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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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閑話 勿論、美味しく頂きます②

「やあ、お邪魔してるよ?」

厨房を出て、二階の私室へ向かうために廊下を進むとエントランスにクロード殿下とお兄様が居た。

私とリオンは慌てて挨拶をすると、クロード殿下は侍女が持っていたバスケットに目を向ける。

アップルパイの甘い香りがするので、気になっているのだろう。


「それは…?」

首を傾げながら、クロード殿下は私とリオンに問う。


「先日のリンゴで作ったアップルパイです。」

「アップルパイ…?」

クロード殿下は初めて聞く食べ物に更に首を傾げる。

隣のお兄様は嬉しそうに近づいてきて、中を覗き込んでいる。


「リリアが作ったの?良い香りだね、美味しそうだ!」

お兄様は嬉しそうに私に笑顔を向けてきた。

私が頷くと、更に笑みを深める。


「焼き立てを二階の私室で頂こうと思っておりましたが、お兄様方もご一緒にどうですか?」

「もちろん!頂くよ!!そうだな、こっちの応接間で頂こう!!」

外ではクールなイメージのお兄様も私達の前ではデレデレで、テンションが高い。

見た目とのギャップに私の脳みそが未だに付いて行けてない。


応接間へと入り、アリーが紅茶を用意してくれた。

クロード殿下と共に騎士様が数名、後ろに控えている。

毒味もあるので、クロード殿下のアップルパイは原型を留めていない。

騎士様と共にクロード殿下の後ろに控えていた、執事のような方が毒味をしたのだが…彼はアップルパイを口に入れると天を仰いだ。

どうやら美味しかったようだ。


それを見ていたクロード殿下は我慢出来ずにウズウズしている。

「なあ、ソムリス…まだ食べてはいけないのか?」

ゆっくりと味わい飲み込むと、惜しむようにアップルパイを見たソムリス様。

「どうぞ、問題ありません。」

渋々と言った感じにクロード殿下にアップルパイを差し出したので、マリーに声をかけて室内にいる皆さんへアップルパイを渡してもらった。

あり得ない程のアップルパイを量産したので配ったところで問題ない。

だが、お土産は無しだ。

冷めても美味しいけど、やはり温かいうちに食べてもらいたいから。


ソムリス様とその横に居た騎士様方も嬉しそうにアップルパイを受け取る。

そんなに大切に扱うようなお菓子でもないのに、壊れ物を持つようにするのは止めてほしい。

ジュード殿下を囲ってた鳥籠から採れた物だしね…言えないけど。


クロード殿下はアップルパイをサクサクと一口サイズに切ると、溢れ出るカスタードクリームを上手にパイと一緒に掬いハグッと口に含んだ。

「…これはっ!?」

余程、美味しかったのだろう。

あっという間に食べてしまい…まだ食べたそうにアップルパイを入れておいたバスケットを見ている。


私も数が気になったので、バスケットの中を覗くと聖女様にお渡しする分を除けば3つだけ余っている。

因みに両親やお兄様、リナリアや使用人の分はハイムさんにお願いして夕食時に焼いてデザートで出してもらう予定でいる。

お兄様の分は、既にここで出してしまったので…あの分は余りになるな。

聖女様分だけ魔法鞄へと移し、鞄をバスケットの横に置く。


「もう一つ召し上が…」

「頂く!!」

私の言葉に食い気味に返事がきた。

再び、アップルパイを乗せればソムリス様が毒味をしていた。

あの人…役得だな。


クロード殿下が召し上がったので、私達も頂く事にしよう。


目の前のアップルパイを見る。

見た感じも綺麗な狐色だ。

ソッとナイフを入れれば、サクッと音を立てた。


サックサクのパイ生地と一緒にリンゴのコンポートとカスタードクリームを上手に掬い口に含む。


噛めばサクッと音が鳴るパイ生地!!

バターの香りと甘酸っぱいリンゴ、そしてトロッと甘いカスタードクリーム!

自然と目を瞑り、顔が天へと向いてしまう。

味わいながら咀嚼し、惜しむように飲み込んで…そして紅茶を一口。


「「ああ…幸せ。」」

そしてシンクロする双子。

なぜ、感想が被るんだ!?


「本当に美味しいね!僕も一つじゃ足りないよ…」

「うん、僕も一つじゃ足りないよ…」

しゅんっとした顔を私に向けるお兄様とリオン。

そんな瞳で私を見るんじゃない!


「マリー…お兄様とリオンに残りをお出しして。」

「かしこまりました。」

残りを差し出すと嬉しそうにお兄様とリオンは笑顔で受け取っていた。


「バスケットの横に置いた小さな鞄は誰の分なの?」

聖女様用に除けておいたアップルパイを収納している魔法鞄が気になっていたらしい。


「こちらは聖女様への貢ぎ…贈り物です。」

「聖女様へ!?」

…良かった…貢ぎ物って言いそうになってしまった事よりも聖女様へって方が気になってくれたようだ。


「聖女様とは文通しておりまして、今夜お手紙と一緒に送るので…こちらは差し上げられません。」

申し訳ないと頭を下げれば、クロード殿下は頭を左右に振り「いや、聖女様に渡して」と微笑んだ。


「リリア嬢は、規格外だね。いや…リリア嬢だけじゃないな、クリスティア家が規格外なのか。」

「…それは褒めてくれてるんですかね?」

お兄様がクロード殿下にジト目をすると、クロード殿下は勿論!と笑っていた。

あの笑顔は…嘘っぽい。


「今日は、ジュードにくっついてきて正解だったな。」

クロード殿下は嬉しそうにアップルパイの乗っていたお皿を見つめた。

…え?ジュード殿下もいるの?お邸に?


「リリア嬢に、先日のジュードの事で改めて謝罪をと思ったんだけど…こんなに美味しい物を頂いてしまって…」

クロード殿下は苦笑いを浮かべ、私を見た。

すると、笑顔からフッと真面目な顔に変わり私の瞳を見つめてくる。

思わずドキッとしてしまい、目を逸らそうと思うが…それも無礼かと躊躇う。


「リリア嬢には迷惑をかけてしまった、深く謝罪する。贈り物でもと思うのだが…リリア嬢は何が好きかな?」

「謝罪は受け入れますが、贈り物は…そこまでの事でもありませんので…」

突然の真面目な謝罪に焦りながらも何とか返すと、お兄様とリオンが「貰っとけば良いのに。」と私に小声で囁いた。

それが聞こえたのだろう…クロード殿下が苦笑する。


「じゃあ、贈り物は僕の好みで選んでおくね!」

「…え?えぇ?そんな…」

クロード殿下は立ち上がると私の傍まで来る。

私も慌てて立ち上がれば、何故かニッコリと微笑んで私の手を取った。

つられて笑むとクロード殿下はスッと手に口づける…


「アップルパイ、とても美味しかったよ。また作ってくれない?」

お兄様とリオンが止める間も無く、クロード殿下は更に私の頬を撫でた。

突然の出来事に私の脳みそは処理が追いつかず、それなのに心臓はバクバクと激しく脈を打ち…顔は熱を帯びる。

何が起きたのか理解する間も無く、とりあえず頷けばクロード殿下は更に嬉しそうに笑った。


「また、学園で会おうね!」とクロード殿下は部屋を出て行くと、その後ろをお兄様が急いで追う。


私の横ではリオンが何か話しかけてきていたが…

暫くの間…私は顔を真っ赤にしながら立ち尽くす事しか出来ずにいた。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

更新が遅くなってすみません。

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