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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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私だけの特殊スキル

風魔法による捕縛を試みた。

目には何も見えていないが風によりジュード殿下は体が縛られた状態だ。


本人も周りも何が起こったのか分からない状況で、私は見学している人達を見回した。

初等部の一年生では魔法の授業がない。

それは特進クラスでも同じだ。

そのせいなのか、他の生徒やお兄様方は呆然としている。


ジュード殿下が魔法で勝負を挑んできて、それを受けたのだから…使えるのは知っているはずなのにな?


とりあえず、魔法の勝負って何すれば勝ちなのかな?

捕まえてみたけど…


私はクロード殿下を見ると…それに気づき、良い笑顔でグッと親指を立てた。

弟がやられているのに、何故に喜ぶ!?


やはり、ここは一思いにやってしまうのが優しさなのかもしれない。

だが…相手は王子様で妹の婚約者だ…

やってしまえば、忖度なしと言われても罪に問われる恐れもある。



◇◇◇◇◇


「リリア…大丈夫かな?」

校庭の端で決闘を眺めながらリオンは心配そうにリリアを見る。

不安そうなリオンにお兄様は優しく頭を撫でた。


「大丈夫だよ、リリアは強いからね。」

ヨシヨシとリオンの頭を撫でるが、リオンは首を振った。


「違うの…きっとリリアは板挟みになってると思うの!だって相手はジュード殿下なんだもん。」

僕だって、どうしたらいいか悩むと思う。

どの程度…手加減したらいいのか難しいんだもん。


「悩む必要など無いのにな…挑んできたのはジュードの方だ。思い切りやってしまえばいいんだよ…」

クロード殿下が黒い笑顔で呟いた。

やっぱり、以前リリアが言ったように彼は腹黒いようだ。


「僕なら…無知なフリして出来ちゃうけど…リリアは優しいんだ!」

「無知なフリって!?」

お兄様とクロード殿下が僕の方を思いっきり振り返ったけど、そんな事よりも…リリアが心配だな。


◇◇◇◇◇



あぁー!!

本当、どうしたらいいのー!!

こんなの究極の選択じゃないっ!


……ん?


………あっ!選択!?

ついに、あの魔法を試す時が来たのね!!


ふっふっふっ…この時を待っていた。

思わず口角が上がる。


目を瞑り、意識を集中して…

一思いにジュード殿下をやってしまうのか、それとも…


「ーーーーー最後の采配(ファイナルアンサー)ーーーーー」


目を開けば文字が浮いているように見える。

四択!?

そんなに選択肢あったの!?


A殺っちゃう/B負けを認める/Cとりあえず死なない程度に弄ぶ/Dむしろ他の魔法で遊ぶ


選択肢が大分おかしい気がするけど…

何だろう…Dがめっちゃ点滅してる。

これを選べって事?

文字に触れると他の選択肢は消え去り、選んだ答えが輝き出した。

え?正解って事?



ま…まあ、とりあえずは選んだ答えを信じてみようかな。


ジュード殿下を見れば、未だに拘束が解けないのか踠いていた。

苦しそうなので捕縛方法を変えておこうかな?


「ーーーーー緑の鳥籠ーーーーー」

木魔法を使い、地面から蔓状の木を生やす。

蔓は綺麗に鳥籠を象った。


「ーーーーー解!ーーーーー」

風魔法を解く。

これで魔法も使えるはずなので、火魔法か風魔法を使えば鳥籠は壊せるはずだ。


私は自身の持っていたポーチから種を取り出した。

邸で採れたリンゴの種だ。

指で弾き、鳥籠の蔓に当てる。


「ーーーーー恵みの水ーーーーー」

種に水をかけて、さらに木魔法の魔力を送りリンゴの木の成長を促す。

鳥籠の中でジュード殿下が冷たいと叫んでいるので、寒い冬では風邪をひかれても困ると風魔法で乾かした。


前世の記憶を辿りながら、リンゴの木の幹やら枝やらを曲げていく。

急成長するリンゴの木には白い花が咲き、受粉し、幾つもの赤い実を付ける。

焼きリンゴも美味しいけれど…

アップルパイも食べたいな!


お腹の虫と共に、校舎からはお昼の鐘の音が聞こえて来た。

「先生!この勝負はどうやったら決着しますかー?」

リンゴも実った事だし、そろそろ終わらせたい。


「そうですね…ジュードさん!どうしますか?」

本来ならば、どちらかが負けを認めて終わるのだが…

そもそもジュード殿下からは何もされていないので、私が負けを認める事はない。


「どうしますかって、まだ勝負は終わってないぞ!」

ジュード殿下は鳥籠の中で魔法を使おうと試みるが、何故か何も起こらない。

念じてるだけでは上級者で無ければ魔法は使えないのだ。

私やリオンはこの一年のスパルタ教育により、一部の魔法は無詠唱で使えるようになった。

お祖母様からは「人前では詠唱しなさい」と言われているので仕方なく詠唱しているけども。


「あぁー!!この木を何とかしろ!」

ジュード殿下が鳥籠の中で暴れ出したので、私は溜息を吐き…助言する事にした。

「火魔法で燃やすか、風魔法で切れば宜しいかと思いますよー?」

あっ!燃やされたり、切られる前にリンゴの収穫しなきゃ!

私は慌てて風魔法を発動させた。


「ーーーーー優しい風よ!私の下に集え。ーーーーー」

優しい風に吹かれて舞い上がったリンゴは私の足元へと集まった。

便利な世の中になったものです。


だが、慌てて集めたのにも関わらずジュード殿下は一向に魔法を発動しない。

いつの間にか私の周囲にはリオンやお兄様、そしてクロード殿下も集まってきていた。


「ジュード、早く魔法を使ったらどうだい?」

心なしか顔がニヤけているクロード殿下を訝しげに見ていると、急に私に向き直りニッコリと微笑んだ。

相変わらず黒い笑顔だな。


「…………ないです。」


僅かにジュード殿下が言葉を発したが、全く聞き取れず…首を傾げる。

傾げた位置が悪かったのか、リオンと頭が打つかってしまった。


「え?何?なんか言った…」

「出来ないです!」

クロード殿下の言葉に被せながらジュード殿下が叫んだ。


「「………ん?」」

再び頭が傾くが、今度はリオンも同じ向きへと傾けたので当たらずに済んだ。



「魔法など、出来ないです!」


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