ジュード殿下・襲来
入学して3ヶ月が経ち、学園生活にも大分慣れた頃…
いつものように教室でリオンとセシルさんと話していると、教室の入り口で誰かが揉めている声が聞こえてきた。
私達の席は教壇の前の窓際で入り口から少し離れているので、何事かと思い顔を見合わせた。
「何か…揉め事かな?」
他の生徒達も不審に思い、入り口の辺りに注目していた。
ーーーーーガンッ!!
教室の扉を勢いよく開けたのはジュード殿下と…取り巻きだった。
「僕の席はどこだ!」
ジュード殿下はズカズカと教室に入ってくると、私達の近くまで来てキョロキョロする。
……いや、教室間違えてるし!
と、ツッコミそうになったが…どうやら本気でこの教室で席を探しているようだった。
「待ちなさい!ここは貴方達の教室ではありませんよ?」
揉めていた相手はこのクラスの担任のマキシア先生だった。
マキシア先生はジュード殿下と取り巻きの生徒を教室から出るように言うが…
ジュード殿下は聞く耳を持たず、取り巻きの生徒も動こうとはしなかった。
…あれは、何を言ってもダメっぽいな…
呆れた気持ちで見る…
いや、さすがに顔には出せないしね。
そして、先生と目が合った。
……いやいや、私達に何かを求められても困るし。
とは思うけども授業にならないのも困るので…先生の側にソソッと近づき耳打ちする。
私の提案に先生は少しだけ考えると後に控えていた副担任の先生に作戦を伝え、更にクロード殿下への伝言を頼む。
そして、私達の机を1列分下げて後ろにあった机と椅子をジュード殿下と取り巻き用に並べた。
暫くすると副担任の先生が教科書を持って教室に戻ってきたので、ジュード殿下と取り巻きに配る。
特進クラスの教科書は普通クラスの物とは違い、難しい上に分厚い。
ジュード殿下は受け取りながら瞠目していた。
「では、授業を始めます!」
マキシア先生は何事もなかったように授業を始めた。
この時間の授業は前世でいうところの国語にあたる。
教科書を開けば初等部で習っていない言葉が多く使われている為、普通クラスの生徒は初見で読む事は出来ないだろう。
「教科書32ページを開いて、ラライカさんから読んでもらいましょう。」
「はい。」
ラライカ・ホワット様は北の辺境伯家の長女で、シルバーのストレートヘアにアイスブルーのキリッとした目元のクール系美少女だ。
ラライカさんの席は後ろの方で、あと2人読めば先頭のジュード殿下に戻ってくる。
スラスラと流れるように朗読するラライカさんの声に合わせてページが捲られていく…
特進クラスの皆んなは同じタイミングで捲るのに対し、ジュード殿下も取り巻きもページを捲るタイミングが遅い。
そして、朗読は順番に行われ…いよいよジュード殿下の番となる。
「では、次はジュードさん。」
この学園の先生だけは敬称を全て“さん“に統一している。
これは生徒に差をつけない為だそうだ。
ジュード殿下は呼ばれて立ち上がりはしたが…一向に読む気配がない。
………5分ほど経過した。
先生は仕方なくジュード殿下を座らせると、隣に座るジョニー様に読むように言う。
ジョニー様はゆっくりと立ち上がった。
ジョニー・ウェンスキー様は、ウェンスキー公爵家の次男でクリス様の弟だ。
クリス様は確かクロード殿下やお兄様と同じ特進クラスだと伺っている。
……やはり、読めずに座る。
そして残った取り巻き達も読む事が出来なかった。
「では、リオンさん読んでください。」
「はい。」
読む順番が、再び特進クラスの先頭に戻ってきた。
リオンの可愛らしい声がクラス中に響き渡る。
その声に癒されながらもページを捲り…そして私の順番となった。
前世の幼い頃は人前で読むのが苦手だったけど、社会の荒波に揉まれ…いつの間にか誰よりも声が通るようになっていた。
なので、今世の私にはすでに羞恥心も無く…
スラスラと読む事が出来る。
私が読み終えると、先生は幾つかの問題を出した。
「物語の最初と最後では主人公の気持ちがどのように変化したでしょうか?」
「「「「「はい!」」」」」
特進クラスの子達は手を挙げているが…ジュード殿下のいる一列目は誰も手を挙げていない。
先生が幾つかの問題を出し終え、授業の終了を告げる鐘が鳴った。
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今日も遅くなりました。




