お兄様の特殊スキル
「ど…え?ど…どうなって?…え?」
お兄様はタイプライターのような物を色々な角度で見ると、キーを幾つか押して動作確認をする。
えーっと…これは…そう、暫くお待ち下さい。
お兄様が満足いくまで確認すると、バッと私達に向き直る。
すごい勢いで近づいてきて、私とリオンをぎゅぅっと抱き寄せた。
「信じられないよ!まさか、元に戻るだなんて…ありがとう。」
力一杯に抱きしめられて、若干…苦しくもあったが…お兄様が今にも泣きそうな程に感謝してくれるのがとても嬉しかった。
お兄様は何度も何度も「ありがとう」と、その度に私達を強く抱きしめた。
ーーーーーコンコンコンコンーーーーー
「リーマス様、リオン様、リリア様!大丈夫でしょうか?先程…叫び声が聞こえてきましたが…」
マリーが心配そうに扉越しに問いかけてくる。
「ああ!大丈夫だ、何でもない。」
お兄様は元気いっぱいに返事をすると、私達を再び椅子に座るように促した。
「これはね、文字をこうやって打って…」
と、お兄様はタイプライターのキーを叩く。
「そうすると、セットしておいた羊皮紙に印字されていくんだ!」
「「おおぉぉぉ!」」
私とリオンは印字されていく羊皮紙を見ながら拍手をする。
見た事はあったが、それでも“この世界“には無い物なので驚いた。
「僕の特殊スキルはね“ 技術者“と言って、物作り系のスキルなんだよ。」
お兄様は説明しながらも、ずっと笑顔のままだった。
先程までの暗い顔が嘘みたいで、私達も嬉しくなって笑顔になる。
「僕の夢には全く関係ないスキルかなって思うんだけど、何かを作るのは好きだから…僕には嬉しいスキルなんだ!」
お兄様は将来はお父様と同じ宰相の職に就きたいと聞いた事がある。
使い方によっては宰相のお仕事でも役に立つんじゃないかと思うけども…
どう役立つかは何とも言えない。
「これを閃いたのが1年位前で頑張って設計して…出来上がったのが3日前なんだよ。」
「一から設計したのですか?」
この世界にない物を想像だけで設計し…作り上げるなんて凄いスキルだ。
「そうだよ、色々と試行錯誤して…魔石も使った魔道具だよ。」
えへへ…と照れ臭そうにお兄様は笑うと、中の構造も解るように見せてくれた。
結構に複雑で…これを10歳の子供が作ったなんて…
「魔道具第一号は、二人にプレゼントしたかったんだ!」
そう言って私とリオンにタイプライターを差し出した。
私とリオンは顔を見合わせると、お兄様に深々と頭を下げる。
「「ありがとうございます。」」
お兄様は両手を左右に振り、首も左右に振った。
「僕の方こそ直してもらって、本当にありがとう!」
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今夜も遅くなり、すみませんでした。




