有り得ない挨拶と新しいクラス
新入生代表として壇上にあがったジュード殿下は講堂全体を見回した。
そして、持っていた封書を開き中を見る。
暫く眺めてから不愉快そうに紙を破いた…
いいのか?今から読む原稿だろうに、あんなに破いてしまって…
すると、何故か偉そうに…
いや実際に偉いんだが…
「何かの間違いで僕は何故か普通クラスへとなったわけだがーーーーー…」
始まり方も話している内容も、挨拶とは程遠かった。
何故か特進クラスに入れなかった愚痴が延々と続き、そろそろ終わるかなと思いきや次に自分の素晴らしさを語り…更には婚約している妹の話もし…
頼むから妹の話は止めてくれ!
聞いてると王族に対する不敬の数々…
更には公爵家の娘としての品格を疑われそうな内容…
それをジュード殿下は誇らしげに話すのだ。
むしろ悪意しかないと思われる内容が続き…私とリオンはゲンナリしていた。
クロード殿下を見れば凄い嬉しそうだし。
その隣にいる王妃様は扇で口元を隠してはいるが、額に青筋が見える。
笑顔なのに目が笑っていないのが…怖い。
やっと終わりを迎え…これからの学園生活に不安を感じずにはいられなかった。
クリスティア家を貶める気かと思うような発言は本当に止めてくれって思う。
教頭が締めの挨拶をし、生徒達は各教室へと向かう。
特進クラスの教室に入れば、生徒の数は10人と少ない。
定員が決まっている訳ではないので、ここにいる生徒は皆が全教科90点以上を取っているという事だ。
辺境伯の子息や令嬢が多く、1人は平民出身の特待生だ。
席は成績順のため…私とリオンは横並びになった。
満点だからね!
私の横には特待生が座る。
全体に自己紹介を終えて、明日からの時間割と学園生活での注意事項を聞く。
皆が優秀なので、サクサク終わる。
先生が退室したので、今日は終了なのだが…
私は横に座る可愛らしい……ん?
平民には珍しい白金の髪は日の光で淡い碧く輝き、肩よりも少し短め…瞳の色はアメジストのように美しい。
が、しかし…性別が分からない。
「初めまして、リリア・クリスティアです。セシル様でしたわよね?これからよろしくお願いします。」
とりあえず、差し障りない感じに挨拶をするとセシル様はガタガタと慌てて立つ。
「あ…えっと、初めまして!セシルです。これからよろしくお願いします。」
セシル様がアワアワと挨拶する。
…だが、声も可愛くて性別が分からない。
セシル様は制服がまだ間に合ってなくて、今日は私服なのだそう…
パンツスタイルじゃ、分からないんだよ。
「初めまして、リオン・クリスティアです。リリアの双子の兄です。僕ともよろしくね!」
私の後ろからヒョコッとリオンが顔を出して挨拶せると、再びセシル様はアワアワしリオンにも挨拶していた。
リオンは初等部に上がる少し前から自分の事を“僕“と呼ぶようになった。
「ところで…大変に失礼な事をお伺いしますが、セシル様は女の子でいらっしゃいますか?とても可愛らしくて…」
本当に失礼だけど、こういう事は最初に聞いとかないと後々もっと失礼な事になる。
「あ、はい。そうですよ?か…可愛らしい…ですか?」
照れながら教えてくれるセシル様…
本当に可愛いらしい!
「はい!髪の毛が微妙な長さでしたので判断がつかなくて…失礼しました。セシル様は可愛いです!」
満面の笑みで返すと、何故かセシル様は真っ赤になってしまった。
やはり…可愛い!
「リリア様のが可愛いです!私の事はセシルで大丈夫ですので…」
セシル様に笑顔で返されてしまいました。
「では、私の事もリリアとお呼びください!」
「じゃあ、僕のことはリオンと呼んでね。」
すると、セシルさんは一回ビシッと固まり…
恐る恐る口を開く。
「リリアさんと、リオンさんとお呼びして宜しいのでしょうか?」
セシルさんはガタガタと震え出した。
確かに私達は公爵家…ですが、この特進クラスは特別で成績重視なので身分は二の次なのです。
そうでなければ平民からの特待生など選ばれないのだから…。
「勿論です!セシルさん、そんなに怯えないで下さい。」
「そうだよ!」
私とリオンは微笑むと、セシルさんも肩の力が抜けたのか柔らかく微笑んでくれた。
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