お兄様、怒る
セシルさんと挨拶を終えると、波の如く他の生徒さんとも挨拶を交わした。
この特進クラスには辺境伯家のご息女とご子息が殆どで、よく見れば王都周辺の方々は一人も居なかった。
ジュード殿下と同じクラスになりたくて特進クラスに居ないのか…
それとも学力が足りなかったかは定かではない。
王都の別邸へと帰宅すれば、間も無く昼食となる。
私達はそれぞれの部屋へと支度を整えに行ったのだが、支度の途中で邸中にお兄様の叫び声が響く。
侍女のマリーが「確認してきます。」と退室したが…5分経っても戻って来ない。
不審に思い、私も部屋を出るとお兄様の部屋の前にリオンが立っていた。
「何があったの?」
私は駆け寄りリオンに尋ねるが、リオンは首を振っていて何があったのかは分からないようだった。
お兄様の私室を覗けば、マリーとアリーがお兄様を抑えサリーがリナリアを取り押さえていた。
どんな状況だ!?
「なぜ、僕の私室にリナリアが勝手に入っているんだ!?」
お兄様は激怒し、今にもリナリアに殴りかかりそうな勢いだ。
「申し訳ございません。リナリア様、どうしてリーマス様のお部屋に入られたのですか?」
サリーはリナリアの目を見ながら問うとリナリアがムスッとした。
「だってリーマスお兄様がリオンお兄様とリリアお姉様に何か作っているって聞いたんだもん!」
「だから何だって言うんだよ!?リナリアには関係ないだろう?」
お兄様の手元には粉々になった“何か“がある。
「関係なくないもん!私だって見たかったんだもん!!」
ふんっと鼻息荒くリナリアは文句を言う。
「だからって人の部屋に勝手に入って、勝手に触って…壊すとか有り得ないだろ!?」
壊したんかーいっ!
思わずツッコミそうになった。
「だって見せてって言っても見せてくれないじゃない!」
「リオンとリリアに渡す時に一緒に見ればいいだろう!?勝手に人様の部屋を漁って…何考えてるんだよ!」
お兄様の言う通りだと思う…
リナリアは外面は…それなりに作法を学んだが、我儘で自己中心的なのは治らなかったのか…。
最強の侍女長と言われたサリーでも、手が付けられないほどの…問題児なのかもしれない。
「サリーも絶対に目を離すなって言ってあっただろ?」
「申し訳ございませんでした。」
お兄様はサリーにも文句を言い出した。
「もういい!みんな出て行ってよ!」
お兄様はリナリアにシッシッと虫を追い払うように手を振った。
サリーがリナリアを引摺るように部屋を出て行った。
私とリオンもマリー達に促されて部屋を出る。
出ていく時に見えたお兄様は肩を落として机の上に置いた壊れた物をずっと見つめていた。
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遅くなり、すみません。




