せっかく洋食屋に来たのなら。
お祖父様の行きつけは、多くの店が立ち並ぶ本通りから路地に入ると見えてくる隠れ家的なお店。
昔ながらの洋食屋さんを思い出させる佇まいをしていた
お祖父様が騎士の時から通っていたらしく現在は息子さんが後を継いでいるそうだ。
メニューはパンとサラダとスープが付いたステーキセットのみだ。
ハンバーグとかエビフライとかナポリタンが食べたくなるなと思ってしまった。
残念ながらこの世界には無いようだ。
因みにパンと言ってもフランスパンに似たハード系のパンしかない。
顎が強くなって仕方ない。
食事は美味しいのだが調理方法がシンプルで味も塩味ばかり…スープはコンソメしか味わったことがない。
香辛料も使われるが、それほど凝ったものはないようだ。
ステーキ肉を見ながら思わずミンチにしてハンバーグにすればいいのにと強く念じてしまうとリオンに肩を叩かれた。
『ハンバーグって何?』
他の人に聞かれて困ると思ったのか、リオンは声に出さずに聞いてくる。
『牛肉と玉ねぎを細かくして混ぜ、手で丸く平らに形を整えて焼いたものだよ』
簡単に説明してみたが、リオンは見たことが無いものなので想像できないのか首を傾げる。
『なんで細かくしてから、また塊にするの?』
ただ焼くのじゃダメなの?と不思議に何度も首を左右に傾げる
その様子がなんとも可愛い。
『う〜ん。食べてみないと分からないかな?作ってみる?』
どう説明していいのか悩み、実際に食べるのが早い気がして提案してみるとリオンは嬉しそうに笑った。
『お祖父様に後で相談してみよう!』
『うん!』
そんな会話をしながら、ある事に気づく。
なぜ6歳児が“ハンバーグ“なる物の作り方を知っているのか…
本で見たと言ったところで、そもそも祖父母に勉強を教わっているのだから嘘だとバレる。
うん…よろしくないな。
『お祖父様とお祖母様に相談する前に、リオンに相談なんだけど…』
ステーキを食べながらリオンと再び二人だけの会話を始める
『私に前世の記憶がある事を話したほうがいいと思う?』