授業とテスト
教室の廊下側に椅子を並べて上級生が座ると、副担任の先生がジュード殿下と取り巻きに羊皮紙を配った。
それを見た私達、特進クラスの生徒は大判の羊皮紙とインクとペンを用意する。
ガタガタと凄い勢いで用意するので特進クラス以外の面々は何事かと私達を見た。
入学当初は時間割という物があったが、先生が「次が何の授業か分かるとつまらないから…」とよく分からない理由から時間割が無くなった。
分かるのは、その日に受ける授業の教科のみで時間はランダムとなる。
羊皮紙しか使用しない授業は社会の授業しかない。
社会の授業もマキシア先生独自の方法で、驚くべきことに教科書は使わないのだ。
先生は黒板に手を翳すと魔法で地図を描き出す。
「では、社会の授業を始めます。」
黒板に描かれた地図はオステリア王国とその周辺国だ。
そこに地名や領地を治める領主…更には特産品などを説明しながら書いていく。
特進クラスの生徒はひたすら書き写し、先生の言葉を集中して聴いている。
ジュード殿下や取り巻きは振り返り、私達の必死な形相に呆然としていた。
そして…持っていたペンを落とす。
転がった先はセシルさんの足元で…
それに気づいたセシルさんはサッサと拾うと私に渡し、私はリオンへ渡した。
リオンは「どうぞ。」と言ってジュード殿下に渡し、再び羊皮紙に視線を落とす。
ジュード殿下をチラッと見れば、手元のペンとセシルさんを交互に見ていた。
そんな暇があるなら、黒板と先生の言葉にもっと耳を傾けるべきだと思う。
授業が中盤に差し掛かると、先生は教室中を見渡す。
特進クラスの生徒は既に書き終わって顔を上げていた。
ジュード殿下と取り巻きは何も書いていないのか、頬に手を当てて先生を見ていた。
「では、消します。」
そう宣言すると、先生は魔法で一気に黒板を消してしまった。
すると副担任の先生が新たに羊皮紙を2枚配る。
1枚目は問題文、2枚目は解答用紙だ。
そう…社会の授業は毎回、テストが行われるのだ。
習って直ぐのところがテストに出て…更に同じ問題のテストを期間を空けてランダムに出すので皆んなは必死に黒板を書き写す。
教科書に載っていない最新情報なども先生は知っている為、そう言った細かい情報もテストに出てくるのだ。
その日のうちに受けるテストに関してのみ、黒板を書き写した羊皮紙を見ていい事になっている。
だから社会の授業だけは皆んな必死に書き写すのだ。
自分達が特進クラスだと言い張るジュード殿下や取り巻きには、あえてその説明はされなかったようだ。
だって、特進クラスならば皆んな知っている事なのだから。
もちろん、特進クラスの面々はテストをスラスラと解いていく。
今回は自国の領地なので、ジュード殿下や有名な貴族の子息ならば解ける部分もあるはずだ。
…普段から、勉強をしていればの話だけど。
ふと、顔を上げれば前の席のジャック様が私の解答用紙を覗き込んでいた。
堂々とカンニングですか…と思っていると、すかさず間に副担任の先生が入って歩く。
副担任の先生は私の解答用紙を覗き見て、何故か何度も頷いていた。
どうやら合っているようだ。
特進クラスの面々はテストが終わったのか、皆んな顔を上げ始めた。
すると、その様子に気づいたジュード殿下は立ち上がり大声で先生に文句を言い始めた。
「こんなテストをするなど聞いていない!テストというのは事前に周知し行うものではないのか!?」
生徒達はジュード殿下を見る。
…若干、呆れているようにも感じられる。
「特進クラスでは学期末に行われる試験以外にも抜き打ちテストや、席替えの為のテストも行います。
それに社会の授業は毎回テストが行われる事を特進クラスの生徒達は皆、知っています。」
マキシア先生は淡々とジュード殿下に説明する。
特に“特進クラス“を強調しているようだ。
「更に言えば、このテストは今日の黒板に書かれた物を書き写した物の閲覧を許可しています。
真面目に授業を受け、書き写していれば答えは書けて当たり前なのです。」
如何にも不真面目だと言っているように感じるのは私だけだろうか?
それこそ、私達が必死で書いているのを知っていたのに…
「なっ!?そんな事は知らない!とにかく、このテストは無効だ!!」
喚くジュード殿下を皆んな白けた顔で見ていた…
そもそも、王族のジュード殿下は自国の事を知らなすぎるのではないだろうか?
「ねぇ、ジュード!いい加減…恥を晒すのは止めたらどうだい?」
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