ズタボロなプライド
『何故…こうなった!?』
現在、私は広い校庭のど真ん中でジュード殿下と対面している。
そして私達を囲うようにクラスメイトと上級生のお兄様方が見守っている状況だ。
事の発端は、社会の授業がもうすぐ終わろうとしていた時にクロード殿下がジュード殿下に放った言葉がきっかけだった。
クロード殿下はテストに関して文句ばかり言い、特進クラスを引っ掻き回したジュード殿下を諫めた。
そこまでは良かったと私も思っている。
だが、問題はその後に起こった。
「そもそも、何で君たちは揃いも揃って普通クラスなんだい?」
クロード殿下は理解出来ないとばかりにジュード殿下と取り巻きを見た。
取り巻きと一括りにしてるが、実は彼らのお兄様方はクロード殿下やお兄様と一緒に来ている面々だ。
「碌に勉強もしないで遊びまわってるから、特進クラスに入れなかったんだろ?」
ジル様が結構に厳しい事を言うと続けて他の先輩方も溢し始めた。
「っていうか、ジャック!お前、カンニングとか止めろよ!」
アルフレッド様はかなり怒っているようだ。
竜騎士団の団長の息子がカンニングとは恥ずかしいよね。
「ジョニーも…何で白紙な訳?ちょっとくらい分からなかったの?」
クリス様は解答用紙をペラッと持ち上げて、溜息をつく。
「他の奴らもだよ、皆んな白紙じゃないか…」
ラムシル様もルシアン様も自身のご兄弟のところに行き、解答用紙を見る。
そして、先輩方は私とリオンに目を向け…
「「「「「リーマスの弟妹は優秀だというのに…」」」」」
はい、ここ!
ここが問題発言です!
しかも、お兄様はドヤ顔してるし!
特進クラスの皆んなの前で白紙の解答用紙を暴露された彼らのプライドはズタボロだった…
それに追い討ちをかけるように私とリオンを褒めるというね。
これ一番ダメなやつです。
プライド高い人に言っちゃいけないんだよ!
そしたらさ、じゃあ勝負だ!みたいになっちゃう事ってあると思うの。
しかもさ、リオンは男の子で強いと思ったのか…
女の子の私を指名してきたわけよ!
どうするのさ…
女の子に負けたら、ズタボロのプライドはどうなっちゃうのさ…
そこんところを考えられない辺りが、やっぱり彼らはおバカなんだと思うの。
それとも勝てると思ってるのかな?
そもそも、勉強でダメだった訳じゃない?
何の勝負するのかなって思ってたら、ジュード殿下が私に指を差しながら大きな声で…
「僕と魔法で勝負しろ!!」
………勝負を挑まれたら、普通は受ける私が種目を選べると思うんだけどね。
あと、女の子にっていうか人に指差したらダメだからね?
それと…セシルさんをチラ見してるのも気になりますよ?
校庭に向かう途中、クロード殿下が「なんか、ごめんね?」と声をかけてきた。
だが、その顔ははっきり言って面白がっている。
眉を寄せているがニヤついてるのが分かって、ちょっとイラッとした。
もちろん顔には出さないけど…
「あの…忖度とかした方が宜しいでしょうか?」
やはり王族を相手にするのだ、その辺りは確認しておきたい。
「いや、全力でいいよ!」
それはもう良い笑顔で答えたので、不安になる。
そしてマキシア先生を見ると、無表情のまま頷いていた。
「何事も本気で挑まなければ、相手に失礼です。それにクロードさんが良いとおっしゃってますので大丈夫です。」
本当に大丈夫なのだろうか?
私…あとで不敬罪で捕まったりしない?
いや、他のもっとヤバい罪とかで断罪されたりしないよね?
…と、まあ色々とあり、今に至る訳です。
『頑張って!リリアなら勝てるよ!!』
リオンは良い笑顔で私を応援してくれている。
声には出さないけども…
いや、勝てるけど…良いの?
「何をしている!始めるぞ!!」
ジュード殿下は魔力を溜め始めた。
しかも集中してないのか、セシルさんをチラチラ見てる。
それにしても、始めるって…先生のかけ声を待つとかないのだろうか?
先生を見れば呆れたように頷いたので、始めて良いようだ。
「ーーーーー縛!ーーーーー」
いつまでも魔力を溜めていて仕掛けてこないので、私は右手をジュード殿下に向け短く詠唱した。
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更新が遅くなり、すみません。




