは諦めるように両手を顔から離して元の位置に戻った。
「悪意?…確かに少し当たりがキツいかな?」
リナリアの事を少しだけ考えるが、あまり話さないので思い出せない。
だが…言われてみれば少し私にはキツい物言いをするなと感じる時もあった。
「そっか…気にならないなら良いけど、一応は気にしといて?」
アレスは心配そうな顔で私の頭をポンポンと撫でた。
優しい手だな…。
「ところで、リリアの話って何?」
この話は終わりとばかりに、次は私へと振ってくる。
待って…ちょっと深呼吸してからにするから…
ふぅっと息を長く吐いて心を落ち着かせる。
「私の気持ちをアレスに伝えたくて!私ね、アレスの事が…むぐっ!?」
勢いよく話し始めた私の口をアレスが手で塞ぐ…何故に!?
アレスの顔を見れば、困惑しているようだった…。
「今はまだ…リリアから言わないで欲しい。」
アレスはゆっくりと私の口から手を離すと、その手は頬へと移動する。
スリスリと頬を撫でられ、どんどんと顔が熱くなるのが分かる。
「一年後…来年の冬季休暇までには認めてもらうように頑張るから、その時に僕から言わせて?」
アレスは何かを決意したかのように真剣な顔で私を見つめるから…
その顔に私は何も言えなくなってしまう。
「それまで、誰のものにもならないで欲しい。」
頬を撫でていたアレスの手は私の手を掴み、手の甲へと口付ける。
その行為が何だか現実味が無くて…私はついつい見惚れてしまった。
そんな私に気づいたアレスは更に自身の方へと手を引くと…
…ちゅっ…
何が起こったのか分からず私は目を見開く。
反応が出来ずに暫し固まる。
頬に触れた唇の感触が後からじわじわと伝わってきた。
更にアレスは耳元で囁く。
「誰かのものになっても、奪い返すけどね。」
ーーーーーボンッと言う音が聞こえた気がして、私は意識を手放した。
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